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アラビア文字文献データベース連絡会発足のついて (趣意書)

文部省科学研究費プロジェクト「イスラム地域研究」第6班(研究課題:イスラム関連史料の収集と研究)では、その活動の一環として、「アラビア文字文献データベース連絡会」の立ち上げを予定いたしております。その趣旨についてご案内申し上げますと同時に、会への参加をお願いしたく、ご連絡させていただきます。

ご存じのように、大学付属図書館をはじめ諸研究機関では、アラビア文字文献(アラビア語、ペルシャ語、ウルドゥー語、ウイグル語など)の整理に苦労して参りました。人的、技術的に様々な制約がある状況で、図書情報をコンピュータに入力するに際し、
(1)学術情報センターとつないで米国議会図書館方式(ALA-LC方式)による翻字ローマ字入力
(2)Macintosh を使ってのアラビア文字による入力
(3)独自の転写ルールによる暫定的なローマ字入力
(4)コンピュータによる入力は先送り
のうち、いずれかがとられていることが多かったかと存じます。

しかし、コンピュータをとりまく状況が大きくかわりつつある現在、アラビア文字文献を整理するための環境も徐々に整いつつあります。まず、財団法人東洋文庫では、上記(2)の方法で(Macintosh 上で動く4th Dimention を用いたアプリケーションを開発)、約2万件のデータ入力を完了しつつあります。また、全国の大学等図書館をつないだ総合図書目録システム(NACSIS-CAT)を運営している学術情報センターでは、多言語化にとりくみつつあり、2000年1月から中国漢字とハングルの利用が可能になります。そして、要望さえあれば、その次の多言語化の対象にアラビア文字をいれることは技術的には可能であることが、非公式ながら表明されています。末端の利用者の立場でも、コンピュータ上で日本語とアラビア文字を同時に使うことが可能になりつつあり、インターネットを媒介とする情報のやりとりにおいて、アラビア文字等の固有文字が利用される方向へ全体が動いていることは間違いないところかと思います。

このような状況をうけ、学術情報センターの総合図書目録と双方向にデータのやりとりを行いつつ、さらに、アラビア文字も使えるデータベースを構築することができないかという構想が、東京外国語大学付属図書館から生まれて参りました。先日(11月17日)、学術情報センター、東京外国語大学付属図書館、東洋文庫の関係者が会合し、その構想の実現可能性について討議いたしました。いくつかクリアしなくてはいけない問題はあるものの、学術情報センターの総合図書目録と結びつつ、ローカルにはアラビア文字を使ったデータベースを構築することは技術的に可能であるとの結論に達しました。このアラビア文字を用いるローカルなデータベースは、将来的に、総合図書目録でアラビア文字使用が可能になることを視野にいれて構築されます。(具体的には、すでに運用中の東洋文庫方式アラビア文字データベースソフトを用いてデータ入力し、これと、ALA-LC方式による翻字データベースをリンクさせることにより実現します。)将来、学術情報センターの総合図書目録がアラビア文字をサポートした際には、東洋文庫方式でつくられたデータがそのまま利用されることになります。その移行までの期間、東洋文庫方式で複数の機関が蓄積したアラビア文字データを統合して学術情報センターのサーバ上で公開、インターネットを通じて広く利用に供することも、概ね、実現可能との見通しが得られました。(ユーザーの機種をとわず、ブラウザ・ベースの検索を可能にします。)a

上に概略を期した三機関(学術情報センター、東京外語大、東洋文庫)の取り組みを、より具体的にご紹介すること、加えて、他のアラビア文字文献所蔵機関の方々に現在とっておられる方法をご紹介いただき情報交換をすることの2点を目的に、関係する機関の方々にお集まりいただく会が開けたらと思い、ご連絡さしあげた次第です。

さて、この連絡会の発足を急ぐ理由は次の2点です。第一は、Windows2000 の発売を来年にひかえ、コンピュータの多言語化が現在、実質的に始まりつつあるためです。諸機関がそれぞれに動き出す前に調整を開始し、可能な範囲で歩調を合わせていきたいと考えました。第二の理由は、学術情報センターの総合図書目録でのアラビア文字の使用を可能にするには、ユーザーの側(クライアントである大学図書館、あるいは、Webcat の利用者たる研究者・学生)からの要請が不可欠だからです。学術情報センターの立場は、「要望があればやる、技術的には可能」という言葉に要約できるかと思います。逆に言うと、「技術的には可能だが、要望がなければ当面はやらない」ということになるでしょうか。翻字をどのような形で残すかについてはこれから検討が必要でしょうが、少なくとも、固有文字たるアラビア文字が目録で使えるようになる便利さは強調するまでもないと思います。学術情報センターの総合図書目録全体は多言語化の過程にあり、やがてはアラビア文字も含まれていくことになると思いますが、その時期が早ければ早いほど、データをつくる側の無駄もはぶけることになると思います。連絡会での議論を通じ、学術情報センターへの「要望」を具体化していきたいと考えています。

当面、連絡会の調整役は、イスラム地域研究第6班がつとめさせていただきたいと思います。全国の諸機関が所蔵するアラビア文字文献の整理がすすみ、そのオンライン検索が可能になるという目標に向けて、環境づくりにつとめていきたいと思います。ご協力のほど、よろしくお願いいたいます。

1999年11月25日

文部省科学研究費補助金創成的基礎研究
「イスラーム地域研究」第6班  林佳世子