トップ > 日本語方言の情報 > 国語調査委員会の方言調査 > 音韻調査報告書

『口語法調査報告書』調査項目

凡例

第一条

波行四段活用ノ動詞ノ「たたかふ」(戦)、「やしなふ」(養)、「わらふ」(笑)、「はふ」(這)、「まふ」(舞)、ナドノ終止法、連体法ヲ、「たたかう」、「やしなう」、「わらう」、「はう」、「まう」、ノ如ク発音スルカ、又ハ「たたかうコオ」、「やしなうノオ」、「わらうロオ」、「はうホオ」、「まうモオ」ト、振仮名シタル如く発音スルカ。
  以下、仮名ニ振仮名シタルハ、皆、ソノ如ク、発音スルカ、ト問フ意ナリ。
  殊ニ、「たたかうコオ」、「やしなうノオ」ノ如ク、「う」ニ「オ」ト振仮名シタルハ、「コ・オ」「ノ・オ」ト発音スルカ、「コー」「ノー」ノ如ク発音スルカ、ヲ問フ意ナリ、ト知ラルベシ。下、皆、之ニ倣フ。

第二条

四段活用ノ動詞ヲ未来ニ用ヰタル「かかむ」(将書)、「おさむ」(将押)、「たたむ」(将立)、「いはむ」(将言)、「すまむ」(将住)、「とらむ」(将取)、ナドヲ、「かかうコオ」、「おさうソオ」、「たたうトオ」、「いはうオオ」、「すまうモオ」、「とらうロオ」、ナド云フカ。

第三条

上二段活用ノ動詞ノ終止、連体、已然ヲ、
 終止、連体  巳然     終止、連体  巳然     終止、連体  巳然
 起きる    起きれ」(ば) 落ちる    落ちれ」(ば) 強る    強れ」(ば)
 試みる    試みれ」(ば) 報いる    報いれ」(ば) りる    下りれ」(ば)
ナド云フカ。又ハ、
 起くる    起くれ」(ば) 落つる    落つれ」(ば) 強る    強れ」(ば)
 試むる    試むれ」(ば) 報ゆる    報ゆれ」(ば) 下るる    下るれ」(ば)
ナド云フカ。又右ノ動詞ノ命令ニハ、
 起きよ    落ちよ    強よ    試みよ    報いよ   下りよ」
 起きろ    落ちろ    強ろ    試みろ    報いろ   下りろ」
 起きい    落ちい    強い    試みい    報いい   下りい」
右ノ三様ノ何レニ云フカ。又、同ジ動詞ノ未來ニハ、
 起きよ   落ちよ   強   試みよ   報いよ   下りよ
 起きゅう   落ちゅう   強ゆう    試みゅう   報ゆう    下りゅう」
右ノニ様ノ何レニ云フカ。

第四条

下二段活用ノ動詞ノ終止、連体、已然ヲ、
 終止、連体  已然     終止、連体  已然     終止、連体  已然
 る     れ」(ば)  受ける    受けれ」(ば) 任せる    任せれ」(ば)
 捨てる    捨てれ」(ば) 兼ねる    兼ねれ」(ば) 教る    教れ」(ば)
 誉める    誉めれ」(ば) 消える    消えれ」(ば) 枯れる    枯れれ」(ば)
 植ゑる    植ゑれ」(ば)
ナド云フカ。又ハ、
 る     れ」(ば)  受くる    受くれ」(ば) 任する    任すれ」(ば)
 捨つる    捨つれ」(ば) 兼ぬる    兼ぬれ」(ば) 教る    教れ」(ば)
 誉むる    誉むれ」(ば) 消ゆる    消ゆれ」(ば) 枯るる    枯るれ」(ば)
 植る    植れ」(ば)
ナド云フカ。又、右ノ動詞ノ命令ニハ、
 得よ     受けよ    任せよ    捨てよ    兼ねよ    教
 誉めよ    消えよ    枯れよ    植ゑよ
 得ろ     受けろ    任せろ    捨てろ    兼ねろ    教
 誉めろ    消えろ    枯れろ    植ゑろ
 得い     受けい    任せい    捨てい    兼ねい    教
 誉めい    消えい    枯れい    植ゑい
右三様ノ何レ二云フカ。又、同ジ動詞ノ未来二ハ、
 得よ    受けよ   任せよ   捨てよ   兼ねよ   教
 誉めよ   消えよ   枯れよ   植ゑよ
 得うヨオ     受けうキヨオ    任せうシヨオ    捨てうチヨオ    兼ねうニヨオ    教へうヨオ
 誉めうミヨオ    消えうヨオ    枯れうリヨオ    植えうヨオ
 う     受きゅう   任しゅう   捨ちゅう   兼にゅう   教ゆう
 誉みゅう   清ゆう    枯りゅう   植ゆう
右ノ三檬ノ何レニ云フカ。

