2-b 「イスラーム世界の経済構造と変動」第2回研究会報告書

日時: 1999年7月24日(土)午前10時30分ー3時
場所: 明治大学和泉校舎・研究棟・人文研合同研究室

報告者1 田巻松雄(宇都宮大学)
「開発援助政策をめぐる世界的動向と日本ーフィリピン・ミンダナオ地域の民主化・和平 交渉・開発問題との関連でー」
 1999年2月ー3月にミンダナオ島で行ったフィールド調査 をもとに、96年9月の政府とモロ民族解放戦線(MNLF)の和平 協定以降の人権・民主化・開発の現状について報告した。結論的に 言えば、和平の推進の面では一定の成果が見られるが、開発面で の成果は乏しい。特にMNLFの元戦闘員の就業問題の厳しさが見ら れる。日本のODAは今後規模が拡大すると見られ、具体的な援助 案件の検討が重要な段階になっている。報告の後、開発がなぜ 前戦闘員の就業の問題に重点が置かれているか、ジェネラツ・ サントス市周辺の社会経済開発の問題、フィリピン全体の民主 化運動との関連などが議論された。

報告者 2 水島多喜男(徳島大学)
「『イスラーム経済』と『資本主義』」

 水島氏が最近の論争・議論に刺激を受けてまとめたワーキング ・ペーパー「『イスラーム経済』と『資本主義』:バーキルッ= サドルとA.スミスにおける経済システム概念の比較」(1999 年2月)を基礎に、古典派経済学とそれにつながる学派とイスラ ーム経済の一つの理論であるバーキルッ=サドルの間の主要な経 済概念を巡る相互の異同について検討した報告が行われた。両者 の相違をよりくわしく検討し、両者の対話の可能性を追求しよう としたものである。議論は産業資本、商業資本、貨幣取り扱い資 本など多岐にわたるものである。早急な結論を出すべきではない が、報告後の議論においては、経済全体のシステムについて「イ スラーム経済」が成立するかどうかについての疑問、協同組合な どの各ミクロ分野でのイスラーム経済の積極面を検討する必要性 などの意見が出された。テーマの性格からして今後とも議論と対 話を深める必要性が確認された。

(文責:清水学)