研究班1 (A・B・Cグループ共同)

シンポジウム「アフガーニーと現代」

    第1回 年次共同研究会 開催!

報告 松本 弘

日時:11月15日(土)
会場:東京大学文学部アネックス・大会議室

班代表挨拶: 竹下 政孝(東京大学)

第1セッション:「アフガーニーとその時代」

 栗田禎子(千葉大学)「アフガーニーと批判者たち」
 中西久枝(光陵女子短期大学)「アフガーニーの汎イスラミズムと反帝国主義闘争」
 新井政美(東京外国語大学)「オスマン帝国とパン・イスラミズム」
 大石高志(日本学術振興会)「インドにおけるアフガーニー」

第2セッション:「アフガーニーの現代的意味」

 基調報告: 八尾師誠(東京外国語大学)
 コメント: 飯塚正人(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

第3セッション「今後のアフガーニー研究」

 上記の日程で、第1班の共同シンポジウムが開催されました。これは同班が毎年 1回開く予定としているもので、初年度の第1回はaグループが幹事として、実行委員会形式で(八尾師委員長)、準備を行いました。

 テーマは、アフガーニー没後100年を記念して、「アフガーニーと現代」。没後100 年もさることながら、近年各方面からアフガーニーへの新たな評価やその研究の見 直しが行われており、現代イスラーム世界の政治と宗教を考える上で、有意義かつ タイムリーな企画であったと思われます。

 九州、関西方面からの参加や、本プロジ ェクト関係者以外の方々の参加もいただき、出席者は発表者を併せて総勢23名。お よそ5時間に及ぶ発表・討議の末、大変盛況のうちに終えることが出来ました。

 シンポジウムの詳細は来年刊行される予定ですが、第1セッションでは、栗田先 生からオリエンタリズムとイスラーム原理主義の双方から挟撃されるアフガーニー への評価が、中西先生からはアフガーニーにおける西欧近代とイスラムの伝統的価 値の対抗関係が、新井先生からオスマン帝国自身のイスラーム改革やパン・イスラ ミズムに結び付くことがなかったアフガーニーの限界が、大石先生からアフマド・ ハーンとの対比やイクバールへの影響などによるインドでのアフガーニーに対する 評価が発表され、それぞれまたは全体について非常に活発な質疑応答や討論が展開 されました。

 続く第2セッションでは、八尾師先生から最近イランで開催されたアフガーニー ・シンポジウムの報告があり、そこから「アフガーニー研究」の現代的意味、特に それが現代の国民国家形成やイデオロギーといったものに利用される諸側面が論じ られ、アフガーニー研究が国民国家体制を相対化する試金石となるのではないかと の指摘がなされました。

 飯塚先生からは上記の議論全体に関わるいくつかのコメン トがあり、特に各地域でアフガーニーの影響力に大きな格差があることや現在でも アフガーニーの著作が発見されている状況などを踏まえ、イスラーム世界を横断し た巨人アフガーニーの全体像把握の困難さと必要性が強調されました。実際、アラ ブやイランではアフガーニーの影響が強く、トルコやインドでは実質的にはほとん どないといった地域間の温度差や、アラブ、イラン、トルコ、インド研究者による アフガーニー研究や評価にズレがあることは、本シンポジウムでの最も大きな議論 対象となりました。

 そして最後の第3セッションにおいて、八尾師先生からアフガ ーニー研究の国際ネットワーク設立の提案があり、近い将来にも諸外国で行われて いるアフガーニー・シンポジウムの資料収拾などを始めることとなりました。

シンポジウムの写真アルバムもご覧ください。