第五条

上一段活用ノ動詞ノ命令ニハ、
 射よ  着よ  似よ  乾よ  見よ  居よ」
 射ろ  着ろ  似ろ  乾ろ  見ろ  居ろ」
     着い  似い      見い
右ノ三様ノ何レニ云フカ。又、同ジ動詞ノ未来ニハ、
 射よ 着よ 似よ 乾よ 見よ 居よ
     着う  似う      見う
右ノ二様ノ何レニ云フカ。

第六条

加行変格活用ノ「る」命令ニハ、「こよ」、「こい」、「こ」、ノ何レヲ用ヰルカ。又、其未来ニハ、「こよ」、「きよ」、「こ」、ノ何レヲ用ヰルカ。

第七条

佐行変格活用ノ「る」ノ命令ニハ、「せよ」、「しよ」、「しろ」、「せい」、ノ何レヲ用ヰルカ。又、其未来ニハ、「しよ」、「シヨ」、「しゅう」、ノ何レヲ用ヰルカ。

第八条

上二段活用ノ「恨む」ヲ、尋常ノ四段活用ノ如ク用ヰテ居ルカ。
 将然   連用  終止、連体  巳然   命令  未来
 恨ま(ぬ) 恨み  恨む     恨め(ば) 恨め  恨まうモオ

第九条

奈行変格活用ノ「死ぬ」、「往ぬ」、ノ連体ヲ、「死ぬ」(人)、「往ぬ」(時)、已然ヲ、「死ね」(ば)、「往ね」(ば)、ナドト、尋常ノ四段活用ノ如ク用ヰテアルカ。

第十条

良行変格活用ノ「有り」、「居り」、ノ終止ヲ、「有る」、「居る」、ト尋常ノ四段活用ノ如ク用ヰテアルカ。

第十一条

四段活用ノ「飽く」、「借る」、「足る」ト云フ動詞ヲ、次ノ如ク、上一段活用ニ用ヰテハ居ラヌカ。
 将然、連用  終止、連体  巳然     命令   未来
 飽き     飽きる    飽きれ(ば)  飽きろ  飽きよ
 借り     借りる    借りれ(ば)  借りろ  借りよ
 足り     足りる    足りれ(ば)  足りろ  足りよ
尚、本来ノ活用ヲ混用スルコトアリヤ。

第十二条

上一段活用ノ動詞ノ「射る」、「鋳る」、「着る」、「似る」、「煮る」、「乾る」、「る」、「見る」、等、及ビ、下一段活用ノ「蹴る」ヲ、四段活用ノ如ク用ヰルコトハナキカ。然ルトキニ、尚、本来ノ活用ヲ混用シテハ居ラヌカ。

第十三条

「言ふ」ト云フ動詞ヲ、「ゆ」、「ゆ」(ゆッて)、「ゆ」、「ゆ」、「ゆはうオオ」、ナド云フコトアリヤ。

第十四条

加行四段活用ノ動詞ヨリ、「て」「た」ニ続クルトキハ左ノ如ク云フカ。
 「咲い」[(て)/(た)] 「クジい」[(て)/(た)] 「イソい」[(で)/(だ)] 「イソい」[(で)/(だ)]

