28  韓国朝鮮文化研究専攻
URL:http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~korea/index.html

1.研究室活動の概要
 本研究室は2002年4月1日、人文社会系研究科附属文化交流研究施設朝鮮文化部門を母体に開設された。大学院だけの独立専攻で、学部学生は所属していない。大学院レベルにおいては、日本では初めて開設された韓国朝鮮文化に関する総合的な教育・研究組織である。

(1) 研究分野の概要
 韓国朝鮮を研究対象とする歴史学2名(2006年度までは3名)、考古学1名、社会学1名、文化人類学1名、言語学1名、哲学1名の、合計7名の教員で構成され、外国人客員教授1名が在籍している。多様な方法論によって韓国朝鮮文化の解明に取り組み、総合的な韓国朝鮮文化研究を目指している。各教員は、文献資料の分析と現地での実地調査や資料収集の双方を重視しながら研究・教育を行っている。

 (2) 学生教育
 2002年度に修士課程(定員12名)で開設され、2004年度から博士課程(定員6名)が増設された。専攻内は韓国朝鮮歴史社会コース、韓国朝鮮言語思想コース、北東アジア文化交流コースに分かれている(但し、2008年度より2コース・2専門分野に改組した)。学生は3コースのいずれかに所属するが、専攻全体が有機的な関連をもって運営されており、総合的な韓国朝鮮文化の教育が行われている。学生には研究言語としての韓国朝鮮語に関する十分な運用能力が求められ、実力が不十分な学生に対しては支援プログラムを準備している。  各教員は学部教育にも関与し、専攻研究分野と関係の深い、東洋史学、西洋史学、考古学、社会学、言語学、中国思想文化学など、各専修課程の講義・演習を担当している。

(3) その他の活動
 1. コリア・コロキュアム
 国内海外の韓国朝鮮に関する専門家による講演会で、毎月1回開催している。一般市民にも開放し、公開で行なっている。
 2. 研究室紀要の発行
 『朝鮮文化研究』の後続誌『韓国朝鮮文化研究』10号(2007年3月)を刊行した。

2.構成員・専門分野
(1) 教員
 韓国朝鮮歴史社会コース
  教授  吉田光男  韓国朝鮮近世社会史
  教授  服部民夫  開発の経済社会学
  准教授 早乙女雅博 東アジア考古学・古代日韓交流史
  准教授 六反田豊  韓国朝鮮中世近世史
 韓国朝鮮言語思想コース
  教授  川原秀城  東アジア思想史・中国朝鮮科学史
  准教授 福井玲   東アジア思想史・中国朝鮮科学史
  客員教授李賢熙   韓国語学(2006年度)
  客員教授權寧珉   韓国近現代文学(2007年度)
 北東アジア文化交流コース
  教授  村井章介  中世日韓関係史(2006年度まで)
  准教授 本田洋   社会人類学・韓国朝鮮文化研究

(2) 助教
  崔 蘭英
   在職期間 2004年10月1日~2008年9月30日
   研究領域 韓国近代史
   主要業績 「近代朝鮮の外交政策の一側面 -「朝貢関係」と「条約関係」(『朝鮮学報』第184輯
        「中国朝鮮水陸貿易章程と朝鮮側の思惑」(朝鮮史研究会2003年12月例会、於専修大学)
        「政府機構の改編から見た「近代」像」(朝鮮史研究会2002年3月例会、於専修大学)
        「近代朝鮮における二重外交体制の成立 -「朝貢関係」と「条約関係」(朝鮮学会第52回大会、2001年10月、於天理大学)

(3) 受け入れた外国人研究員
  申東河(韓国、同徳女子大学教授)
   研究期間  2006年9月1日~2007年8月31日
   研究題目  日本の本地垂迹思想の検討―韓日比較史的観点から―
  裵錫満(研究者)
   研究期間  2006年9月1日~2007年8月31日
   研究題目  1960年~1970年代における韓国造船産業の発展―日本造船産業との関係を中心に―
  金瑚然(韓国、檀国大学校東洋学研究所研究専任講師)
   研究期間  2006年10月1日~2007年3月31日
   研究題目  韓国における近代大衆公演芸術の受容と変容―日本との影響関係を中心に―
  金炫栄(韓国、国史編纂委員会教育研究員)
   研究期間  2007年7月23日~2007年9月30日
   研究題目  近代日本における朝鮮学(史)研究の形成過程に関する研究
  金龍善(韓国、幹林大学校人文大学教授)
   研究期間  2007年8月20日~2008年2月19日
   研究題目  日本にある韓国の銘文の資料に調査と研究

  (4)国際交流の状況
   UTフォーラム、大学間学術交流協定締結など韓国の大学・研究機関との学術交流に本研究室の教員や学生が関与した。


3.論文等題目
(1) 修士論文題目
  2006年度 
   韓国朝鮮歴史社会コース
    辻大和「朝鮮政府の薬用人蔘政策の基礎研究」
    <指導教員>吉田光男
    宋詠好「高麗武臣政権の『奴』の反乱について」
    <指導教員>六反田豊
    朱洪奎「安鶴宮址出土軒瓦の年代比定 ―東京大学所蔵瓦の考古学的分析により―」
    <指導教員>早乙女雅博
   韓国朝鮮言語思想コース
    呉春姫「朝鮮語延吉方言の終結語尾について ―六鎮方言話者を中心として―」
    <指導教員>福井玲
    呉秀賢「現代韓国社会における呼びかけ表現の考察 ―職場での呼びかけ表現を中心に―」
    <指導教員>福井玲
    金美永「日本語母語話者による韓国語音節末子音の発音について」
    <指導教員>福井玲
  2007年度
   韓国朝鮮歴史社会コース
    田端尚徳「朝鮮王朝後期正祖年間における還上運営の問題と是正策 ―地方官の処分事例の分析をもとに― 」
    <指導教員>吉田光男
    小林洋「高麗後期東北辺境の統治とその性格 ―雙城総管府を中心に― 」
    <指導教員>六反田豊
    鈴木開「燕行使の行動にみる十七世紀初頭・朝鮮王朝の対中国外交 ―李延龜の二度弁誣陳奏活動を中心に― 」
    <指導教員>吉田光男
    中野耕太「十三世紀高麗の崔氏政権崩壊に関する一考察 ―その権力継承を手がかりに―」
    <指導教員>六反田豊
    原幸子「韓国財閥における人的資源の移動と蓄積 ―現代グループの拡大と人材調達―」
    <指導教員>服部民夫
   韓国朝鮮言語思想コース
    高木丈也「日本語と朝鮮語の中途終了発話文―韓国語大邱方言における名詞のアクセントについて―」
    <指導教員>福井玲
   北東アジア文化交流コース
    蔡百恩「名前とアイデンティティ―植民地朝鮮の『創氏改名』と台湾の『改姓名運動』との比較から―」
    <指導教員>本田洋
    丁ユリ「韓国の墓葬文化に関する研究―都市住民の葬法にみられる近年の変化を中心に―」
    <指導教員>本田洋
    小宮秀陵「新羅の遣唐使と平盧軍節度使 ―八世紀後半以降を中心にして―」
    <指導教員>本田洋




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