仏教志怪研究
担当教員  佐野誠子 学期:冬 水・2 赤門総合研究棟738
 六朝志怪を細かく見ていくと、魏晋における『列異伝』『捜神記』等の仏教の影響がまったくみられない書籍、宋代における『捜神後記』『幽明録』等の一部に仏教の影響がみられる書籍、また『宣験記』『冥祥記』等のもっぱら仏教に関する話を収める書籍がある。宋代以降にも仏教と関わりのない話ばかりを収めたと考えられる志怪書も存在するが、時代が下るにつれて、当時西方から伝わり、訳経作業が進められた仏教の影響が強くなってきたといえる。とくに仏教に関わる話を中心に収める志怪を仏教志怪と呼ぶ。仏教志怪でも、『宣験記』や『冥祥記』は、その他の志怪に近い書かれ方をしているが、それらとは少し趣を異にした書籍がある。それは、もっぱら仏教を信仰していたがために救われたという応験譚のみを集めた書籍である。これは、『観世音応験記』として日本の青蓮院に写本が残された。本授業では、この『観世音応験記』の中でもっとも分量がある、梁・陸杲の『繋観世音応験記』を中心に仏教志怪を読み、仏教志怪の特質、また中国小説史における位置づけを考えたい。初回は、仏教志怪についての講義及び関連する資料・論文の紹介を行う。それ以降は学生の発表となる。
 演習形式。原則一話につき一人の担当者を決め、『繋観世音応験記』の読解を行う。写本のテキストの検討、語句調べ、解釈、他書に収められるテキストとの比較を行ってもらう。2012年度に第15話まで読んだ。今年度はその続きとして、第16話から読みはじめる。
 テキスト:青蓮院が所蔵する『観世音応験記』のマイクロフィルムプリント (東京大学史料編纂所所蔵のマイクロフィルムからプリントしたもの。マスターコピーを中文研究室に置くので各自コピーすること)
 参考書:
  董志翹『観世音応験記三種訳注』江蘇古籍出版社、2000(現在も書虫等で扱っており入手可能な模様)
  牧田諦亮『六朝古逸観世音応験記の研究』平楽寺書店、1970
  孫昌武『観世音応験記三種』中華書局、1994
  衣川賢次「傅亮『光世音応験記』訳注」『花園大学文学部研究紀要』29、1997
  衣川賢次「張演『続光世音応験記』訳注(上)」『花園大学文学部研究紀要』31、1999
  衣川賢次「張演『続光世音応験記』訳注(下)」『花園大学文学部研究紀要』33、2001
  後藤昭雄「金剛寺蔵<佚名諸菩薩感応抄>所引『観世音応験記』佚文」『大阪大学文学部紀要』39、1999
  小南一郎「六朝隋唐小説史の展開と仏教信仰」(福永光司編『中国中世の宗教と文化』京都大学人文科学研究所、1982所収)
 その他は授業で指示


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