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『オスロ合意から20年』合評会報告
鶴見太郎(埼玉大学)

 概要

  • 日時:5月24日(日)、14時00分〜17時20分
  • 会場:東京大学本郷キャンパス東洋文化研究所3階大会議室
  • 評者:
    • 立山良司氏(防衛大学校名誉教授、日本エネルギー経済研究所客員研究員)
    • 臼杵陽氏(日本女子大学教授)
  • 主催:NIHUイスラーム地域研究東京大学拠点

 報告

今回の合評会の対象となった論集は、オスロ合意から20年が経過したことを踏まえ、中東パレスチナ研究班のメンバーが各自の専門に即してオスロ合意やその周辺についてこれまでの研究動向と今後の研究課題について整理し、問題提起した論文を編んだものである。今後、これをより本格的な論集――必ずしもオスロ合意に限定しない――に発展させていくことを当初から予定しており、本合評会はそれに向けて課題をあぶりだすことも目的とした。

評者には立山良司防衛大学名誉教授と臼杵陽日本女子大学教授をお招きした。両者とも本論集が若手研究者のみによって編まれていることを評価しつつ、各論に対する疑問や批判を中心に問題提起をされた。両者とも指摘された論集全体に関わる問題としては、本論集でオスロが何を指すのかについて執筆者間で合意があったのかという点が挙げられた。当時はあまり注目されていなかった裏話のようなもの――例えば、ラビンが初めからパレスチナ国家の樹立は意図していなかったことなど――も含めるとなると、何を論じるのかも当然異なってくる。編者としても、基本的には執筆者に一任していたため、この点は改めて整理する必要があるだろう。そのことに象徴されるように、特に臼杵氏から、各論をまとめ上げる共通の枠組みが見えにくかったことも、議論が多角的であったことと表裏一体の問題として指摘された。当日はほかに、奈良本英佑法政大学名誉教授からも、多少の時間を取ってコメントをいただいた。オスロ合意が結ばれる以前からアメリカの当地への関与は始まり、オスロ合意以降さらにそれが促進されたわけだが、アメリカの役割についての章もあれば全体としてのまとまりがさらに高まったのではないかとの指摘があった。

基本的には論集に目を通したうえでの参加が想定される会だったにもかかわらず、いつもの研究例会以上に参加者に恵まれ、関心の高さがうかがえた。編者の端くれとしては、改めて仕切りなおして、パレスチナ/イスラエルが構造的に抱える諸問題により接近する論集を近年中に仕上げたいとの思いを新たにした。
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