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担当教員 戸倉英美 | 学期:夏 | 月・2 |
新5号館 517教室 |
中国の韻文文学の歴史は、先秦時代の『詩経』『楚辞』に始まり、後漢の後半には五言詩が生まれ、少し遅れて発生する七言詩とともに、最も主要な詩形となった。唐代になると、絶句と律詩が完成し、中唐を過ぎると「詞」といわれる新しい形式の韻文文学が発生した。中国の韻文文学の最高峰は、唐詩と宋詞といわれる。この授業では、中国古典文学における韻文文学(広義の詩)について概観し、詩とは何か、中国の言語及び社会において、詩を成り立たせる条件は何か、中国の詩の歴史は、何が変化することで形成されたかを考える。
授業のキーワード:詩、詞、古体詩、近体詩、唐詩、宋詞
『詩経』から始めて、それぞれの時代を代表する作品を選び、読解し、鑑賞する。読解の方法は主として漢文訓読法によるが、現代中国語による音読を取り入れて、中国の詩の形式面の特徴を理解する(駒場の学生諸君には、現代中国語による音読を要求しない)。
教科書:プリントを配布する。 |
担当教員 戸倉英美 | 学期:通年 | 火・4 | 赤門総合研究棟 赤門738 |
楚の国の歌謡を集めた『楚辞』は、中原諸国の歌を集めた『詩経』と並ぶ中国最古の詩歌集である。『国語』には、楚は巫習の盛んな地であるとされ、『楚辞』の諸篇は、いずれも何らかの形で、巫覡によって行われた宗教活動と関わりのあるものと考えられる。今回はその中から「九歌」を精読する。「九歌」は山川の神々を祭る歌や、英霊を祭る歌など11篇から成り、『楚辞』の中でも最も古い層に属するといわれる。朱熹が「九歌」には神とそれを招く巫のように、複数の登場人物がいるという説を唱えて以来、各篇ごとに様々な劇的構成を見る試みが行われてきた。漢代から現代まで、多くの先人達の助けを借りながら、中国の古典の中でも最も幻想的な魅力に富んだ作品に挑戦してみよう。
授業のキーワード:楚辞、九歌、巫、辞賦、雲中君
今年度は「九歌」の二番目の歌「雲中君」の最後の六句を読み進める。
教科書:プリントを配布する。 |
担当教員 戸倉英美 | 学期:通年 | 隔火・5 | 赤門総合研究棟 赤門738 |
中国の古典詩文は長い歴史と膨大な数の作品とを擁し、しかも作者はいつの時代も過去の文学の歴史をふまえて執筆している。どんな領域を研究対象とする場合にも、その歴史全体を視野に入れていることが要求される。この要求に応えるため、授業では様々な試みを行いたい。専攻する時代も分野も大きく異なる学生達が、それぞれ現在取り組んでいる研究について報告し、全員で討論することもある。外国人研究員として滞在している先生方や、時には学外からお招きした学者に、最新の研究についてお話しして頂くこともある。古典詩文の各領域に対する理解を深め、問題点と研究方法を学習すること、各自の研究を、文学史全体の中で捉える大きな視点を獲得することが、この授業の目的である。
授業のキーワード:中国古典文学、詩、文、小説、中国文学史
「楚辞講読」の授業と同じ時間に隔週で開講する。4月の最初の週は「楚辞講読」の授業を行い、そのときに出席者と相談して、詩文研究法の授業計画を立てる。
古典詩文を専攻する学生のための授業だが、白話・近現代文学・語学などを専攻する諸君の参加を歓迎する。履修登録せず、興味のある会だけ参加することもかまわない。学部生の参加もOK。それぞれの視点から遠慮なく発言し、討論に加わってほしい。 |
担当教員 戸倉英美 | 学期:夏 | 水・2 | 赤門総合研究棟 赤門738 |
李白・杜甫・王維らを輩出した唐代は、中国文学の歴史の中でも詩の黄金時代といわれ、わが国でも唐詩は『白氏文集』や『唐詩選』を通して古くから愛読されてきた。それに対して宋代の詩は、唐詩ほど悲しみを謳い上げることがなく、平静かつ論理的で、「詩情の散文化」「題材の日常化」に特色があるとされてきた。現代でも宋詩について論じる場合は、こうした評語を前提に出発するものがほとんどである。しかし実際に宋代の詩のいくつかを見てみれば、このような語を無批判に繰り返すことによって、宋詩の真実の姿が見失われてきたと考えざるを得ない。作品を読んで、唐詩とは異なる宋詩の魅力を再発見することを試みたい。
授業のキーワード:詩、唐詩、宋詩、楽府、詞、蘇軾 詩と楽府、詩と詞の関係を考慮しつつ、詩というジャンルの歴史を概観し、宋詩の文学史的位置を把握する。本年度は、北宋を代表する詩人・蘇軾の作品を取り上げ、唐詩と比較しながら読み進める。 一首ごとに事前に担当者を決め、演習方式で読み進める。
教科書:プリントを配布する。 |
担当教員 戸倉英美 | 学期:冬 | 水・2 | 赤門総合研究棟 赤門738 |
中国の散文の歴史は先秦時代の『尚書』『春秋』、諸子の散文などに始まり、続く漢代の『史記』『漢書』は、散文叙述をさらに発展させたといわれる。しかし魏晋の頃から駢文、あるいは四六駢儷文と呼ばれる形式の美を追求した文章が生まれ、六朝時代を通して文の代表とされた。駢文に対する批判は、北朝の西魏の頃から繰り返し提起されたが、駢文は唐代に入っても衰えることなく、盛唐に最盛期を迎える。唐代半ば、韓愈と柳宗元は、先秦漢代の文章を理想とする古文運動を提唱、賛同者を得たものの、晩唐と北宋の初めはまた駢文優勢となり、古文の地位が確定するのは欧陽脩以後のことであった。授業では「文」の歴史的変遷をたどり、唐宋の代表的作家の散文を読む。
授業のキーワード:唐宋散文、駢文、古文運動、韓愈、柳宗元、欧陽脩
中国の文には、説・論・書・序・銘など多くの種類があり、これらは中国古典の用語で「文体」といわれる。昨年は、柳宗元や蘇軾が女性のために書いた墓誌銘を読んだが、文意を正確に読み解くためには、唐宋社会における女性の地位や、葬送の習慣、魂に対する考え方など様々な問題に対する理解が不可欠であった。今年度も一つの「文体」を選び、社会的文化的背景を含め、総合的に理解することを目指したい。
参考書: |