第十五条

佐行四段活用ノ動詞ヨリ、「て」「た」ニ続クルトキハ、
 「指い」[(て)/(た)] 「い」[(て)/(た)] 「致い」[(て)/(た)] 「オトい」[(て)/(た)] 「残い」[(て)/(た)] 「離い」[(て)/(た)] 「流い」[(て)/(た)]
 「崩い」[(て)/(た)] 「暮い」[(て)/(た)] 「殺い」[(て)/(た)] 「ツブい」[(て)/(た)] 「ノバい」[(て)/(た)] 「スマい」[(て)/(た)]
 (「勉強致います」)ナドモ云フカ)。
右ノ如ク云フカ。而シテ、同ジ活用ニテモ、「消い」(て)「押い」(て)「召い」(て)「い」(て)「貸い」(て)「い」(て)「伏い」(て)ナド用ヰヌカ。)

第十六条

多行良行ノ四段活用ヨリ、「て」「た」ニ続クルトキハ、次ノ如ク云フカ。
 「打ツ」[(て)/(た)]  「勝ツ」[(て)/(た)]  「取ツ」[(て)/(た)]  「切ツ」[(て)/(た)]

第十七条

波行四段ノ活用ヨリ、「て」「た」ニ続クルトキハ、次ノ二様ノ何レニ云フカ。
 「言ツ」[(て)/(た)]  「払ツ」[(て)/(た)]  「拾ツ」[(て)/(た)]  「戦ツ」[(て)/(た)]
 「言う」[(て)/(た)]  「払」[(て)/(た)]  「拾」[(て)/(た)]  「戦」[(て)/(た)]

第十八条

末行ト波行濁音トノ四段活用、及ビ奈行変格活用ヨリ、「て」「た」ニ続クルトキハ、
 「飲ん」[(で)/(だ)] 「読ん」[(で)/(だ)] 「飛ん」[(で)/(だ)] 「遊ん」[(で)/(だ)] 「死ん」[(で)/(だ)] 「往ん」[(で)/(だ)]
右ノ如クニ云フカ、別ニ言フヤウアルカ。(「飲ん」[(で)/(だ)]  「頼ん」[(で)/(だ)] ヲ、「飲」[(で)/(だ)]  「頼」[(で)/(だ)] 、ナドトハ云ハヌカ。)

第十九条

「指してる」、「受けてる」ヲ、「指してる」、「受けてる」ト云ヒ、「指してる」、「受けてる」ヲ、「指しとる」、「受けとる」、又ハ、「指しちょる」「受けちょる」、ト云フコトアリ、何レヲ用ヰテアルカ。

第二十条

「御覧なさる」「御聞き下さる」、ナドノ「なさる」「下さる」ハ、左ノ如ク、四段ニ活用シテ、連用ニ、下二段活用ヲ混用シテアリ、ソノ如ク用ヰテアリヤ。
 将然     連用              終止、連体  巳然     命令   未来
 なさら(ぬ)  なさり(ませ)          なさる    なされ(ば)  なされ  なさらうロオ
        なされ[(て)(た)/(たい、たく)]                なさい
 くださら(ぬ) くださり(ませ)         くださる   くだされ(ば) くだされ くださらうロオ
        くだされ[(て)(た)/(たい、たく)]                ください
尚、連用ニ、「なさッ[(て)/(た)]」「くださッ[(て)/(た)]」ナドモ用ヰルカ。命令ニ、「なさい」「ください」モ用ヰルカ。
又、「なされい」「くだされい」ト、「い」ヲ添ヘテモ云フカ。

第廿一条

「なさります」、「ござります」、ナドノ「ます」ハ、左ノ如ク、下二段ト四段トノ活用ヲ混用シテアリ、ソノ如ク用ヰテアリヤ。
 将然   連用       終止、連体  巳然     命令  未来
 ませ(ぬ) まし[(て)/(た)]  ます     ますれ(ば)  ませ  まシヨ
               まする    ませ(ば)   まし
終止、連体ト命令トニ、各二様ノ活用アリ、何レヲ用ヰテアルカ、又、二様アルニ意義ノ差アルカ。又、命令ニ、「ませい」ト、「い」ヲ添フルコトアルカ。(「立ちませい」ナド、)

