日時:
2006年3月2日(木)13時〜16時30分
場所:
東京大学法文2号館2階1番大教室
主催:
東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究室
日本学術振興会平成17年度人文・社会科学振興プロジェクト
「日本の文化政策とミュージアムの未来」
後援:
文化資源学会
企画・運営:
東京大学大学院文化資源学研究室 演習
「文化資源学フォーラムの企画と実践」履修生
入場無料・参加申込不要
13:00 開会挨拶
小林真理(東京大学人文社会系研究科助教授)
13:05 趣旨説明・調査報告「全国廃校の文化事業活用例」
東京大学文化資源学研究室演習
「文化資源学フォーラムの企画と実践」履修生
13:25 活用事例報告 I :「にしすがも創造舎」
蓮池奈緒子(NPO法人アートネットワーク・ジャパン事務局長)
14:05 活用事例報告 II :「京都芸術センター」
南正博((財)京都市芸術文化協会専務理事)
15:00〜16:30 総合討議
司会:坪池栄子((株)文化科学研究所プロデューサー)
討論者:蓮池奈緒子、南正博、
木下直之(東京大学人文社会系研究科教授)
東京大学文化資源学研究室は2001年度から毎年「文化資源学フォーラム」を開催し、見過ごされがちな情報を、多様な観点から「文化資源」として評価し直し、社会に還元する方法を研究してきました。
本年度は、芸術創造の拠点として甦った「廃校」の事例に着目します。近年、少子高齢化を背景に全国各地で多くの廃校が発生し、福祉サービスの提供やNPO活動・新規事業支援など、実に多様な転用が試みられています。芸術文化活動を支援する場として公立文化施設は十分に整備されてきたはずですが、何故「廃校」なのか。これまでの芸術文化政策の問題点を検証します。
本フォーラムでは具体的な活用事例の検討と、学内外からの参加者による討議を通して「廃校」の可能性を明らかにすることを目指します。
フォーラム当日は120名を超える参加者にご来場いただきました。文化政策やアートマネジメントといった視点から「芸術創造の場」へ関心を持った方々、「廃校」の運営へ興味を持たれている方々など、フォーラムのテーマへの幅広い関心の高さがあらわれていました。
本フォーラムは演習「文化資源学フォーラムの企画と実践」の履修生によって企画・運営が行われました。フォーラム冒頭には本研究室の学生による企画趣旨の説明、廃校の現状に関する調査の結果が報告されました。
続いて、事例報告Iとして蓮池氏から、にしすがも創造舎(旧朝日中学校)について報告がなされました。にしすがも創造舎は豊島区、NPO法人の「アートネットワーク・ジャパン」と「芸術家と子どもたち」の3者の共同で運営が行われています。NPOと行政との協働のあり方について、また地域の記憶が根づく「廃校」だからこそ、地域住民とのコミュニケーションの大切さが指摘されました。
事例報告IIでは京都芸術センター(旧明倫小学校)の南氏から報告が行われました。京都芸術センターは京都市において「公の施設」と位置づけられています。南氏の行政の視点からの報告では、京都という土地柄を反映した地域との関係が設立経緯や、若手芸術家の利用を中心とした運営方針に反映されていることが示されました。
最後に蓮池氏、南氏に加え、坪池氏と木下を交え総合討議が行われました。「廃校」をどのような場所として捉えるかということから、継続に必要な財政的な問題という具体的な課題まで議論が展開されました。
本フォーラムは廃校を芸術創造の場へ転用することをテーマに行われました。しかし、芸術文化に関わる一般的な課題や困難、NPOと行政、地域との連携など、フォーラムのテーマに収まらない議論からは「廃校の可能性」の広がりを実感するフォーラムとなりました。