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会話(ロールプレイ) ─茂倉─

3. 祝い ▶再生

1Aはい。 としこさーん。はい。 としこさーん。
2Bうん。うん。
3はーい。はーい。
4Aいるー。いるー?
5Bあー いるよ。あー いるよ。
6Aめしょー くっとかー。めしを 食ったか?
7Bあー ままー くったぞー。あー めしを 食ったよ。
8Aほーかー。そうかー。
9Bうん。うん。
10Aまこ゜ん でとーちゅーじゃん[1]孫が できたというじゃない。
11おめでとー。おめでとー。
12Bうん。 ありか゜とー。 ありか゜とな。うん。 ありがとう。 ありがとうな。
13A(お)(お)
14おとこか おんなかー。おとこか おんなか?
15Bうーん。うーん。
16A(笑)(笑)
17B(おんな) おんなのよーな ことー ゆー。 まー どっちでも げんきで ありゃー いーえね。(おんな) おんなのような ことを 言う。 まあ どっちでも 元気で あれば いいよね。
18Aうん。 そー そー そ。  なんでも いーわ。 げんきで あればー。  な。  うん。 (ほ)うん。 そう そう そう。  なんでも いいわ。 元気で あれば。  な。  うん。 (ほ)
19Bうん。うん。
20はい はい。はい はい。
21ねー ひとの まーからじゃーねー[2]ねー 人の 前からではね。
22A(つ) うん。(つ) うん。
23Bしこーの[3] ことー いえのーいえね。 自分勝手な ことを 言えないよね。
24Aん。 いえのーでな。うん。 言えないからね。
25Bうん。うん。
26うん。うん。
27Aうん。 ありか゜と ありか゜と。  うん いや (でん) どっちも  げんきじゃーね。 うん。うん。 ありがとう ありがとう。 うん いや (でん) どっちも 元気ならね。 うん。
28Bうん。うん。
29うん。うん。
30そー そー。 どっちも げんきなよーだわ。 うん。そう そう。 どっちも 元気なようだわ。 うん。
31Aうん。うん。
32Bよかった よかった。 ん。よかった よかった。 うん。
33A(あ) あんきしで。(あ) 安心しなさい。
34Bほーい。ほーい。
35Aな。ね。
36Bほい。 あんきしゅざわ[4]ほい。 安心するわ。
37ふたつに なりゃー[5] これで もー あんきだでね。 へー。ふたつに なれば これで もう 安心だからね。 はい。
38Aうん。 あんきだでな。 うん。 そー そー そー。うん。 安心だからな。 うん。 そう そう そう。
39これ すこしばかりだけん おしめでも かってこれ すこしばかりだけど おしめでも 買って
40やって[6]やって。
41Bいや わりーな。 そんなに えらい あのー いや 悪いな。 そんなに ずいぶんと あのー 
42Aいや いや。いや いや。
43Bしんぺーさせちゃうじゃ[7] わりーわ。心配させてしまうのでは 悪いわ。
44Aしんぺーするほどの[8] ぜにじゃ ねーわ。 ちっとだわ。 (笑)気を遣う程の お金じゃ ないわ。 ちょっとだわ。 (笑)
45Bばか あのしゅあ[9] あんきらこんきら してーてなー。ばか あの人たちは のんきに していてね。
46いつ くるとかも わからなー[10]いつ 来るとかも 分からない。
47いま ちっと でかく ならにゃ このーと おもーどー。 わりーな。もう 少し 大きく ならなければ 来ないと 思うんだ。 悪いね。
48Aうん。 ほーで いーじゃん。 そん ときで。うん。 それで いーじゃない。 その 時で。
49あるく とき くらー[11]歩く 時 来るわ。
50Bいやー すまん すまん。いやー すまん すまん。
51A(笑)  な。 うん。(笑) な。 うん。
52Bそれじゃー まー たいへんだけど (その) その いとに[12] きたらなーそれじゃあ まあ 大変だけど (その) その うちに 来たらな
53Aうん。うん。
54B(あん)(あん)
55みて くりょー。 かおでも みて くりょー。見て くれ。 顔でも 見て くれ。
56A(かお) かおー みせてね。 うん。(顔) 顔を 見せてね。 うん。
57Bありか゜と ありか゜と。 うん。ありがとう ありがとう。 うん。
58Aありか゜と。 ん。ありがとう。 うん。
59うん。うん。
60Bこの やまん なかに いるとなーこの 山の 中に いるとな
61だれか こえお かけて くれるわ うれしーもんだね。誰かが 声を かけて くれるのは 嬉しいものだね。
62A(へ) そー。 それが いちばんだ。(へ) そう。 それが 一番だ。
63Bうん。うん。
64Aうん うん。 ありか゜と。うん うん。 ありがとう。
65Bありか゜と。 ありか゜とな。ありがとう。 ありがとうな。
66Aうん うん。うん うん。
67Bじゃ ごちそーさまでした。じゃあ ご馳走様でした。
68Aいや いや いや。 (ほん) ほんの すこ゜しだぞ[13]いや いや いや。 (ほん) ほんの 少しだぞ。
69Bいーえ。 ありか゜と。いいえ。 ありがとう。
70Aうん。うん。
71Bすいません。すいません。
72ありか゜とー。ありがとう。
73Aほんじゃーな。それじゃあな。
74Bはい。 ありか゜とな。はい。 ありがとうな。
75われも[14] からだー きお つけろ。お前も 体[を] 気を 付けろ。
76Aうん。 ありか゜と。うん。 ありがとう。
77Bうん。 ありか゜と。うん。 ありがとう。
78Aどっちもな。 (笑)どっちもな。 (笑)
79Bはい。 はーい。はい。 はーい。
80A(笑)(笑)
81ありか゜と。ありがとう。

