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第36回中央ユーラシア研究会報告
濱本真実(日本学術振興会特別研究員RPD)

 概要

  • 日時:2014年8月28日(木)15時-17時
  • 会場:(財)東洋文庫2階講演室
  • 報告者:Diliara USMANOVA氏(カザン連邦大学/北海道大学スラブ研究センター)
  • 題目:Российские мусульмане и пропаганда в условиях первой мировой войны (1914 - 1916)[ロシア語・通訳なし]

 報告

ウスマノヴァ氏による報告は、第一次世界大戦時ロシアの、沿ヴォルガ・ウラル地方のムスリムと、ロシア国外で活動したロシア・ムスリムの動向を、政府によるプロパガンダという視点から考察するものだった。ウスマノヴァ氏は、オスマン帝国の敵国となったロシアの政府が危惧していた、ロシア・ムスリムのロシアに対する忠誠のゆらぎが、沿ヴォルガ・ウラル地方のムスリム社会では、少なくとも表立っては観察されていなかったことを明らかにした。また、ロシア政府は、ロシア国内のムスリムによる出版物の検閲等、ネガティヴなプロパガンダを強めたが、国内のムスリムに対して愛国心の発揚を促すポジティヴなプロパガンダはしなかったという。

ウスマノヴァ氏によれば、ロシア政府が恐れていた汎イスラーム主義や汎トルコ主義がはっきりと姿を現すのは、ロシア国内のムスリムについてではなく、ロシア国外に移住したロシア・ムスリムの活動に関してである。報告では、ユースフ・アクチュラと、アブドゥルレシト・イブラヒムの戦時中の活動が検討された。また、ドイツの捕虜収容所で行われた、ロシア・ムスリムの捕虜に対するドイツのプロパガンダの失敗についても解説がなされた。

報告は、動画や写真を交えてわかりやすく構成され、非常に興味深いものだった。報告者がすぐれた研究者であるだけでなく、すぐれた教育者でもあろうことが伺えた。夏休み期間中だったこともあり、残念ながら参加人数は少なかったものの、報告後は活発な討議が行われた。
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