第廿二条

「入らッしゃる」、「受けさッしゃる」、(「入らせられる」、「受けさせられる」ノ約)、ナドハ、左ノ如ク活用ス、ソノ如ク用ヰテアリヤ。
 将然       連用      終止、連体   巳然
 入らッしゃら(ぬ) 入らッしゃり  入らッしゃる  入らッしゃれ(ば)
 命令       未来
 入らッしゃれ   入らッしゃらうロオ
 入らッしゃい
尚、連用ヲ「て」「た」ニ続クル【トキ】ハ、「入らッしゃッ[(て)/(た)]」「受けさッしゃッ[(て)/(た)]」ト用ヰルカ。命令ニ「入らッしゃい」「受けさッしゃい」ヲ用ヰルカ。

※入力者注:【トキ】原本では合字

第廿三条

動詞ヲ、所相、(受身)勢相(己が力、能ク為スニ足ル意)ニ形作リタル、ソノ終止、連体、已然ニハ、
 終止、連体  已然      終止、連体  已然
 撃たれる   撃たれれ(ば)  報いられる  報いられれ(ば)
 撃たるる   撃たるれ(ば)  報いらるる  報いらるれ(ば)
 終止、連体  已然
 タスけられる  助けられれ(ば)
 助けらるる  助けらるれ(ば)
右二様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。又、名詞、漢語ヲ所相、勢相ニ形作リタルニハ、
 ウハサされる  噂されれ(ば)  介抱される  介抱されれ(ば)
 噂さるる   噂さるれ(ば)  介抱さるる  介抱さるれ(ば)
 噂せられる  噂せられれ(ば) 介抱せられる 介抱せられれ(ば)
 噂せらるる  噂せらるれ(ば) 介抱せらるる 介抱せらるれ(ば)
右四様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。

第廿四条

動詞ノ所相、勢相ノ未来ニハ、
 撃たれよ  報いられよ  助けられよ
 撃たリヨ   報いらリヨ   助けらリヨ
 撃たりゅう  報いらりゅう  助けらりゅう
右三様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。又、名詞、漢語ノ所相、勢相ノ未来ニハ、
 噂されよ  介抱されよ
 噂さリヨ   介抱さリヨ
 噂さりゅう  介抱さりゅう
 噂せらリヨ  介抱せらリヨ
 噂せらりゅう 介抱せらりゅう
右五様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。

第廿五条

動詞ノ所相ノ命令ニハ、
 撃たれよ  報いられよ  助けられよ
 撃たれろ  報いられろ  助けられろ
 撃たれい  報いられい  助けられい
右三様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。又、名詞、漢語ノ所相ノ命令ニハ、
 噂されよ  介抱されよ
 噂されろ  介抱されろ
 噂されい  介抱されい
 噂せられい 介抱せられい
右四様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。

第廿六条

四段活用ノ動詞ノ勢相ノ「行かれる」、「読まれる」、ナドヲ約メヲ、左ノ如ク、下一段活用ノ如ク用ヰルコトアリヤ。
 将然、連用  終止、連体  巳然     命令  未来
 行け     行ける    行けれ(ば)      行けよ
 押せ     押せる    押せれ(ば)      押せよ
 勝て     勝てる    勝てれ(ば)      勝てよ
 言     言る    言れ(ば)      言
 読め     読める    読めれ(ば)      読めよ
 取れ     取れる    取れれ(ば)      取れよ
尚、奈行変格活用ノ「死ぬ」ヲモ、「死ね」、「死ねる」、「死ねれ」(ば)、「死ねよ」ナド用ヰルカ。