[1] でとー:「できた」の意。「でる」de-ru の過去形。山梨西部方言において広く動詞 「でる」は「できる」の意で使われる。

[2] ひとの まーからじゃーねー:話者に確認したところ、「子のない人の前から見れば男女どちらがいいなどとは言いにくい」という趣旨。慣用的な表現で、この表現で相手にも通じるとのこと。

[3] しこー:『日本方言大辞典』では「変に気どること」という意として「しこうのことを言う子供だ」という南巨摩郡(石川緑泥『山梨県河内方言』より)の例をあげる。「自分勝手な」という意味は話者の教示による。

[4] あんきしゅざわ:あんきしゅざわ [aŋkiɕɯdzawa] と聞こえるが、話者によると「あんきしるざわ」と言っているとのこと。「しる」は su-ru (する)が一段動詞に近づいた形だと思われるが「ざわ」の文法的位置づけは不明。

[5] ふたつに なりゃー:子が生まれて母体と子の二つに分かれれば、の意。

[6] やって:前の発話は「買って。」と一度言い切ったように聞こえるが、その後に「やって」と加えて、全体で「買ってやって。」と言い直したようだ。

[7] しんぺーさせちゃうじゃ:意訳すると「気を遣わせてしまっては」。「しんぺー」はここでは「気を遣う」「世話をする」意だと思われる。 [ɕimpae̯] とも聞こえる。

[8] しんぺーするほど:ここでは「十分に配慮して世話をすると言えるほどの」ぐらいの意だと思われる。

[9] あのしゅ:子ども夫婦を指す。

[10] わからなー::動詞否定形「~なー」は山梨西部方言で広く用いられる(吉田雅子 2014 「山梨県甲府市方言」『全国方言文法辞典資料集(2)活用体系』)。

[11] あるく とき くらー:「赤ん坊が歩く頃になれば来るよ」の意。

[12] いと:『日本方言大辞典』によると「時間」「間」の意。

[13] すこ゜しだぞ:「こ゜」の後にわずかな間がある。「すこしだぞ」の言い誤りと思われる。

[14] 「わ」が「あ」に近く聞こえる。