第64回研究会

下記の要領で第64回視覚探索研究会が行われました.
第64回研究会は,東京大学の横澤研究室主催のBBM(Brown Bag Meeting)との共同開催となり,多くの方が参加されました.

   記


第64回視覚探索研究会
 日程:1月30日(水) 12:10〜17:00
     (12:10〜14:00は横澤研究室主催のBBMとの共催です。)
 場所:東京大学 本郷キャンパス内 法文2号館3階 多分野交流演習室
(研究会会場はこちらをご参照ください


=-=-=-=第64回視覚探索研究会・第17回Brown Bag Meeting プログラム=-=-=-=

・川津 茂生 (国際武道大学)
「タイミングと反応時間」

人はタイミングをとってリズミカルに反応することができる。タイミングには受動性も働くが、能動性も強く働くものと考えられる。一方、知覚的処理に基づく選択反応時間においては被験者がタイミングを利用して反応している可能性があり、その点で能動性が強く関与している、といえる。しかし、知覚的処理に基づく反応は、ある意味で、受動性に基づく反応ともいえ、この点において、選択反応時間における、タイミングの能動性と知覚的処理の受動性の交互作用の存在を仮定できる。このような視点から能動性と受動性の交互作用を探究する存在科学の地平について考える。


・尾崎 隆 (東京大学 新領域創成科学研究科)
「選択的注意に関する脳活動パターンの再検討」

 本発表では、MEG(脳磁図)計測の実際を紹介するとともに、一例としてSpatial Cueing Task遂行時における脳活動の時間特性の再検討を行った研究を示す。
 Hopfingerら(Nature Neuroscience,2000)のfMRIを用いた研究によれば、Spatial Cueing Taskを遂行した場合、Cueを提示した際の脳活動はTargetを提示した際のそれとは異なる領野に検出される。しかしながら、fMRIは時間分解能が低いため、その時間特性は明らかにされていない。ERP(事象関連電位)による研究では主にTarget提示後の反応の変化が重視され、Cue提示時の反応についてはそれほど報告されていない。加えて、MEG(脳磁計)による視覚的注意に関する研究は、これまでにほとんど報告されていない。このことから、本研究では視覚的注意に関連したMEG脳機能計測における基礎データを収集する目的も兼ねて、Spatial Cueing Task遂行時の事象関連脳磁場を計測した。その結果、Cue提示後の300-350ms前後の潜時に特徴的な反応を検出し、ダイポール推定を行ったところ右半球の側頭葉と前頭葉に信号源が推定された。この信号源の推定位置は、Target提示後のそれとは異なる位置になった。しかしながら、この反応のダイポール性があまりよくないことから、特定の領野に反応が局在していないことが考えられ、現在新たなアプローチを模索しているところである。

(以上,BBMとして)
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・森田 ひろみ (NEDOフェロー 産総研)
 「輝度あるいは色定義の輪郭と運動定義の輪郭の結合には注意を要する」

 同じ形を輝度の違いによって描くこともできる(例えば,明るい背景上に黒い丸を描く)し,色や運動の違いによって描くこともできる(例えば,丸の内部のテクスチャだけ動かす)が,我々はそれらを全て同じ形として知覚する.このように,形がどのような性質の差により描かれているか(形の定義属性)によらない一般的な形の知覚がなされる一方,視覚の初期過程において輝度,色,運動などの属性は異なるモジュールで別々に処理されることがわかっている.しかし,別々に処理された属性からどのようにして一般的な形の表象が形成されていくかという問題についてはまだ良くわかっていない.
そこで本研究では,定義属性によらない形の表現の形成過程について調べるために,部分によって定義属性の異なる輪郭をもつ形を用いて,傾きの探索実験を行った.その結果,輝度や色定義の輪郭と運動定義の輪郭の統合には注意を要することが示された.この結果は,定義属性によらない共通の輪郭表現というものが並列的には形成されないことを示唆する.


・小野 史典 (広島大学 教育学研究科)
 「文脈手がかりの潜在学習に及ぼす注意の影響」

 本研究では,呈示される視覚探索画面での,刺激配置に基づく標的探索の促進(文脈手がかり効果)を調べた.視覚的マーキング課題を利用し,妨害刺激の一部を他よりも1s先行して呈示した.先行刺激と後に呈示する標的の位置関係を固定した場合と,それを毎試行無作為にする場合を比べたところ,探索時間に違いはなかった.先行刺激と標的の位置関係を固定した呈示事態は探索にとって有用な情報を含んでいたにもかかわらず,文脈手がかりとしては学習されていない.この結果は,文脈手がかりを学習できる時間範囲には上限がある可能性を示唆している.


 (以上,視覚探索研究会として)

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