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会話(ロールプレイ) ─茂倉─

1. 勧誘 ▶再生

1Aあ としこさーん。あ としこさん。
2Bはい。はい。
3Aいたか[1]いるか。
4Bあー いたよ。ああ いるよ。
5Aあのなーあのな
6Bうん。うん。
7Aしんぼくかいで りょこーん あるけんか゜ どー する。 いくか。親睦会で 旅行が あるけど どう する? 行くか?
8Bおやーなー私はな
9Aうん。うん。
10Bだめだ いっさら[2] あしん ちんか゜らちんか゜らで[3] あるきずらいでだめだ。 まったく 足が 不自由で 歩きづらいので、
11いけのーかもしらんど。行けないかもしれないよ。
12Aばか。 おれも ほーどーわ。ばか。 私も そうだわ。
13ほんだで (い) いって みりゃー[4]それだから (い) 行って みよう。
14ちかい とこどーちゅーわ。近い 所だというよ。
15B(ほ)(ほ)
16ほーか。 ほんじゃー めーどの みやけ゜に いって みるか。そうか。 それじゃあ 冥土の 土産に 行って みるか。
17Aんじゃ そー しじゃー。 (笑)それじゃ そう しよう。 (笑)
18Bね。ね。
19うん。うん。
20じゃー そー しらざ[5]じゃあ そう しよう。
21Aん ん ん。 な。うん うん うん。 な?
22Bいって みて こざーな。 うん。行って みて 来ような。 うん。
23Aうん。うん。
24かいひわなー会費はな
25Bうん。うん。
26Aさんぜんえんくれーだぞ[6]三千円くらいだよ。
27Bあー ほーか ほーか。ああ そうか そうか。
28Aうん。うん。
29Bありか゜と ありか゜と。ありがとう ありがとう。
30まー さんぜんえんわ どーにか して うみだすでーな[7]まあ 三千円は どうにか して 生み出すからな。
31Aうみださじゃな。生み出そうな。
32Bじゃ いって みて こざーな。じゃ 行って みて 来ような。
33Aうん うん。 いって こじゃーな。 うん。うん うん。 行って 来ような。 うん。
34Bうん うん。 わかった わかった。うん うん。 分かった 分かった。
35Aあの よい ちかいでな。あの 世に 近いからな。
36Bうん うん。うん うん。
37Aうん。 めーどの みやけ゜に。うん。 冥土の 土産に。
38Bほー。 うん。 (お) おれも めーどの みやけ゜そう。 うん。 (お) 私も 冥土の 土産
39Aうん。うん。
40Bおとーの[8] とけー いく まえにわ その くらいの はなしお して もってって きかせるぞ。お父さんの 所に 行く 前には その くらいの 話を して 持って行って 聞かせるぞ。
41A(笑)(笑)
42XXXX
43うん ほーだな。うん そうだな。
44Bおらー どこどこー いって きたーだぞって[9]。 な。 わかった。私は どこどこ[に] 行って 来たんだぞって。 な。 分かった。
45A(笑)(笑)
46(笑) うん うん。(笑) うん うん。
47ん。うん。
48Bいく。 いくよ。 うん。行く。 行くよ。 うん。
49Aん。 んじゃ いこーね。 うん。うん。 じゃ 行こうね。 うん。
50Bじゃ いこーな。 うん うん。じゃ 行こうな。 うん うん。
51Aうん。 じゃー (ちんく) (ちん) あのーうん。 じゃあ (ちんく) (ちん) あのー
52Bうん。 ありか゜と ありか゜と。 ありか゜とよ。うん。 ありがとう ありがとう。 ありがとうよ。
53Aむこーえ[10]向こうに
54Bうん。うん。
55Aゆーね。言うね。
56Bおー われも[11] あしも ちんか゜らだけんか゜[12] まー いって こざーな。 うん。おお お前も 足も 不自由だが まあ 行って 来ような。 うん。
57A(じ) 事務局(じ) 事務局
58うん。うん。
59うん。 じゃーな。うん。 じゃあな。
60Bあい。はい。
61はい。 ありか゜と。はい。 ありがとう。
62Aうん。 またな。うん。 またな。
63Bじゃー いきます。 はい。じゃあ 行きます。 はい。

[1] いたか:現在の場所存在を表す文でタ形が使われている。

[2] いっさら:『甲州方言』は「雨がいっさら降らん」などの文法的な否定形と呼応する例をあげて「下に打ち消しの語を伴う陳述副詞である。「いっさらだめだ」と言えば、「全くよくない」の意味で、打ち消しの意味が強い」とする(p.73)。

[3] ちんか゜らちんか゜ら:『日本方言大辞典』によると「ちんがら」および「ちんが」等の類似形は神奈川県や東海地方の方言において「片足跳び」「片足が不自由なこと」「片足をひきずって歩くさま」の意を持つ。

[4] みりゃー:山梨西部方言で広く使われる勧誘形「みざー」の変異形と思われる。話者によると「みざー」「みじゃー」「みりゃー」はいずれも同じ意味の表現として使われるという。この談話の後の箇所では「しじゃー」(=しよう)、「うみださじゃ」(=生み出そう)と「~じゃー」も使われている。

[5] しらざ:「する」の勧誘形「しざー」から、いわゆるラ行五段動詞化が起こった形。話者によれば「こざー」(来よう)を「こらざー」とも言えるとのこと。

[6] 末尾の「ぞ」: [ðo] か。「ど」[do]に近く聞こえる。

[7] うみだす:「生み出す」。ここでは「捻出する」の意。

[8] おとー:「父」の意だが、ここでは夫を指す。

[9] 「きたーだぞ」の「ぞ」:[ðo] か。「ど」[do] に近く聞こえる。

[10] むこーえ:[mɯkoːje] 渡り音[j]がはっきり聞こえる。

[11] われ:同等以下に用いられるぞんざいな二人称代名詞。

[12] われも あしも ちんか゜らだけんか゜:「あなたも足が不自由だが」の意だと思われる。