「現代上海文学を読む」
担当教員  藤井省三 学期:夏 月・4 赤門総合研究棟721
  本ゼミでは女性作家で村上春樹チルドレンの一人でもある安妮宝貝(アンニー・パオペイ、Annie Baby)の短篇小説集を読む。作品の読解に当たっては、各種の辞典・事典・地図・文献目録などの工具書および作品に関連する新聞・雑誌・単行本などの調査が必要とされる。このような近代中国研究の基礎的工具書に習熟することも本ゼミの目標である。  中国語初級修了以上の語学力が必要。中文科講義「中国文学史概説(近現代)」未履修の者は、『20世紀の中国文学』(放送大学教育振興会)を通読しておくこと。また本ゼミでは研究書2冊についてゼミ生各自がレポートを提出し、これをめぐって討論を行う。

 4月19日開講、ガイダンス
4月26日より作品読解開始、7月13日に修了予定。学会出張のため三回休講するが、休講期間に以下の二本の研究書読書レポートを課す予定。
@『東京外語支那語部』(藤井著、朝日選書)を通読し1200字前後で書評せよ。
A『魯迅「故郷」の読書史』(藤井著、創文社。または董炳月訳、北京・新世界出版社『魯迅「故郷」閲読史』)を通読して、2000字前後で書評せよ。

 テキストのうちアニー・ベイビーの中国語原作『告別薇安』は、マスター・コピーを提供するので、初回のゼミで各自複写することができる。
 通常のゼミでは、一回一人のレポーターが『告別薇安』の2-4頁を担当する。レポーターは事前に作品の日本語訳および注釈のプリントを用意してゼミ当日に配布する。ゼミではレポーターが原作小説を二、三段落ずつ音読しながらプリントを参考にしつつ日本語訳する。その後、ゼミ参加者全員で音読および翻訳を検討する。検討終了後、レポーターが作中の固有名詞や作品の背景について注釈を付ける。最初の数回は四年生または大学院生がレポーターを担当する。
 学期前半に一回、ゼミOB院生による工具書ガイダンスを赤門総合研究棟6階の漢籍コーナー参考室で行う。  ゼミ生が提出した研究書読書レポート@Aは藤井が添削して各ゼミ生に一週間以内に返却する。その際に二、三のレポートをコピーして全員に配布し、これをもとに翌週のゼミ後半に討論を行う。なお参考として研究書読書レポート例を配布する。

教科書
@藤井省三『東京外語支那語部』朝日新聞出版、朝日選書
A藤井省三『魯迅「故郷」の読書史』創文社。または董炳月訳、北京・新世界出版社『魯迅「故郷」閲読史』

参考書
@アニー・ベイビー『さよなら、ビビアン』(泉京鹿訳、小学館)
A衛慧、桑島道夫訳『上海ベイビー』文藝春秋、文春文庫
B衛慧、泉京鹿訳『衛慧みたいにクレイジー』講談社
        C藤井省三『20世紀の中国文学』放送大学教育振興会



担当教員  藤井省三 学期:通年 隔月・5 赤門総合研究棟623
 台湾文学を広く研究する。



担当教員  藤井省三 学期:夏 水・4 駒場1232
 魯迅(ルーシュン、ろじん、1881-1936)は1902-09年まで明治末の7年間を日本で留学生として過ごし、夏目漱石や森鴎外らの影響を受けた。帰国後も芥川龍之介、小林多喜二ら同時代の日本文学に深い関心を寄せている。
 魯迅は辛亥革命(1911)から五・四運動(1919)以後に至る中国の変革期に際し、漱石『坊つちゃん』(1906)に共感を抱きつつ、中国国民性批判の小説「阿Q正伝」(1923)を書き上げて、国民国家形成のために自己否定すべき「阿Q」像を確立した。「阿Q」像とは次のように仮に定義できようーー通常の名前を持たず、家族から孤立し、旧来の共同体の人々の劣悪な性格を一身に集めて読者を失笑苦笑させたのち犠牲死して、旧共同体全体の倫理的欠陥を浮き彫りにし、読者を深い省察に導く人物。
 「阿Q」像は日本では太宰治の戦後作品や大江健三郎の初期から晩期の作品、そして1979年ポストモダン社会成立前夜にデビューする村上春樹に影響を与える(例えば『羊をめぐる冒険』の「鼠」や「駄目になった王国」の「Q氏」)など、戦後日本の国民的転換期に、自己否定されるべき各種人物像へと展開している。
 本講義では魯迅を軸として、このような日中両国の現代文学の流れについてお話ししたい。

