1-A グループ


いよいよ、思想家研究会 始まる

report by 小杉 泰

第1回  の報告

1997年10月17日(土)

報告:中村廣治郎
「F・ラフマンのイスラーム解釈」
会場:東大文学部アネックス(新プロ本部)

 

 10月17日(金)、第1回の思想家研究会が開催された。いずれの研究会も重要であるが、「現代イスラーム思想」を扱う上で、思想家を論じることなくすますことは決してできないであろう。その意味で、このシリーズが開始されたことは大変喜ばしい。第1回では、ネオ・モダニズムの代表たるラフマンについて、中村廣治郎先生が報告を行った。

 報告では、広範囲にわたるイスラーム思想を研究するにあたってのスタンスの取り方について提起がなされた後、F・ラフマンの経歴と彼の置かれていた歴史的文脈について、当時の南アジア、独立後のパキスタンの状況を紹介しながら論及された。また、渡米後の後半生と学問的事績についても述べられた後、ラフマンのイスラーム解釈の内容と意義について、クルアーン(コーラン)およびスンナの解釈にからめながら、いくつかの事例を挙げて、検討が加えられた。

 非常に丁寧かつ啓発的な報告の後、熱心な議論が行われたが、モダニズムの評価やラフマンの近代解釈をめぐってさまざまな論点が出され、充実した討論が行われた。

 イスラーム世界が近代・現代とどのように向き合うかは、19世紀以来きわめて重要な思想的な問題となっているが、それにモダニズムの潮流から対応したラフマンの営為は、多面的な意義を持っている。研究会では、それらの問題が検討されると共に、ラフマンの影響がトルコやインドネシアで盛んであることも明らかにされた。

 研究会に出席した第1班の竹下政孝代表からは、ラフマン門下時代のエピソードが披露され、ラフマンの人となりについても、参加者はいっそうの理解を深めることができたが、そのあたりについては懇親会においても、大いに話の花が咲いた。

 ダイナミックな思想研究には、時代と格闘し、時代と共に生きた思想家たちの研究が欠かせないが、この研究会は、シリーズ第1回として、非常に有意義なものとなった。竹下代表も、「実にいい会であった」と述べていたが、さらに、思想家シリーズを充実させていきたいものである。