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2014年度第2回パレスチナ研究班定例研究会報告
鈴木隆洋(同志社大学大学院)

 概要

  • 日時:2014年6月3日(火)16:00〜19:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 東洋文化研究所 3階大会議室
  • 主催
    • NIHUプログラム・イスラーム地域研究東京大学拠点
    • 科研費基盤研究(A)「アラブ革命と中東政治の構造変容に関する基礎的研究」
    • DAYS JAPAN(月刊誌)
    • キファーさんとともに難民問題を考える会
  • 講師:キファー・アフィフィ
  • 題目:「紛争の記憶とオーラルヒストリー〜キファー・アフィフィによるパレスチナ抵抗運動の語り〜」
  • 司会:錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授)

 報告

本研究会は元パレスチナ・ゲリラであったキファー・アフィフィ氏の経験を聞き、紛争下の個人の経験をいかにオーラルヒストリーの観点から受けとめるべきかを考察するものであったといえる。また本研究会は、質疑応答を通して、今後のパレスチナ問題への取り組み方に対する考察を深める機会としても機能したといえよう。

幼くして家族をイスラエルとその同盟勢力の手により奪われた彼女は、ゲリラに加わり、そして捕虜となって初めて歴史的パレスチナの地を踏んだ訳であるが、その際に嬉しさの余り歓喜の声を上げ続けたという。この体験談は、パレスチナ難民として内戦下レバノンに生きるということがいかに人間を疎外し、その尊厳を奪うものであったのか、また自らの力でパレスチナに帰るという選択がいかに彼女の阻害からの脱却と自尊心の回復につながるものであったのかということを端的に示しているといえよう。同時に獄中での体験、特に強姦の脅しを含む拷問、すなわち拷問との自らや仲間の闘いは、過酷な条件下で人が尊厳を保つことの難しさ、そしてそれでも折れることの無い、アイデンティティと個人史に由来する力の強さを参加者に強く印象づけた。また獄中経験の話は、抑圧は抑圧者自身の人間性をもまた壊すものであるというフランツ・ファノンの言葉を同時に想起させるものでもあった。

発表後は、武装か非武装か、あるいは闘争の持つイスラエル人への心理的作用をいかに考えるのか等を巡り、質疑応答が活発に交わされた。
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