2-A 東南アジアのイスラーム書評研究会第2 回報告書

日時:1999年9月4日(土)午後2時から6時
場所:上智大学四ッ谷キャンパス10号館3階322号室
テーマ: Harry J. Benda. The Crescent and the Rising Sun: Indonesian Islam under the Japanese Occupation 1942-1945. W. van Hoeve Ltd., The Hague and Bandung. 1958.
評者:青木葉子(早稲田大学大学院)
ディスカサント:小林寧子(愛知学泉大学)
出席者:8名

 今回は、日本軍政期前後を中心として、インドネシアにおけるイスラーム勢力の政治 的台頭を描いたハリー・ベンダの著書をとりあげた。評者の青木氏は、インドネシア華 人のイスラーム改宗運動を研究している。青木氏は、ベンダの研究は、従来、日本軍政 のインドネシア社会へのインパクトを強調した研究として高い評価を得ているが、イス ラーム勢力の主体性を重視した研究として大きな意義があることを指摘し、そのような 視点から、テキストの内容を詳細に報告した。
 小林氏は、最近、現代インドネシアのイスラーム勢力の政治的・社会的活動が注目を 集めているが、それらを理解するためには、歴史的視点が不可欠であり、このような研 究を読むことの必要性を指摘した。そして、以下のコメントを述べた。この研究の最大 の特徴は、イスラームがどのように発展してきたのかという視点で書かれている点にあ る。ギアーツの三類型がやや静的なのに対し、ベンダは「サントリ文明」は拡大してい くものであり、その担い手であるインドネシアのムスリムが主体的に行動していると描 き、そのダイナミズムを強調した。
 今回の出席者は、すべて東南アジア研究者であり、中東など、他地域の研究者との意 見交換ができなかったことが残念であった。次回からは、若手研究者の報告を組み合わ せるなどして、この研究会をより魅力のあるものにする工夫をしていきたい。 (文責:川島緑)