「唐末五代詞講読」
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担当教員 戸倉英美 | 学期:夏 | 月・2 | 赤門総合:723 |
詞は唐代に起こった新しい形式の韻文で、句の長さが不揃いなことから「長短句」とも呼ばれる。晩唐の温庭?筠によって新しいジャンルとして確立し、宋代には多くの詩人が詞を創作した。明の胡応麟が各時代を代表する文学を「唐詩・宋詞・元曲」という語で表したように、詞は宋代に発展し、唐詩と並ぶ中国詩歌の金字塔を形成した。しかし詞は通俗的な歌謡から始まったため、文学史においてはしばしば詩よりも劣ったものとされ、「小さな抒情」の表現に終始し、「最も重要な感情は詩に託せられた」(吉川幸次郎『宋詩概説』)と言われる。しかし宋代の詩人たちにとってこのような区別があっただろうか。むしろ詩と詞という二つの抒情詩が相互補完的に宋代の感情を表現していたと考えるべきではないか。また一般に平静かつ論理的といわれる宋詩の中には、詞の制作を経験したことで、初めて獲得できたと思われる新しい抒情の形がある。宋詩をより深く理解するためにも、詞を学ぶことが不可欠である。
参考書 |
担当教員 戸倉英美 | 学期:冬 | 水・2 | 赤門総合:721 |
中国の散文の歴史は先秦時代の『尚書』『春秋』、諸子の散文などに始まり、続く漢代の『史記』『漢書』は、散文叙述をさらに発展させたといわれる。しかし魏晋の頃から駢文、あるいは四六駢儷文と呼ばれる形式の美を追求した文章が生まれ、六朝時代を通して文の代表とされた。駢文に対する批判は、北朝の西魏の頃から繰り返し提起されたが、駢文は唐代に入っても衰えることなく、盛唐に最盛期を迎える。唐代半ば、韓愈と柳宗元は、先秦漢代の文章を理想とする古文運動を提唱、賛同者を得たものの、晩唐と北宋の初めはまた駢文優勢となり、古文の地位が確定するのは欧陽脩以後のことであった。授業では「文」の歴史的変遷をたどり、唐宋の代表的作家の散文を読む。
中国の文には、説・論・書・序・銘など多くの種類があり、これらは中国古典の用語で「文体」といわれる。今回の授業では主として「記」という「文体」に属する作品を読む。記は塔や楼など建物の完成を記念して執筆されたものや、景勝地に遊んだ記録、旅の記録などを主たる内容とする。議論よりも描写の要素が多いものを選んで鑑賞したい。事前に担当者を決め、演習形式で読み進める。
参考書 |
担当教員 戸倉英美 | 学期:通年 | 隔火・4‐5 | 赤門総合研究棟738 |
楚の国の歌謡を集めた『楚辞』は、中原諸国の歌を集めた『詩経』と並ぶ中国最古の詩歌集である。『国語』には、楚は巫習の盛んな地であるとされ、『楚辞』の諸篇は、いずれも何らかの形で、巫覡によって行われた宗教活動と関わりのあるものと考えられる。今回はその中から「九歌」を精読する。「九歌」は山川の神々を祭る歌や、英霊を祭る歌など11篇から成り、『楚辞』の中でも最も古い層に属するといわれる。朱熹が「九歌」には神とそれを招く巫のように、複数の登場人物がいるという説を唱えて以来、各篇ごとに様々な劇的構成を見る試みが行われてきた。漢代から現代まで、多くの先人達の助けを借りながら、中国の古典の中でも最も幻想的な魅力に富んだ作品に挑戦してみよう。
今年度は「九歌」の最初の歌「東皇太一」の第九句目から読解を始める。中国の古典を読むときには、歴代の研究成果である注釈を読むことが不可欠である。大量の注釈に足をすくわれることなく、必要な情報を手に入れるための力を養うこともこの授業の目標の一つである。 具体的には、漢代から現代まで、代表的な研究を、担当者を決めて精読する。解釈の違いを比較検討した後、新たな視点から新解釈の可能性を探る。
参考書
参考書を頼りに、『楚辞』の諸篇を出来るだけたくさん読んでおくことが望ましい。 |
担当教員 戸倉英美 | 学期:通年 | 隔火・4-5 | 赤門総合研究棟738 |
中国の古典詩文は長い歴史と膨大な数の作品とを擁し、しかも作者はいつの時代も過去の文学の歴史をふまえて執筆している。どんな領域を研究対象とする場合にも、その歴史全体を視野に入れていることが要求される。この要求に応えるため、授業では様々な試みを行いたい。専攻する時代も分野も大きく異なる学生達が、それぞれ現在取り組んでいる研究について報告し、全員で討論することもある。外国人研究員として滞在している先生方や、時には学外からお招きした学者に、最新の研究についてお話しして頂くこともある。古典詩文の各領域に対する理解を深め、問題点と研究方法を学習すること、各自の研究を、文学史全体の中で捉える大きな視点を獲得することが、この授業の目的である。
主として次のような方法で授業を進める。 ○学生が、執筆中の論文の構想発表、あるいは完成した論文の報告を行い、全員で質疑と討論を行う。 ○外国人研究員や、学外からのゲストの研究報告を聞き、質疑と討論を行う。 ○学生が各自興味のあるテキストを用意し、全員で読解する。 |
(1・2年生) 「中国の古典小説と日本の近代作家たち」
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担当教員 戸倉英美 | 学期:夏 | 月・5 | 駒場1103 |
○授業の目標概要
江戸時代には、浅井了意『伽婢子(おとぎぼうこ)』(1666年刊)、上田秋成『雨月物語』(1776年刊)、曲亭馬琴(滝沢馬琴)『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)』(1814−1842年刊)など、中国の小説に取材した作品が作られ、多くの読者を獲得した。しかし坪内逍遥は『小説神髄』(1885−1886〔明治18−19〕年刊)において、『南総里見八犬伝』の主人公である八犬士を「仁義八行の化物にて決して人間とはいひ難かり」と批判している。小説が勧善懲悪を説くことを排し、人間の心理や世間の風俗を写実的に描くことを主張した逍遥にとって、『八犬伝』は旧時代の文学を代表するものであった。『小説神髄』は日本の近代文学の誕生に大きく寄与したといわれるが、その後も中国の史書や小説をもとに作品を創作することは続けられ、現在に至っている。芥川龍之介・太宰治らの作品を原作と読み比べ、近代の作家たちは、なぜ中国の古典に取材して創作を行ったのか、彼らの作品は、原作の何を引き継ぎ、何をどのように変化させたのかを考えてみたい。
○授業計画
○授業の方法
○キーワード
○評価方法
○履修上の注意
○学習上のアドバイス
○参考文献 |