09b 日本語日本文学(国文学)

1 研究室活動の概要
 本専修課程は、明治20年(1887)和文学科として発足したが、大正8年(1919)に国文学科と改称、昭和38年(1963)に国語国文学専修課程となり、昭和50年(1975)には国語学と国文学に専修課程を分かった。平成6年(1994)、再び日本語日本文学専修課程となり、今日に至っている。ただし、実際の教育研究活動は、国語学とは独立しておこなっている。長い歴史のなかで学界に多大の貢献を成し遂げ、広い分野を活動範囲にしつつ、数多くの人材を送り出している。現在の教員数は教授4名・准教授1名・助教1名であるが、学外から毎年非常勤講師を招聘して開講科目の充実に努めている。
 教養学部からの進学は、年度によって変化はあるがおおよそ15~30名の範囲におさまるのが通例である。専攻は様々な時代・ジャンルにわたっており、それぞれの関心に従って学習・研究を行っているが、同時に個別の時代やジャンルにとらわれない、広い展望を持つことを心がけるよう指導している。
 日常の研究教育活動のほかに、国文学科時代以来の卒業生を中心に組織されている東京大学国語国文学会があり、毎年、評議員会と大会の開催、会報の発行、月刊研究誌「国語と国文学」の編集などの事業を国語研究室と共同で行なっている。また研究室の研究誌「東京大学国文学論集」を毎年刊行し、その内容はUTリポジトリで公開している。
 現在、国文学研究室には、大学院学生58名(内、外国人留学生10名)・学部学生41名が在籍し、その他、学部研究生1名、大学院研究生9名(すべて外国人留学生)が在籍している。また多くの外国人研究員を受け入れるなど、国際交流に協力している。

2 構成員・専門分野
専任教員
     2006~2007年度在職
      多田一臣 教授  日本古代文学
      長島弘明 教授  日本近世文学
      藤原克巳 教授  平安朝文学
      渡部泰明 教授  日本中世文学・和歌文学  *職位は2006年度は助教授
      安藤 宏 准教授 日本近代文学

     2006年度のみ在職(2007年3月で定年退職)
      小島孝之 教授 日本中世文学

    助手・助教・外国人教師等の活動
     (1) 助手・助教
       吉野 朋美
  在職期間  2005年4月~2007年3月(中央大学文学部専任講師に転任)
      研究領域  日本中世文学、和歌文学
      主要業績
             『堀河院百首和歌』(明治書院、2002年10月、共著)
             『俊頼述懐百首全釈』(風間書房、2003年10月、共著)
             「後鳥羽院の実朝懐柔と和歌 ─建保三年『院四十五番歌合』について─」(『古代中世文学論考』第12集、新典社、2004年5月)
             「表象としての『尼』 ─勅撰和歌集入集歌を中心に─」(『日本文学 女性へのまなざし』風間書房、2004年9月)
             「『遠島百首』の方法と意味 ─改訂されなかった歌を通して─」(『文学 隔月刊』2004年11・12月号)
             「虚実のあわい ─実朝の梅花詠から『吾妻鏡』の叙述方法へ─」(『明月記研究』9号、2005年1月)
             「後鳥羽院の和歌活動初期と寂蓮」(『中世文学』50号、2005年6月)

      学外活動  白百合女子大学非常勤講師(2005年度)

     大屋多詠子
  在職期間  2007年4月~2008年3月(青山学院大学文学部准教授に転出)
      研究領域  日本近世文学
      主要業績
             「馬琴の演劇観と勧善懲悪―巷談物を中心に―」(『日本文学』51巻12号、2003年12月)
             「馬琴読本の演劇化―文化期の上方演劇作品における―」(『読本研究新集』5集、2004年11月)
             「京伝・馬琴による読本演劇化作品の再利用」(『国語と国文学』83巻5号、2006年5月)
             「勧善懲悪 ―馬琴読本と演劇を中心に―」(『江戸文学』34号、2006年5月)
             「馬琴の「人情」と演劇の愁嘆場」(『東京大学国文学論集』2号、2007年5月)
             「読本作者佐藤魚丸」(『国語と国文学』84巻12号、2007年12月)

      学外活動  明海大学非常勤講師(2007年度)

