■ヴェーダ語

紀元年二千年紀にアーリヤ人が西北印度から進出したころ、かれらの奉じてゐた宗教の聖典群を總称してヴェーダと呼びます。このヴェーダの言語が最古のインドアーリヤ語といふことになるでせう。インドアーリヤ語はいはゆるインドヨーロッパ語に一支派をなし、したがって本來は西洋諸語と系統を同じくするものです。したがって、もしサンスクリット語はギリシャ語やラテン語などと基本構造や語彙の上で似かよってゐるこれら西洋古典語の知識があればサンスクリット語学習もかなり容易になるはずです。
ヴェーダとはあくまで總称であり、通常は四種にヴェータを數えますが、各ヴェーダは中核をなすマントラ集成たるサンヒター、マントラと祭祀の散文による解義書たるブラーフマナ、最古の哲学書と言はれることのあるウパニシャッド、諸種の網要書たるカルパスートラなどから成ってゐます。ヴェーダ文獻群とはほとんど一千年以上にわたって順次述作されたものであり、したがって最古のリグヴェーダ讃歌群と網要書たるカルパスートラの間には言語の上ではかなりの差異が認められます。
インドヨーロッパ諸言語の中で、インドアーリア語とイラン語はかなり後れて文化したため、ゾロアスター教の聖典アヴェスタとリグヴェーダ讃歌とは言語の上できはめて類似てゐると言はれてゐます。ヴェーダ語の緻密な研究を志す場合は、アヴェスタ語の学習も必須となることでせう。

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