担当教員  藤井省三 学期:夏 月・4 赤門総合研究棟738
 本ゼミでは上海でデビューした女性作家で村上春樹チルドレンの一人でもある安宝貝(アンニー・パオペイ、Annie Baby)のチベットを舞台とする小説『蓮花』を読む。作品の読解に当たっては、各種の辞典・事典・地図・文献目録などの工具書および作品に関連する新聞・雑誌・単行本などの調査が必要とされる。このような近代中国研究の基礎的工具書に習熟することも本ゼミの目標である。
 また本ゼミでは研究書2冊についてゼミ生各自がレポートを提出し、これをめぐって討論を行う。

授業計画:
1 ガイダンス
2 『蓮花』読解
3 『蓮花』読解
4 『蓮花』読解
5 『蓮花』読解
6 中間レポート『東京外語支那語部』
7 中間レポート『東京外語支那語部』の討論
8 『蓮花』読解
9 『蓮花』読解
10 『蓮花』読解
11 『蓮花』読解
12 『蓮花』読解
13 『蓮花』読解
14 期末レポート『魯迅「故郷」の読書史』
15 期末レポート『魯迅「故郷」の読書史』の討論

4月7日開講、ガイダンス
4月14日より作品読解開始し、学会出張等のため二回休講するが、休講期間に以下の二本の研究書読書レポートを課す予定。
@『東京外語支那語部』(藤井著、朝日選書)を通読し1200字前後で書評せよ。
A『魯迅「故郷」の読書史』(藤井著、創文社。または董炳月訳、北京・新世界出版社『魯迅「故郷」閲読史』)を通読して、2000字前後で書評せよ。
 テキストのうちアニー・ベイビーの中国語原作『蓮花』は、マスター・コピーを提供するので、初回のゼミで各自複写することができる。
 通常のゼミでは、一回一人のレポーターが『蓮花』の2-3頁を担当する。レポーターは事前に作品の日本語訳および注釈のプリントを用意してゼミ当日に配布する。ゼミではレポーターが原作小説を二、三段落ずつ音読しながらプリントを参考にしつつ日本語訳する。その後、ゼミ参加者全員で音読および翻訳を検討する。検討終了後、レポーターが作中の固有名詞や作品の背景について注釈を付ける。最初の数回は四年生または大学院生がレポーターを担当する。
 学期前半に一回、ゼミOB院生による工具書ガイダンスを赤門総合研究棟6階の漢籍コーナー参考室で行う。
 ゼミ生が提出した研究書読書レポート@Aは藤井が添削して各ゼミ生に一週間以内に返却する。その際に二、三のレポートをコピーして全員に配布し、これをもとに翌週のゼミ後半に討論を行う。なお参考として研究書読書レポート例を配布する。

教科書:
@藤井省三『東京外語支那語部』朝日新聞出版、朝日選書
A藤井省三『魯迅「故郷」の読書史』創文社。または董炳月訳、北京・新世界出版社『魯迅「故郷」閲読史』

参考書:
@アニー・ベイビー『さよなら、ビビアン』(泉京鹿訳、小学館)
A衛慧、桑島道夫訳『上海ベイビー』文藝春秋、文春文庫
B衛慧、泉京鹿訳『衛慧みたいにクレイジー』講談社
C藤井省三『中国語圏文学史』東京大学出版会

 中国語初級修了以上の語学力が必要。文学部講義「中国文学史概説(近現代)」未履修の者は、『中国語圏文学史』(東京大学出版会、2011年)を通読しておくこと。

担当教員  藤井省三 学期:通年 隔木・4-5 赤門総合研究棟738
 東アジア比較文学研究の視点から、実証研究、理論研究、作家・作品研究を行う。
授業計画:
1 1927年12月20日〜
2 ゼミ生研究報告
3 1927年12月24日〜
4 ゼミ生研究報告
5 1927年12月28日、31日
6 ゼミ生研究報告
7 日記
8 ゼミ生研究報告
9 日記
10 ゼミ生研究報告
11 日記
12 ゼミ生研究報告
13 日記
14 ゼミ生研究報告
15 ゼミ生研究報告

