研究計画

 第2班の活動の基本的枠組みは、現代世界が抱える社会的、経済的課題を、歴史的視 点を重視しつつ研究を実施することである。その際、イスラームと関わりを持つさまざまな地域が 今日直面する問題を三つの異なる角度から相補的に研究する。具体的には「イスラームと社会開発」、 「イスラームと経済開発」、「イスラームと民衆運動」の三つの柱を立て、それぞれグループ(a・b・c) を組織するとともに、班全体での統合研究、班を超えた連関的研究を行う。第1,第2の柱はこれまでの 研究を継承発展させ、第3の柱は昨年度までのグループCと研究班5グループAの活動の一部を統合し て、第1,第2の柱を補う視点を提供しようとするものである。

 班としての最大の目標は、今年度の研究成果を集約すべく、11月に開催する国際ワー クショップである。その際に班の研究テーマに大きく寄与することが期待される研究者を複数招聘し、 成果の発表のみならず濃密な議論と今後の研究協力可能性の開拓を重視して、プロジェクト全体から の積極的な参加をうながす。その成果はプロシーディングなどとして明確な形にする予定である。ま た、ワークショップに寄与する知見を獲得したり、それをさらに発展させるために、各グループが海外調査 を共同で行う。

 各グループの研究テーマとして次のようなものが挙げられる。
グループA:
(1)イスラームと民主化
(2)イスラーム政治思想における参加、人権、社会的公正
(3)イスラーム地域における社会運動の実態
(4)社会開発における宗教の役割
(5)社会開発と女性、少数民族
とりわけ、(1)(2)(3)に重点を置く。

グループB:
 (1)市場経済化と経済発展の担い手
 (2)産業構造と社会階層の変動
 (3)イスラーム経済・金融システムの導入
 (4)地域統合構想
 (5)商業・流通・労働力ネットワーク
 (6)石油・天然ガスなどの資源開発と環境問題
 (7)人口問題
 (8)ODAとNGO
 これらをイスラーム地域との関連で研究し、とくにイスラームをシンボルと した経済協力や経済統合の新たな試み、経済危機に対する各種イスラム運動の 対応にも十分注意を払う。

グループC:
 (1)スーフィズム
 (2)聖者信仰
 (3)タリーカ
 (4)文化的営為としての衣食住
 (5)祭礼、芸能、儀礼などの社会性
 (6)草の根的社会経済活動
 とくに、上記(1)(2)(3)を多角的総合的に研究していくことに重点 を置く。

 各グループの研究は、書評研究会、口頭での研究発表による研究会、成果の刊行、イ ンターネット上での成果公開などの形で展開される。
 また、昨年度までの研究の成果を体系的に活用可能な形にまとめ上げることも重要な 課題であり、これには昨年度までのグループCによる研究動向研究の成果も含まれる。