第廿七条

動詞、漢語ヲ使役相ニ形作リタル、ソノ終止、連体、已然ニハ、
 終止、連体  已然      終止、連体  已然
 読ませる   読ませれ(ば)  立てさせる  立てさせれ(ば)
 読まする   読ますれ(ば)  立てさする  立てさすれ(ば)
 終止、連体  已然
 介抱させる  介抱させれ(ば)
 介抱さする  介抱さすれ(ば)
右ノ二様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。又、使役相ノ命令ニハ、
 読ませよ   立てさせよ  介抱させよ
 読ませろ   立てさせろ  介抱させろ
 読ませい   立てさせい  介抱させい
右三様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。又、未来ニハ、
 読ませよ  立てさせよ 介抱させよ
 読まシヨ   立てさシヨ  介抱さシヨ
 読ましゅう  立てさしゅう 介抱さしゅう
右三様ノ内、何レヲ用ヰテアルカ。

第廿八条

使役相ヲ、又或ハ、左ノ如ク、四段ト下二段トノ活用ヲ混淆セサセテ、形作ルコトアルカ。
 将然     連用            終止、連体 巳然      命令       未来
 読まさ(ぬ)  読ま[し(て)/せ(ます)]    読ます   読ますれ(ば)  読ませ[よ/い]   読まさうソオ
 立てささ(ぬ) 立て[さし(て)/させ(ます)]  立てさす  立てさすれ(ば) 立てさせ[よ/い]  立てささうソオ
 介抱ささ(ぬ) 介抱[さし(て)/させ(ます)]  介抱さす  介抱さすれ(ば) 介抱させ[よ/い]  介抱ささうソオ
命令ノ「せよ」、「せい」、「させよ」、「させい」、何レヲ用ヰテアルカ。

第廿九条

佐行変格活用ノ「」ノ所相、勢相ノ「せらるる」、使役相ノ「せさする」、ヲ約メテ、左ノ二様ニ云フコトアリ、何レヲ用ヰテアルカ。
       終止、連体  已然     終止、連体  已然
 所相、勢相 される    されれ(ば)  さるる    さるれ(ば)
 使役相   させる    させれ(ば)  さする    さすれ(ば)

第三十条

漢語ヲ動詞ニ形作ルニ、左ノ三様ニ活用セサセテ用ヰルコトアリ。
佐行変格ノ如キ活用ヲ添フルモノ、
 将然          連用  終止、連体 巳然     命令         未来
 勉強[せ(ぬ)/し(ない)]  勉強し 勉強する  勉強すれ(ば) 勉強[せよ/しろ/せい] 勉強[せう/しよう]
 感心[せ(ぬ)/し(ない)]  感心し 感心する  感心すれ(ば) 感心[せよ/しろ/せい] 感心[せう/しよう]
佐行上一段活用トスルモノ、
 察し[(ぬ)/(ない)]    察し  察しる   察しれ(ば)  察し[ろ/い]      察しよう/しゅう
 案じ[(ぬ)/(ない)]    案じ  案じる   案じれ(ば)  案じ[ろ/い]      案じよう/しゅう
 応じ[(ぬ)/(ない)]    応じ  応じる   応じれ(ば)  応じ[ろ/い]      応じよう/じゅう
佐行四段活用トスルモノ、
 議さ[(ぬ)/(ない)]    議し  議す    議せ(ば)   議せ         議さうソオ
 さ[(ぬ)/(ない)]    解し  解す    解せ(ば)   解せ         解さうソオ
 訳さ[(ぬ)/(ない)]    訳し  訳す    訳せ(ば)   訳せ         訳さうソオ
又、右ノ四段活用ニ用ヰルモノヲ、又、勢相ニ形作リテ、
 議せ[(ぬ)/(ない)]    議せ  議せる   議せれ(ば)             議せよ
 解せ[(ぬ)/(ない)]    解せ  解せる   解せれ(ば)             解せよ
 訳せ[(ぬ)/(ない)]    訳せ  訳せる   訳せれ(ば)             訳せよ
右ノ四様ノ活用、何レモ用ヰテアルカ。然ルトキハ、打消ノ「ぬ」、「ない」、命令ノ「せよ」、「しろ」、「せい」、「しい」、未来ノ「シヨ」、「しよう」、「しゅう」、何レヲ用ヰテアルカ。

