22 スラヴ語スラヴ文学
1.研究室活動の概要
東京大学文学部にロシア語ロシア文学講座が設けられたのは1972年(昭和47年),東京大学が創設されてのち約100年後のことである。まだ比較的若い専修課程であるが,それまで東京外国語大学,早稲田大学など限られた大学でしか行われていなかったロシア研究に新風を吹き込んだ。大学院の修士課程・博士課程は1974年度に設置されたが,すでに32名の課程博士を世に送り出している。1994年度から学部はスラヴ語スラヴ文学専修課程に,また1995年度の大学院の部局化にともない,大学院も欧米系文化研究専攻スラヴ語スラヴ語圏言語文化専門分野に改称された。主にロシアの言語、文学、文化に関する研究・教育を発展させることを課題とし,また現在はロシア以外のスラヴ語圏言語文化の研究、紹介にも積極的に取り組んでいる。
現在の教員数は教授2,助教1である。その他、他専門分野教員、総合文化研究科教員と非常勤講師の協力も得て,現代ロシア語学,ロシア語史,18世紀以降のロシア文学(詩,小説,演劇,批評),ロシア思想,日露交渉史等の諸分野,ロシアのほかポーランド,チェコ,ブルガリア,クロアチア等の諸地域に関する研究・教育が行われている。今後,時代,分野,地域についてはいっそう拡充して行くつもりである。
現在,学部学生3名,大学院修士課程院生3名,博士課程院生12名,大学院研究生1名、学部研究生1名が在籍しており,うち1名がロシアに留学中である。その他、外国人研究員1名を受け入れている。
研究室では研究年報『SLAVISTIKA』を発行しており,2007年度には第23号が刊行された。これは教員,大学院生および学部学生の日頃の研究勉学成果を発表する場であるが,社会の様々な分野で活動する卒業生と研究室を結ぶ場としての役割も果たしている。研究室では大学院生が中心となってほぼ毎月19世紀ロシア文化研究会が開かれ、互いの研究や文献についての情報交換が行われるが、最近は大学の他の研究室や他大学からの参加者もあり、何時間も熱い議論が繰り広げられている。
東京大学スラヴ研究室は毎年多くの若い専門家たちを国内外の学会、研究会活動に参加させており、日本のロシア学、スラヴ学の一翼を担ってきた。それらの活動の運営に関しても積極的な役割を果たしているといえるだろう。また現在,東京大学はポーランドのワルシャワ大学,ロシアのモスクワ大学,国立ロシア人文大学と交流協定を結んでいるが,本研究室はそうした諸大学との交流事業においても中心的な役割を担っている。いずれにしても、特にここ数年、大学と研究室の枠を超えて国内外の他の研究機関と協力し、広く社会と交流する中で研究成果の意味を問い直そうとする姿勢が強まってきているのが感じられる。
2.構成員・専門分野
専任教員
長谷見一雄 ロシア・ポーランド文学
金沢美知子 ロシア文学・ロシア文化
沼野充義 ロシア・ポーランド文学
助教
清水道子
在職期間 1993年6月~現在
研究領域 ロシア文学
主要業績 「チェーホフの短編小説における創作方法 -語り・視点・プロット-」,博士論文,1992年10月
「テクスト・語り・プロット -チェーホフの短編小説の詩学-」,ひつじ書房,1994年10月
外国人研究員
タチヤーナ・N・スニトコ
現 職 ロストフ・ナ・ドヌー経済大学教授
研究題目 Attitude toward the world in Japanese and Russian culture
研究期間 2006年10月1日~2007年9月30日(国際交流基金フェローシップ)
教育活動 2007年大学院・学部共通授業「文学テキストの解釈(1)」(夏学期・無給)
2007年大学院・学部共通授業「ロシア語会話」(夏学期・サービス授業)
3.卒業論文等題目
(1) 卒業論文題目
2006年度
ゴンチャロフ初期作品における語り――『ハッピーエラー』のテクスト分析
『1831年6月11日に』に見るレールモントフのポエジア
解体の文学史――チェーホフ・ハルムス・ヴヴェジェンスキイ
2007年度
ロシア文学における両義的な狂気
(2) 修士論文題目
2006年度
漆間顕正 「В.Ф.オドーエフスキーにおける錬金術的表象について」
<指導教員>金沢美知子
成清圭祐 「ミハイル・ゾーシチェンコ研究――『取り戻された青春』・『空色の本』を中心に」
<指導教員>沼野充義
亀田真澄 「20世紀演劇に見る現前性の問題――ヴヴェジェンスキー『イワーノフ家のクリスマス』の一解釈」
<指導教員>沼野充義
小松佑子 「P.I.チャイコフスキーのオペラ『エフゲーニイ・オネーギン』の制作過程について――タチヤーナの形象と手紙を中心に」
<指導教員>沼野充義
竹内まり子 「トルストイの初期作品における自然観について」
<指導教員>金沢美知子
2007年度
古宮路子 「オレーシャと1920年代末-1930年代初頭の文学――題材・描出・構成」
<指導教員>沼野充義
(3) 博士論文題目
2006年度
大野斉子 「N.V.ゴーゴリの異本論――1840年代から1910年代におけるゴーゴリ作品の受容の分析」
<主査>金澤美知子<副査>長谷見一雄・沼野充義・浦雅春・坂内徳明
小椋 彩 「「書く人」の肖像――アレクセイ・レーミゾフの文字の王国」
<主査>長谷見一雄<副査>金澤美知子・沼野充義・西中村浩・望月哲男
小林銀河 「ドストエフスキーにおける«личность»と«индивидуальность»の用法」
<主査>金澤美知子<副査>長谷見一雄・沼野充義・安藤厚・井桁貞義
中澤佳陽子 「フセヴォロド・イワーノフの『クレムリン』と『ウ』――「新しい人間」についての2つの小説」
<主査>長谷見一雄<副査>金澤美知子・沼野充義・安岡治子・中村唯史
2007年度
古賀義顕 「現代ロシア語学のための基礎的記述法の研究」
<主査>長谷見一雄<副査>金沢美知子・沼野充義・佐藤純一・服部文昭
菱川邦俊 「現代ブルガリア語動詞における文法カテゴリーの研究――「相」の文法カテゴリーを中心として」
<主査>長谷見一雄<副査>金沢美知子・沼野充義・佐藤純一・栗原成郎
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