 4限には郁達夫(ユイ・ターフー、いくたっぷ、1896〜1945)の日記を、1926年11月23日から精読する。
 テキストは丁言昭編『郁達夫日記』(山西教育出版社、1998)
 5限にはゼミ生諸君による研究発表と討論を行う。
 4限の『郁達夫日記』精読では、毎回前半に、レポーターが3日分あるいは4日分の日記を翻訳し注釈を付け、後半に全員で討論を行う。
 5限のゼミ生研究発表では、毎回前半にレポーターが研究報告を行い、後半に全員で討論を行う。レポーターは一週間前までに、参考文献等のマスターコピーを準備し、中文共同研究室でゼミ生の参考に供する。
 7月末に3日間あるいは4日間のゼミ合宿を行う。
 履修者は中文研究室の院生に限るが、その他の院生学生の傍聴を歓迎する。

教科書:
 丁言昭編『郁達夫日記』(山西教育出版社、1998)

担当教員  藤井省三 学期:冬 金・4 駒場
 シラバス未公開

担当教員 藤井省三 学期:冬 金・5 駒場
 魯迅(ルーシュン、ろじん、1881〜1936)は1902〜09年まで明治末の7年間を日本で留学生として過ごし、夏目漱石や森外らの影響を受けた。帰国後も芥川龍之介、小林多喜二ら同時代の日本文学に深い関心を寄せている。
 魯迅は辛亥革命(1911)から五・四運動(1919)以後に至る中国の変革期に際し、漱石『坊つちゃん』(1906)に共感を抱きつつ、中国国民性批判の小説「阿Q正伝」(1923)を書き上げて、国民国家形成のために自己否定すべき「阿Q」像を確立した。「阿Q」像とは次のように仮に定義できよう――通常の名前を持たず、家族から孤立し、旧来の共同体の人々の劣悪な性格を一身に集めて読者を失笑苦笑させたのち犠牲死して、旧共同体全体の倫理的欠陥を浮き彫りにし、読者を深い省察に導く人物。
 「阿Q」像は日本では太宰治の戦後作品や大江健三郎の初期から晩期の作品、そして1979年ポストモダン社会成立前夜にデビューする村上春樹に影響を与える(例えば『羊をめぐる冒険』の「鼠」や「駄目になった王国」の「Q氏」)など、戦後日本の国民的転換期に、自己否定されるべき各種人物像へと展開している。
 本講義では魯迅を軸として、このような日中両国の現代文学の流れについてお話ししたい。
 10月17日(金)教養学部駒場キャンパスで開講。
授業計画:
1 中国文学とは何か、文学史とは何か
2 1902〜09魯迅の日本留学と漱石体験
3 漱石『坊つちゃん』(1906)と魯迅「阿Q正伝」(1922)@
4 漱石『坊つちゃん』(1906)と魯迅「阿Q正伝」(1922)A
5 謎の「狂人日記」(1918):狂人のモデルからシャーロック・ホームズまで
6 中間レポート
7 芥川龍之介「毛利先生」(1919年1月)と魯迅「孔乙己」(1919年3〜4月)
8 1922年“盲詩人”エロシェンコの魯迅邸滞在と魯迅「端午の節季」「あひるの喜劇」
9 魯迅「藤野先生」と太宰治『惜別』
10 竹内好の戦中期魯迅論と戦後期太宰治批判
11 張愛玲と室伏クララ
12 1979村上春樹デビューと魯迅の影:『風の歌を聴け』と「中国行きのスロウ・ボート」
13 村上春樹における魯迅「阿Q」像:『1Q84』ほか
14 中国の村上春樹チルドレン:衛慧、安宝貝、田原、韓寒、郭敬明
15 期末レポート(1600〜2000字)
授業の方法:
 授業は基本的に前半60分間を講師による講義とし、後半30分を受講生からの質問に基づく討論とする。毎回、原則としてパワーポイントを併用する。
教科書:
藤井省三『中国語圏文学史』東京大学出版会
参考書:
魯迅『故郷/阿Q正伝』藤井省三訳、光文社古典新訳文庫
魯迅『酒楼にて/非攻』藤井省三訳、光文社古典新訳文庫
藤井省三著『魯迅――東アジアを生きる文学』岩波新書
藤井省三『村上春樹のなかの中国』朝日選書、朝日新聞社

 この頁閉じる