トップ > 日本語方言の情報 > 早川町のことば > 会話:茂倉 1. 勧誘
1 | A | あ としこさーん。 | あ としこさん。 |
2 | B | はい。 | はい。 |
3 | A | いたか[1]。 | いるか。 |
4 | B | あー いたよ。 | ああ いるよ。 |
5 | A | あのなー | あのな |
6 | B | うん。 | うん。 |
7 | A | しんぼくかいで りょこーん あるけんか゜ どー する。 いくか。 | 親睦会で 旅行が あるけど どう する? 行くか? |
8 | B | おやーなー | 私はな |
9 | A | うん。 | うん。 |
10 | B | だめだ いっさら[2] あしん ちんか゜らちんか゜らで[3] あるきずらいで | だめだ。 まったく 足が 不自由で 歩きづらいので、 |
11 | いけのーかもしらんど。 | 行けないかもしれないよ。 | |
12 | A | ばか。 おれも ほーどーわ。 | ばか。 私も そうだわ。 |
13 | ほんだで (い) いって みりゃー[4]。 | それだから (い) 行って みよう。 | |
14 | ちかい とこどーちゅーわ。 | 近い 所だというよ。 | |
15 | B | (ほ) | (ほ) |
16 | ほーか。 ほんじゃー めーどの みやけ゜に いって みるか。 | そうか。 それじゃあ 冥土の 土産に 行って みるか。 | |
17 | A | んじゃ そー しじゃー。 (笑) | それじゃ そう しよう。 (笑) |
18 | B | ね。 | ね。 |
19 | うん。 | うん。 | |
20 | じゃー そー しらざ[5]。 | じゃあ そう しよう。 | |
21 | A | ん ん ん。 な。 | うん うん うん。 な? |
22 | B | いって みて こざーな。 うん。 | 行って みて 来ような。 うん。 |
23 | A | うん。 | うん。 |
24 | かいひわなー | 会費はな | |
25 | B | うん。 | うん。 |
26 | A | さんぜんえんくれーだぞ[6]。 | 三千円くらいだよ。 |
27 | B | あー ほーか ほーか。 | ああ そうか そうか。 |
28 | A | うん。 | うん。 |
29 | B | ありか゜と ありか゜と。 | ありがとう ありがとう。 |
30 | まー さんぜんえんわ どーにか して うみだすでーな[7]。 | まあ 三千円は どうにか して 生み出すからな。 | |
31 | A | うみださじゃな。 | 生み出そうな。 |
32 | B | じゃ いって みて こざーな。 | じゃ 行って みて 来ような。 |
33 | A | うん うん。 いって こじゃーな。 うん。 | うん うん。 行って 来ような。 うん。 |
34 | B | うん うん。 わかった わかった。 | うん うん。 分かった 分かった。 |
35 | A | あの よい ちかいでな。 | あの 世に 近いからな。 |
36 | B | うん うん。 | うん うん。 |
37 | A | うん。 めーどの みやけ゜に。 | うん。 冥土の 土産に。 |
38 | B | ほー。 うん。 (お) おれも めーどの みやけ゜ | そう。 うん。 (お) 私も 冥土の 土産 |
39 | A | うん。 | うん。 |
40 | B | おとーの[8] とけー いく まえにわ その くらいの はなしお して もってって きかせるぞ。 | お父さんの 所に 行く 前には その くらいの 話を して 持って行って 聞かせるぞ。 |
41 | A | (笑) | (笑) |
42 | XX | XX | |
43 | うん ほーだな。 | うん そうだな。 | |
44 | B | おらー どこどこー いって きたーだぞって[9]。 な。 わかった。 | 私は どこどこ[に] 行って 来たんだぞって。 な。 分かった。 |
45 | A | (笑) | (笑) |
46 | (笑) うん うん。 | (笑) うん うん。 | |
47 | ん。 | うん。 | |
48 | B | いく。 いくよ。 うん。 | 行く。 行くよ。 うん。 |
49 | A | ん。 んじゃ いこーね。 うん。 | うん。 じゃ 行こうね。 うん。 |
50 | B | じゃ いこーな。 うん うん。 | じゃ 行こうな。 うん うん。 |
51 | A | うん。 じゃー (ちんく) (ちん) あのー | うん。 じゃあ (ちんく) (ちん) あのー |
52 | B | うん。 ありか゜と ありか゜と。 ありか゜とよ。 | うん。 ありがとう ありがとう。 ありがとうよ。 |
53 | A | むこーえ[10] | 向こうに |
54 | B | うん。 | うん。 |
55 | A | ゆーね。 | 言うね。 |
56 | B | おー われも[11] あしも ちんか゜らだけんか゜[12] まー いって こざーな。 うん。 | おお お前も 足も 不自由だが まあ 行って 来ような。 うん。 |
57 | A | (じ) 事務局 | (じ) 事務局 |
58 | うん。 | うん。 | |
59 | うん。 じゃーな。 | うん。 じゃあな。 | |
60 | B | あい。 | はい。 |
61 | はい。 ありか゜と。 | はい。 ありがとう。 | |
62 | A | うん。 またな。 | うん。 またな。 |
63 | B | じゃー いきます。 はい。 | じゃあ 行きます。 はい。 |
[1] いたか:現在の場所存在を表す文でタ形が使われている。
[2] いっさら:『甲州方言』は「雨がいっさら降らん」などの文法的な否定形と呼応する例をあげて「下に打ち消しの語を伴う陳述副詞である。「いっさらだめだ」と言えば、「全くよくない」の意味で、打ち消しの意味が強い」とする(p.73)。
[3] ちんか゜らちんか゜ら:『日本方言大辞典』によると「ちんがら」および「ちんが」等の類似形は神奈川県や東海地方の方言において「片足跳び」「片足が不自由なこと」「片足をひきずって歩くさま」の意を持つ。
[4] みりゃー:山梨西部方言で広く使われる勧誘形「みざー」の変異形と思われる。話者によると「みざー」「みじゃー」「みりゃー」はいずれも同じ意味の表現として使われるという。この談話の後の箇所では「しじゃー」(=しよう)、「うみださじゃ」(=生み出そう)と「~じゃー」も使われている。
[5] しらざ:「する」の勧誘形「しざー」から、いわゆるラ行五段動詞化が起こった形。話者によれば「こざー」(来よう)を「こらざー」とも言えるとのこと。
[6] 末尾の「ぞ」: [ðo] か。「ど」[do]に近く聞こえる。
[7] うみだす:「生み出す」。ここでは「捻出する」の意。
[8] おとー:「父」の意だが、ここでは夫を指す。
[9] 「きたーだぞ」の「ぞ」:[ðo] か。「ど」[do] に近く聞こえる。
[10] むこーえ:[mɯkoːje] 渡り音[j]がはっきり聞こえる。
[11] われ:同等以下に用いられるぞんざいな二人称代名詞。
[12] われも あしも ちんか゜らだけんか゜:「あなたも足が不自由だが」の意だと思われる。