     (2) 内地研究員等
      公立大学研修員
       山口俊雄 (受入教員:安藤宏) 現職   愛知県立大学文学部准教授
                 研究題目 石川淳の戦後作品に関わる同時代資料の調査
                 研究期間 2006年7月~2007年10月
       佐藤明浩 (受入教員:渡部泰明) 現職  都留文科大学教授
                 研究題目 本歌取りに関する研究
                 研究期間 2007年4月~2008年3月
      国立高等専門学校研修員
       空井伸一 (受入教員:長島弘明) 現職   宮城高等専門学校准教授
                 研究題目 日本文学の研究(近世小説を中心に)
                 研究期間 2007年4月~2007年9月
      私学研修員
       林 廣親 (受入教員:長島弘明) 現職   成蹊大学文学部教授
                 研究題目 近代日本演劇の研究
                 研究期間 2006年4月~2007年3月
       平澤竜介 (受入教員:藤原克巳) 現職 白百合女子大学教授
                 研究題目 平安朝和歌文学の研究
                 研究期間 2007年4月~2008年3月
      外国人研究員(フランス政府給費)
       ニコラ・モラル(世話教員:安藤宏)現職   日仏会館特別研究員
                 研究題目 19世紀日本文学における序文の研究
                 研究期間 2007年9月~2009年8月(予定) 
      国際交流基金外国人特別研究員
       秦  剛 (受入教員:安藤宏) 現職  北京日本学研究センター助教授
                 研究題目 近代アジアにおける〈自己表象〉文学の発生と変容に関する研究
                 研究期間 2005年7月~2007年4月
       金 任仲(受入教員:渡部泰明) 現職  明治大学非常勤講師
                 研究題目 中世文学に見られる異国人に関する研究-明恵と元暁・義湘を中心として-
                 研究期間 2005年9月~2007年8月
       アグニエシカ・梅田(受入教員:長島弘明) 現職   ワルシャワ大学准教授
                 研究題目 俳諧における付け合いの研究
                 研究期間 2006年10月~2007年9月
      日本学術振興会特別研究員
       松本和也(受入教員:安藤宏)  資格 PD
                 研究題目 太宰治の翻案小説と西欧文芸・思潮の交錯―戦時期の方法・ジャンル・小説表現
                 研究期間 2006年4月~2007年9月


3 博士学位論文審査
 (1)(甲) 課程博士(文学)
  2005年度(続き)
       李 宇玲   論文題目「平安朝漢文学研究―宮廷文化と漢詩―」
       <主査>藤原克巳<副査>小島孝之・多田一臣・渡部泰明・月本雅幸
       韓 京子   論文題目「近松時代浄瑠璃の研究」
       <主査>長島弘明<副査>多田一臣・藤原克巳・渡部泰明・安藤宏
 2006年度
       趙 力偉  論文題目「中世和歌の表現と理念―藤原俊成の和歌と歌論を中心に―」
       <主査>渡部泰明<副査>多田一臣・長島弘明・藤原克巳・肥爪周二
       兼岡理恵   論文題目「風土記受容史研究」
       <主査>多田一臣<副査>長島弘明・藤原克巳・渡部泰明・佐藤信
 2007年度
       中嶋真也   論文題目「『万葉集』表現と享受の研究」
       <主査>多田一臣<副査>藤原克巳・渡部泰明・安藤宏・月本雅幸
       水谷隆之   論文題目「北条団水の研究」
       <主査>長島弘明<副査>多田一臣・渡部泰明・安藤宏・鈴木泰
       黄 智暉   論文題目「馬琴小説と史論」
       <主査>長島弘明<副査>藤原克巳・渡部泰明・安藤宏・井島正博
       佐藤かつら 論文題目「幕末・明治の江戸歌舞伎の研究―小芝居の観点から」
       <主査>長島弘明<副査>多田一臣・渡部泰明・安藤宏・古井戸秀夫
       吉丸雄哉  論文題目「式亭三馬研究」
       <主査>長島弘明<副査>多田一臣・安藤宏・肥爪周二・尾上圭介

 (2) (乙)論文博士(文学)
 2005年度(続き)
       近藤みゆき  論文題目「古代後期和歌文学の研究」
       <主査>渡部泰明<副査>多田一臣・藤原克巳・西沢美仁・村尾誠一
       中村 文   論文題目「後白河院時代歌人伝の研究」
       <主査>小島孝之<副査>藤原克巳・渡部泰明・五味文彦・石川泰水
 2007年度
       高橋 亨  論文題目「源氏物語の詩学」
       <主査>藤原克巳<副査>多田一臣・長島弘明・原岡文子・高田祐彦
       堀川貴司 論文題目「中世日本漢文学研究」
       <主査>渡部泰明<副査>長島弘明・藤原克巳・末木文美士・小島孝之
       小川靖彦  論文題目「萬葉学史の研究」
       <主査>多田一臣<副査>藤原克巳・渡部泰明・佐藤信・沖森卓也
       鉄野昌弘 論文題目「大伴家持「歌日誌」論考」
       <主査>多田一臣<副査>藤原克巳・渡部泰明・大津透・森朝男


