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International Conference: Turko-Mongol Rulers, City and City-Life in Iran and the Neighboring Countries
森本一夫(東京大学東洋文化研究所)

 概要

  • 日時:2009年9月12日(金) 〜9月13日(日)
  • 会場:東京、東京大学東洋文化研究所大会議室

 プログラム

I. PROGRAM

September 12

09:30-10:00 Registration

10:00-10:30 Welcome, presentation, keynote address

10:30-12:30: Panel 1: Early Turkish Dynasties (with a 20 mn break after the first paper)
  • Chair: M. Haneda (Tokyo)
  • P. Golden (Rutgers): ‘Proto-Urban and Urban Developments among the Pre-Chinggisid Turkic Peoples’
  • M. Inaba (Kyoto): ‘Sedentary Rulers on the Move: Travels of the Early Ghaznavid Rulers and their Capital’
  • Y. Karev (Halle): ‘The Royal Court of the Western Qarakhanids in the Capital City of Samarqand’
12:30-14:00 Lunch break

14:00-15:10: Panel 2: The Saljuqs
  • Chair: K. Shimizu (Kyushu)
  • D. Durand-Gue'dy (Tokyo): ‘The Tents of the Saljuqs’
  • A. Peacock (Ankara): ‘Courts and Cities in Saljuq Anatolia’
15:10-15:40 Coffee break

15:40-17:25: Panel 3: The Mongols and the Mamlu-ks
  • Chair: D. Matsui (Hirosaki)M. Biran (Jerusalem): ‘Rulers and City’s Life in Mongol Central Asia (1220-1370)’
  • T. Masuya (Tokyo): ‘Capitals and Seasonal Palaces: Cities under the Great Khans and the Ilkhans’
  • K. Franz (Halle): ‘The Castle and the Country: Turkish Urban-Centred Rule from the Ayyu-bids to the Mamlu-ks’
18:30 Reception (Restaurant in Hongo area)

September 13

09:45-10:55: Panel 4: The Timurids and Turkomans
  • Chair: H. Mashita (Kobe)
  • Ch. Melville (Cambridge): ‘The Itineraries of Shahrukh b. Timur
  • (1405-1447)’
  • M. Subtelny (Toronto): ‘Between City and Steppe: Gardens as Loci of
  • Political Rule under the Timurids’
11:25-12:35: Panel 4 (part 2)
  • Chair: Y. Goto (Kwansei Gakuin)
  • Cl.-P. Haase (Berlin): ‘Dynastic Mausolea of the Timurids and their Ornaments: Propaganda and Memorial’
  • J. Paul (Halle): ‘A Landscape of Fortresses: Eastern Anatolia in Astara-ba-di-’s Bazm wa Razm’
12:35-14:00 Lunch break

14:00-15:10: Panel 6: Later Dynasties
  • Chair: H. Komatsu (Tokyo)
  • N. Kondo (Tokyo): ‘The Last Qizilbash? The Early Qajar Rulers and their Capital Tehran’
  • J. Noda (Tokyo): ‘Turkistan as the Capital of the “Kazakh Khanate” in the 16-19 Centuries’
15:10-15:40 Coffee break

15:40-16:50: Concluding Panel
  • Chair: K. Morimoto (Tokyo)
  • General response: M. Hamada (Kyoto)
  • General discussion
  • Concluding address (D. Durand-Gue'dy)

 報告

まず、イラン高原進出以前から19世紀にいたるまでの数多くの王朝に属すテュルク・モンゴル系君主の事例が一度に報告され討議されたこと自体が画期的なことであった。そうした豊富な事例にもとづきながら議論を展開することができたことにより、イラン高原や中央アジアの前近代に関する従来の歴史研究において前提とされることが少なくなかった遊牧民出身の支配者と定住民の被支配者というカテゴライゼーションに関し、単に概念的にではなく、個々の事実にひきつけながら具体的に批判的考察を行うことができたことは重要であった。嫌悪と憧憬の入り交じった都市生活への複雑な態度;庭園文化;季節移動;こうした事象を簡単に遊牧的心性と結びつけるのではなく、西アジアにおける歴史的・文化的脈絡の中で、あるいは他地域における「移動する宮廷」という現象との比較のもとで考えていくという、新たな方向性が示された。 もちろん、本セミナーの内容は英文の論集として刊行される予定である。

前近代を対象とする中央ユーラシア史、イスラーム史(イラン史を含むものとしての)において、日本は多くの蓄積をもっている。しかし、研究成果のほとんどが日本語で刊行されていることがその発展を阻害している。一つには外国の研究者に日本でなされている仕事がほとんど知られることがないということがある。この点に関し、本セミナーは、日本で盛んな研究分野で大型プロジェクトを行っているドイツの研究者に日本での研究の内容を知ってもらうよい機会になった。先方のプロジェクトが行う会議などに日本から研究者が招かれるような流れになるのではないかと期待している。日本語でばかり研究成果を刊行することのもう一つの弊害は、閉ざされた環境の中、日本でしか通じないような研究が行われるようになることである。この点、一昔前まではドイツ語での発表が当たり前だったドイツの研究者でさえ英語にシフトしてきている様子を見ることができたことは、大学院生を中心とした一般の参加者にとっては意義深い経験となったのではないか(そうなっていて欲しい)。

本セミナーは、学術振興会外国人特別研究員(欧米短期)David Durand-Guedyがプログラム作成の責任者となり、発表者の選定などにおいて中心的な役割を果たした。また、日本側代表者の森本も1970年生まれであり、まだ「若手」と言えるかもしれない。会議には多数の一般聴講者が参加したが、その中心を占めていたのは大学院生らの若手であった。彼らは質疑の時間においては残念ながらおしなべて寡黙であったが、コーヒー・ブレイクやレセプションなど、非公式な形で発表者などの世界の一線の研究者と交流する機会を設けた結果、そうした場においては色々と議論を行っている様子が見受けられた。会議終了後、幾人かの「若手研究者」から、今後は英語できちんと研究発表や交流ができるようにしていかなければならないことを痛感したという感想を聞くことができた。
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