NIHU Program: Islamic Area Studies, IAS Center at the Univesity ofTokyo(TIAS)
GROUP 2
STRUCTURAUL CHANGE IN MIDDLE EAST POLITICS
東京大学拠点イスラーム地域研究 グループ2
中東政治の構造変容
東京セッション
NIHUイスラーム地域
研究プロジェクト
国際シンポジウム
ナカバから60年―
パレスチナ
と
東アジアの記憶と歴史
(専用のホームページ)
National Institute for Humanities (NIHU) Program
Islamic Area Studies Symposium
"Nakba after Sixty years:
Memories and Histories
in
Palestine
and
East Asia"
東京セッション
「ナクバ再訪―記憶と歴史の断絶を超えて」
日時 2008年12月12日(金)
場所 東京大学東洋文化研究所会議室
使用言語 英語
東京セッションにおいては「ナクバ再訪―記憶と歴史の断絶を超えて」と主要テーマとして議論され
た。ナクバの悲劇はこれまでパレスチナの人々の記憶に刻まれて歴史として記録されてきたはずだった
。しかし、生々しい暴力と追放の歴史は実際にはパレスチナ/イスラエルの歴史の公式の記憶からは長い
間、忘却されて隠蔽されてきたといっていい。さらに踏み込んで言えば、シオニストの「イスラエル建
国神話」の前にパレスチナ人の語りは沈黙を余儀なくされてきたともいえる。さらに、パレスチナ人の
難民たちの語りはナショナリストの大きな語りに飲み込まれたり、ナショナリズムを正当化するために
利用されたりもしてきた。現在、パレスチナの人々の記憶の掘り起こしがオーラル・ヒストリーなどの
手法を利用しながら始まっており、かつての記憶から新たに紡ぎだされた語りから新たな歴史像を再構
築していく地道な作業につながっている。1948年のナクバにおいてシオニストによって破壊されたパレ
スチナ人の村落を記録するプロジェクトやナクバにおける「民族浄化」の実態を明らかにする作業も多
く平行して進んでいる。パレスチナ研究において真摯なナクバ研究はようやく開始されたばかりであり、
ナクバを改めて取り上げて、その意義はどこにあるのかを議論することは現在のパレスチナの困難な状
況にかんがみた場合急務であると考える。
東京セッションではシオニストによる「イスラエル建国神話」の語りをパレスチナ人の語りと対比す
ることも視野に入れて、パレスチナ人研究者によるナクバの新たな研究に光を当てた。これまでシオニ
ストあるいはイスラエルによるパレスチナ人への対応に関して多くの著書・論文を発表してきたヌール
・マサールハ(サーレイ大学セント・メアリー校)が「ナクバから60年―歴史的真実、集団的記憶、そ
して倫理的責務」と題する基調講演を行った。また逆に、シオニストやイスラエルがナクバをどのよう
に見て、描いてきたのかも検討する。これまで社会主義シオニストの対アラブ政策や修正主義シオニズ
ムに関して研究してきた森まり子氏が「シオニズムとナクバ」と題して討論を行った。さらに、歴史の
新たな民族的アイデンティティを模索する中央アジアの事例を取り上げ、旧ソ連時代の記憶と歴史を再
構成する試みをも考察していくことにする。ティムール・ダダバエフ(筑波大学)は「ソ連後の中央ア
ジアにおけるトラウマ、公共的記憶、そしてアイデンティティ」と題して中央アジアの事例から問題提
起を行った。
文責:東京セッション代表 臼杵 陽