サンスクリット文学

 ■サンスクリット語とは

印度では昔から時代ごとに地方ごとに實にさまざまの言語が用ゐられてきました。これら多数の言語はインドアーリヤ語系とドラヴィダ語系に二大別することができますが、この他にもシナチベット語系やオーストロアシア語系の言語も用ゐられてゐます。インドアーリア語系諸言語の中で、最重要なものはなんといってもサンスクリット語でせう。サンスクリット語は、婆羅門教・ヒンドゥー教の聖典の言語として、また高尚学藝一般の文語として、さらに王侯・学者・智識人の共通語として、古代から現代に至るまで弘く用ゐられてきました。パーリ語・マーハーラーシュトリー語・アルダマーガディー語などいはゆる中期インドアーリヤ諸語も、また現代北印度の日常生活で用ゐられてゐるヒンディー語、ベンガーリー語・マラーティー語など近代印度アーリヤ諸語もサンスクリット語を母胎とする言語であると言って大過ないでせう。タミル語などドラヴィダ諸語はサンスクリット語とはまったく系統を異にしてゐますが、やはりサンスクリット語から多大の影響を受けながら發展した言語です。したがって、印度古典文化について少しでも本格的な智識を得ようとすれば、サンスクリット語学習は不可缺となります。また南方佛教やジャイナ教の聖典群は、それぞれ俗語と言はれるパーリ語やマルダマーガディー語で著されてゐますが、本邦の学習者がこれらの聖典語を習得しようとする場合、必ずと言ってよいほど、まづサンスクリット語の修得が求められます。さらに現代印度諸語を学習する場合も、あらかじめサンスクリット語の基礎知識を身につけてをれば、理解が容易になります。
サンスクリット語で著された聖典・文藝作品・学術書はまことに多岐にわたり、その數量も膨大であり、ここでその全容を解説することはできません。今はサンスクリット語を便宜上以下の四種類に分類し、それぞれについて各ページにて略説するのみとします。

  一、ヴェーダ語
  二、古典サンスクリット語
  三、叙事詩サンスクリット語
  四、佛教サンスクリット語

以上サンスクリット語およびサンスクリット語文獻についてごくあらましのみを述べました。印度文化はまことに多様でありますが、その精華をなすものはやはりサンスクリット文化であると言って過言ではないでせう。

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