海外出張報告

出張者:岩崎葉子(アジア経済研究所)
期間:1999年6月29日〜7月22日
出張地:テヘラン(イラン・イスラム共和国)
概要:今回の出張の主たる目的は(A)イラン国内の商品流通機構に関する実態調査(B)関連の統計資料・文献収集であった。

(A)
イラン繊維産業協会、テヘラン・アパレル業者組合など関連諸団体の協力を得て 、主としてアパレル卸売り商(総計12社)からの質問票に基づく聞き取り調査を行 った(その他にも関連の小売業者や民間製造業者からの聞き取りも行ったがここで は詳細は割愛する)。報告者はこれまでにアパレル製造業企業に対する聞き取り調 査を行っているが、今回の調査はその補足調査の意味合いを持っていた。調査の主 要なテーマは(a)アパレル製品の生産から販売に至る流通経路のなかで生産主体 と販売主体がどのような取引関係を構築しているか(b)イラン国内市場における テヘラン産地の位置づけはどのようなものか、といった点にあった。聞き取り調査 の結果から、(a)テヘランのアパレル生産に関する限り、卸売り業者と製造業者 の取引関係は日本を含む先進工業国などで広く見られるような流通経路内の垂直的 な統合ないし連携という形をとる事例が少ないこと(b)テヘランがイランのアパ レル製品の一大集散地となっていること、などが明らかになった。生産・販売の両 主体がともに零細規模業者であるために細分化された流通経路が温存されているも のと思われるが、今後は小売業者に関する調査などを行い、流通経路の統合が進ま ない原因などを含めさらにアパレル流通の全貌に迫る必要があるだろう。
(B)
統計センターでは刊行の遅れている今年度版の統計年鑑(8〜9月頃刊行予定と のこと)が入手できなかったが、いくつかの産業統計のほか1370-1375年版の国民会 計報告書などを購入した。調査事項関連の文献資料は今回の調査ではとくに有益と 思われるものは見あたらず、関連諸団体でも資料の提供などはなかった。7月中旬の テヘラン大学での学生デモと一連の騒動の影響で、大学周辺に集中している書店で の一般書籍の購入が思うようにできなかったのは残念であった。
 全体としてたいへん有益な出張であったが、ひとえに現地での協力者諸氏の尽力 におうところが大きい。いずれ早い時期にこうした結果を論文等にまとめ、上記の 諸氏の厚意に報いつつ出張の機会を与えていただいた本プロジェクトの成果ともな るよう努めたい。