    (3) 修士学位論文題目
  2006年度 13編 (*は国語学)
       青島 麻子 源氏物語における婚姻研究
       <指導教員>藤原克巳
       栗本 賀世子 平安朝物語と後宮殿舎―宇津保物語を中心に―
       <指導教員>藤原克巳
       近藤 匡  芥川龍之介研究―「芸術」と「小説」の位相―
       <指導教員>安藤宏
       坂本 正博 題詠生成史の研究―古代和歌から中世和歌へ―
       <指導教員>渡部泰明
       田畑 千博 古事記研究―皇子の物語を中心に―
       <指導教員>多田一臣
       西出 喜代彦 吉行淳之介論 ―『驟雨』を中心として―
       <指導教員>安藤宏
       野本 瑠美 中世百首歌の研究 ―部立百首を中心に―
       <指導教員>渡部泰明
       萩野 了子 古代和歌研究―序詞の表現を中心に―
       <指導教員>多田一臣
       牧  藍子 其角俳諧研究 ―「情」と「洒落」―
       <指導教員>長島弘明
       尹  勝玟   『源氏物語』宇治十帖論
       <指導教員>藤原克巳
       *李  忠均     中世日本語における存在詞の補助動詞的用法
       <指導教員>鈴木泰
       *テュシェ・シモン  思考動詞を用いた文末表現
       <指導教員>井島正博
       *藤本 灯    色葉字類抄の研究―所収語彙の当時における使用状況を中心に―
       <指導教員>月本雅幸

  2007年度 10編 (*は国語学)
       梅山 聡        泉鏡花研究-初期作品を中心に
       <指導教員>安藤宏
       小谷 瑛輔    芥川龍之介論
       <指導教員>安藤宏
       金  兌映     『源氏物語』宇治十帖論-ことばの連関と物語の方法をめぐって-
       <指導教員>藤原克巳
       島田 尚子     近世俳文研究-許六と支考を中心に-
       <指導教員>長島弘明
       庄司 一郎     土佐派の源氏絵と江戸時代初期の源氏享受
       <指導教員>藤原克巳
       末元 慧子     『蜻蛉日記』の表現-歌と散文の関わりをめぐって-
       <指導教員>藤原克巳
       多田 蔵人     永井荷風研究-『つゆのあとさき』『?東綺譚』を中心に-
       <指導教員>安藤宏
       崔  泰和     春水人情本の研究-『春色梅暦』五部作の構造を中心に-
       <指導教員>長島弘明
       洪  聖牧     太陽神論
       <指導教員>多田一臣
       *平井 吾門     中古語における対格表現-宇津保物語のヲ格とゼロ格をめぐって
       <指導教員>鈴木泰

    (4) 卒業論文題目
   2006年度 22編
       磯部 峻史     泉鏡花「風流線」論
       上野 裕和     谷崎潤一郎論―その初期の作品より―
       河口 芳佳     「陰獣」について
       高橋 晋也     西行の「契り」に関する一考察
       弓削 在子     中原中也論―季節と空をめぐって―
       上野 裕子     「蛇性の婬」論
       大石 紗都子    堀辰雄と古典―恋する女性像に託された生の命題
       加治屋 真実    『とはずがたり』―父の遺言における「好色の家に名を残し」をめぐって
       執印 久美子    北杜夫研究―初期作品をめぐって
       高谷 優子     『堤中納言物語』論
       竹内 和希     小川未明初期作品における”巫女”をめぐって―「薔薇と巫女」を中心に―
       田宮 裕子     万葉集相聞歌における「人」の表現
       平野 邦輔     島崎藤村「破戒」論―当事者でない者が当事者を描くということ―
       平林 慶尚     中島敦『弟子』論
       三上 麻衣子    能楽研究『当麻』―中将姫を中心に―
       宮木 慧太     三井高英の地歌に関する研究
       向井 佑輔     夏目漱石『坊つちゃん』論―文学研究と国語教育―
       目黒 文乃     森?外『雁』論
       山川 陽子     『仮名手本忠臣蔵』考―大星由良之助と加古川本蔵を中心として―
       吉田 友美     道成寺説話群・籠り型についての一考察
       姜  多栄      『ノルウェイの森』論
       橘谷 浩史     落語における笑いについて
   2007年度 12編
       長井 勇磨     『古事記』の世界観―神名を手がかりに―
       石井 真太郎    ショートショート群の「オチ」と「寓話性」
       近藤 宇智朗    沙石集の研究―連歌説話を中心に
       藤田 早織     憶良と旅人
       朝月 雄介     古今和歌集哀傷歌の解釈と研究
       渋谷 百合絵    漱石における文学理論―初期作品との関係を中心に―
       島袋 八起     「如是我聞」論
       舘 由季子     英雄 ヤマトタケル物語
       宮川 知子     浮舟物語について
       山崎 健太     允恭記の歌謡と物語について
       ロションツィ・クララ・ルチア  「源氏物語」における空蝉物語とラファイエット夫人の「クレーヴの奥方」との比較―
       東海林 壽朗    『徒然草』の研究―第二三八段の自讃譚を中心に―





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