代表 suppositio
中世論理学の意味論において〈表示〉(significatio)等と並んで論究された、命題を構成する項辞の諸特性のひとつであって、これをめぐる理論は12世紀後半以降に発達した。例えば、語「人」の表示についても様々な見解があったが、普遍としての人を表示すると考えるにせよ、個物としての人を表示すると考えるにせよ、「人」はそれが使われる時々で、具体的なあれこれの人を様々に指しもすることを如何に説明するかが問題になり、それが〈代表〉という働きとしてまとめられ、結局は、語が単独で備える表示に対して、代表は語がその置かれた文脈に応じて行う働きとして理解されるようになった。
代表の仕方は次のように三つに大きく分類される。
- 〈単純代表〉(sup. simplex) 普遍に関する実在論に従えば、項辞が表示する普遍的存在者を代表するものであるのに対し、オッカム的唯名論からすれば、概念次元の語自身を代表するものである。
- 〈個体代表〉(sup. personalis) 実在論的には、項辞がその表示する普遍の下にある諸個体を代表するものであり、唯名論的には、項辞がその表示する諸個体を代表するものである。個体を代表する仕方はさらに下に述べるようにいくつかに分類される。
- 〈質料代表〉(sup. materialis) 語が語自体の質料面である音声ないし文字を代表するものである。
個体代表はさらに次のように分類される(オッカムの場合)。
- 特定個体代表(sup.descreta) 項辞が単称名(固有名/ 指示代名詞+普通名)の場合の個体代表
- 共通代表(sup.communis)
- 限定代表(sup.determinata) 不特定の誰かを限定して指す場合。「ある人が走る」の主語の代表の仕方。
- 一括代表(sup.confusa)
- 単なる一括代表(sup.confusa tantum) 項辞が表示する個体の一部を特定せずにただ一括して代表する場合。「全ての人は動物である」の述語の代表の仕方。
- 一括総揚(一括周延)代表(sup.confusa et distributiva) 項辞が表示する個体を全て余す所なく代表する場合。「全ての人は動物である」の主語の代表の仕方。