 4月14日に開講し、初回に講義日程を配布する予定。講師は国際学会での報告のため二回休講するが、これは補講および課題レポート等を以て補いたい。
 また映画化された「阿Q正伝」や村上春樹『風の歌を聴け』などのDVDを参考上映し、「「阿Q」像の系譜」をより立体的にイメージできるよう工夫したい。

第1回 東アジアにおける魯迅「阿Q」像の系譜:ガイダンスに替えて
第2回 夏目漱石『坊つちゃん』:「阿Q」像の源流
第3回 上魯迅の日本留学と漱石体験
第4回 魯迅と中国辛亥革命および五・四運動
第5回 魯迅と芥川龍之介
第6回 魯迅「孔乙己」と芥川「毛利先生」
第7回 1930年代日本の魯迅ブーム:岩波文庫『魯迅選集』と改造社『大魯迅全集』
第8回 太宰治の魯迅伝記小説:『惜別』論
第9回 竹内好の魯迅論と太宰治批判
第10回 大江健三郎と魯迅
第11回 村上春樹と魯迅
補講 参考映画:陳白塵脚本映画『阿Q正伝』と大森一樹監督『風の歌を聴け』
 基本的に前半60分間を講師による講義とし、後半30分を受講生からの質問に基づく討論とする。パワーポイント、DVDなどの映像も多用したい。

教科書
魯迅『故郷/阿Q正伝』藤井省三訳、光文社古典新訳文庫
参考書
藤井省三『20世紀の中国文学』放送大学教育振興会
藤井省三『村上春樹のなかの中国』朝日選書、朝日新聞社
藤井省三『魯迅事典』三省堂
藤井省三編『東アジアが読む村上春樹』若草書房
藤井省三『中国映画 百年を描く、百年を読む』岩波書店



担当教員  藤井省三 学期:夏 水・5 駒場1232
中国では高度経済成長に伴い、貧富の格差が極大化しており、この傾向に警鐘を鳴らしているのが「底層叙述」の映画と文学である。その代表的監督のジャ・ジャンクー(賈樟柯、1970-)はセミ・ドキュメンタリーの手法で、『世界』『長江哀歌(三峡好人)』『四川のうた(二十四城記)』などの作品を撮り、世界の注目を集めている。本講義ではDVDで映像を鑑賞しながら、中国語原文の脚本を読み、中国文化の現在を考えたい。

 4月14日に開講し、初回に講義日程を配布する予定。講師は国際学会での報告のため二回休講するが、これは補講および課題レポート等を以て補いたい。
中国語脚本を音読した上で日本語に翻訳しつつ、映画の構成およびその作品背景について講義する。

教科書
藤井省三『中国映画 百年を描く、百年を読む』岩波書店

参考書
厳 善平 農村から都市へ―1億3000万人の農民大移動 (叢書 中国的問題群)  岩波書店
ジャ・ジャンクー著 ジャ・ジャンクー「映画」「時代」「中国」を語る 丸川哲史・佐藤賢共訳 以文社



担当教員  藤井省三 学期:通年 隔金・4-5 赤門総合研究棟738
 4限には台湾人であり上海で新感覚派として活躍した劉吶鴎の日記を、1927年10月9日から読み続ける。
 テキストは彭小妍・黄英哲編『劉吶鴎全集 日記集上下』(台南県文化局2001)
 5限にはゼミ生諸君による研究発表と討論を行う。
 4月16日(金)に開講予定。

教科書
彭小妍・黄英哲編『劉吶鴎全集 日記集上下』(台南県文化局2001)

参考書
許秦蓁《摩登、上海、新感覚──劉吶鴎 (1905〜1940) 》台湾秀威



担当教員  藤井省三 学期:冬 火・5 法文1号館 217
 本講義は魯迅の短篇小説集『吶喊』の読書を通じて、現代中国文学の原点を探ることを目標とする。
10月12日開講、学会出張等のため二、三回休講する予定。
 日本語訳または中国語原書の魯迅短篇集『彷徨』から「祝福」「酒楼にて」「傷逝」などの名作を読む。

教科書
 『魯迅短編集U』(仮題)藤井訳、光文社古典新訳文庫または魯迅『彷徨』北京・人民文学出版社
参考書
魯迅『故郷/阿Q正伝』光文社古典新訳文庫
藤井省三『魯迅事典』三省堂
藤井省三『20世紀の中国文学』放送大学教育振興会




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