「『三国志演義』研究」
担当教員  中川 諭 学期:夏 集中 赤門総合研究棟 赤門849
 コンピュータを用いた『三国志演義』版本研究。
 通俗小説のうち比較的早く版本研究が行われたのは、『水滸伝』・『西遊記』・『紅楼夢』である。一方『三国志演義』は、これらの作品と同じくらい高い人気を誇り、その成立当時から多くの読者を獲得し、そして現在も数多くの版本が伝わっているにもかかわらず、版本研究は大きく遅れていた。それがこの十数年来、やっと『三国志演義』の諸版本が見直され、版本研究も活発に行われるようになってきた。
 版本研究は本来手作業で、地道に複数の版本を比較することで行われるものである。しかしこれはきわめて労力を要する作業である。まして『三国志演義』のような長編小説の複数の版本を手作業で一字一字比較するということは、決して楽な作業ではない。ところが2001年、首都師範大学数字化校園建設中心高級技師(当時)の周文業先生によって、「三国志演義版本比較プログラム」が開発された。このプログラムは、まだまだ開発途中でいくつかの問題を抱えているとはいえ、従来の版本研究の方法を一新するほど画期的なものであった。そしてその後もこのプログラムは毎年バージョンアップがなされている。
 本講義では、以上のような『三国志演義』を中心とする版本研究をめぐる状況の中で、通俗小説の版本研究がどのように変わってきたのか、そして今後どのように発展していくべきなのかということについて考えてみたい。

授業計画
 1, 中国古典小説史概観
 2, 『三国志演義』版本研究の概要
 3, Unicode拡張A・Bによる70,000字の入力
 4, 周文業先生開発の「中国古代小説数字化プログラム」
 5, 『三国志演義』諸版本のデジタルデータ化
 6, 国学の「中国古代小説典」
 7, コンピュータを用いた『三国志演義』版本研究の実例
 8, コンピュータを用いた研究の問題点と注意点





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