第卅一条

動詞ヲ打消ニ形作ルニハ
 聞かない   聞かない[(で)/(けれど)] 聞かなく[(ば)(て)/(なる)] 聞かなけれ(ば)
 聞かなかッた 聞かなからうロオ
ナド云フカ、又ハ、
 聞かぬ    聞かぬ[(で)/(けれど)]  聞かず[(ば)(に)/(とも)]  聞かね(ば)
 聞かなんだ  聞かいで
ナド云フカ。又、此ノ打消ノ「ぬ」ヲ、「ん」ト発音スルカ。

第卅二条

加行変格活用ノ「」ヲ、打消ニ形作ルニハ、
 こぬ こない きない
右ノ何レヲ用ヰテアルカ。

第卅三条

佐行変格活用ノ「」ヲ、打消ニ形作ルニハ、
 しない しなく しなけれ(ば)
 せぬ  せず  せね(ば)
右ノ何レヲ用ヰテアルカ。

第卅四条

加行、佐行、変格活用ヲ、打消ノ「まい」(まじノ転)ニ続クルトキハ、
 くまい こまい きまい
 すまい せまい しまい
右ノ何レヲ用ヰテアルカ。

第卅五条

形容詞ノ語尾ノ「く」ヨリ、動詞、形容詞、若シクハ「テニヲハ」ノ「て」ニ続クトキハ、
 広くスマふ     寒くなる     宜しくない 大きくない
 好くて(好くッて) 重くて(重くッて)
ナド云フカ、又ハ、
 広住ふ     寒うなる     宜しうない 大きうない
 好て      重
ナド云フカ。

第卅六条

形容詞ノ「好し」「好き」ヲ、「よい」ト云フカ、「いい」ト云フカ、「えい」ト云フカ、「ええ」ト云フカ。

第卅七条

言葉ノ末ノ断定ニ用ヰル「である」ヲ約転シテ、「花だ」、「綺麗だ」、「賑やかだ」、又ハ、「花ぢゃ」、「綺麗ぢゃ」、「賑やかぢゃ」、又は、「花や」、「綺麗や」、「賑やかや」、ナド云フ、此ノ「だ」、「ぢゃ」、「や」、ノ三様ノ、何レヲ用ヰテアルカ。
又、「花です」、「綺麗です」、「賑やかです」、或ハ、「花どす」、「綺麗どす」、「賑やかどす」、又ハ、「花だす」、「綺麗だす」、「賑やかだす」、ナドトモ云フ、此ノ三様モ、何レヲ用ヰテアルカ。
右、二類、各三様ノ言葉ノ活用ヲ、次ニ、表ニ掲ゲタレバ、其欠ケタルアラバ、補ハルベク、誤アラバ、示サルベシ。
 現在  過去   未来
 である であッた であらう であッたらうロオ
 だ   だッた  だらうロオ  だッたらうロオ
 ぢゃ  ぢゃッた ぢゃらうロオ ぢゃッたらうロオ
 や   やッた  やらうロオ  やッたらうロオ
 です  でした  でシヨ  でしたらうロオ
 どす
 だす  だした

第卅八条

仮設ノ言葉ニ、
 晴れたら行かうコオ  晴れたらば行かうコオ
 止めたららうロオ 止めたらば可からうロオ
 来るなら来い   来るならば来い
 長いなら切らうロオ  長いならば切らうロオ
右ノ如ク、「ば」ヲ加フルト加ヘヌトアリ、何レヲ用ヰテアルカ。又ハ、「ば」ヲ加フルト加ヘヌトニ因テ、意味ノ変ハリニテモアルカ。又、「たら」ヲ、「昨日尋ねたら、ら[なかッた/なんだ]」、ノ如ク、過去ニモ用ヰルカ。