現代中国の村上春樹チルドレンを読む
担当教員  藤井省三 学期:夏 月・4 赤門総合研究棟721
 本ゼミでは上海でデビューした女性作家で村上春樹チルドレンの一人でもある安妮宝貝(アンニー・パオペ イ、Annie Baby)のチベットを舞台とする小説『蓮花』を読む。作品の読解に当たっては、各種の辞典・事典・地図・文献目録などの工具書および作品に関連する新 聞・雑誌・単行本などの調査が必要とされる。このような近代中国研究の基礎的工具書に習熟することも本ゼミの目標である。


担当教員  藤井省三 学期:夏 日程未定 赤門総合研究棟623
 東アジア比較文学研究の視点から台湾文学を広く研究する。東京台湾文学研究会例会と日本台湾学会大会の報告を中心に研究する。



担当教員  藤井省三 学期:夏 水・4 駒場1212
 魯迅(ルーシュン、ろじん、1881-1936)は1902-09年まで明治末の7年間を日本で留学生として過ごし、夏目漱石や森鴎外らの影響を受けた。帰国後も芥川龍之介、小林多喜二ら同時代の日本文学に深い関心を寄せている。
  魯迅は辛亥革命(1911)から五・四運動(1919)以後に至る中国の変革期に際し、漱石『坊つちゃん』(1906)に共感を抱きつつ、中国国民性批判 の小説「阿Q正伝」(1923)を書き上げて、国民国家形成のために自己否定すべき「阿Q」像を確立した。「阿Q」像とは次のように仮に定義できようーー 通常の名前を持たず、家族から孤立し、旧来の共同体の人々の劣悪な性格を一身に集めて読者を失笑苦笑させたのち犠牲死して、旧共同体全体の倫理的欠陥を浮 き彫りにし、読者を深い省察に導く人物。
 「阿Q」像は日本では太宰治の戦後作品や大江健三郎の初期から晩期の作品、そして1979年ポストモダ ン社会成立前夜にデビューする村上春樹に影響を与える(例えば『羊をめぐる冒険』の「鼠」や「駄目になった王国」の「Q氏」)など、戦後日本の国民的転換 期に、自己否定されるべき各種人物像へと展開している。
 本講義では魯迅を軸として、このような日中両国の現代文学の流れについてお話ししたい。


担当教員  藤井省三 学期:夏 水・5 駒場1212
 1989年に勃発した天安門事件(中国語では「六四事件」)は、現代中国の原点であり、昨年、獄中でノーベル平和賞を受賞した劉暁波は、「この受賞は天安門事件で犠牲になった人々の魂に贈られたものだ」と涙を流して語ったという。
 婁燁(ロウ・イエ、1965~)はジャ・ジャンクー(賈樟柯)らとともに現代中国アート系映画界を代表する監督であり、婁燁監督の代表作『天安門、恋人た ち』(原題:頤和園、2006年作品)は、映画の前半で北清大学(北京大学と清華大学とがモデル)を舞台に学生たちが恋の季節を経て民主化運動へと繰り出 し6月4日の天安門事件に遭遇するまでを描き、映画の後半で事件後に高度経済成長からドロップアウトして現在に至る恋人たちの事件後の生き様を描いている。
 村上春樹『ノルウェイの森』は1987年にジェット機でドイツ・ハンブルク空港に着陸した「僕」が、18年前の大学紛争時代に経験した三角関係を回想する物語である。婁燁監督は事件前後の十余年に余虹が体験する多くの三角関係を描いており、ヒロイン余虹とは『ノルウェイの森』の直子と緑とを 一身に兼ねたような女性といえそうだ。『天安門、恋人たち』とはまさに中国ポスト鄧小平時代の『ノルウェイの森』なのである。
 本講義ではDVDで『天安門、恋人たち』およびドキュメンタリー映画『天安門』(監督:カーマ・ヒントン, リチャード・ゴードン)などの映像を参照しながら、中国語原文の脚本を読み、中国の文化と社会の現在を考えたい。


担当教員  藤井省三 学期:夏 隔金・4-5 赤門総合研究棟738
 東アジア比較文学研究の視点から、実証研究、理論研究、作家・作品研究を行う。4限には台湾人であり上海で新感覚派として活躍した劉吶鴎の日記を、1927年11月10日から精読する。


担当教員  藤井省三 学期:夏 月・5 法文1号館319
 本講義は魯迅の短篇小説集の読書を通じて、現代中国文学の原点を探ることを目標とする。


担当教員 文学部教員リレー講義 学期:夏 水・5 駒場新5号館514
 19世紀末、リュミエール兄弟によるシネマトグラフの発明以来、映画は文学と深い関係を結びながら発展してきた。その関係は単に、小説や演劇作品の映画化にとどまるものではない。文学もまた深く映画に魅惑され、映画的表現の刺激を受け止めて新たな書法を切り開いてきた。
 この講義は、文学研究に携わりながら映像文化にも強い関心を寄せる文学部教員の力を結集して、文学と映画の相関関係を、さまざまな国の事例を横断しつつ、 総合的に考察することを目的とする。受講生は多くの作品との触れ合いを通して、文学と映画のあいだにはたらくダイナミックな相互作用の豊かさを体験することができるだろう。

6月8日 藤井省三(中国語中国文学)「中国文学と映画」


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