「中国映画論を検討する」
担当教員  刈間文俊 学期:夏 月・2 駒場8号館323
 近年、中国映画の研究は、飛躍的に発展している。とくに中国本国での研究の進展は著しい。代表的な論考を比較検討することで、中国映画研究の現況を俯瞰的に眺めることを目標としたい。
初回に、中国映画研究の概況を紹介し、代表的な論考の書目を提示する。各自の担当を決め、二回目以降は、担当者の発表と討論、コメントによって、ゼミ形式で進める。中国語未修者には、中国語以外の文献を担当するよう配慮する。

担当教員  代田智明 学期:夏 月・3 駒場8号館420
 近現代中国の歴史・社会・文化にかかわる理解を深めることを目指す。
参加者の関心に従って、日本語または中国語のテクストを決め、輪読形式で読みこなし、報告とともに参加者全員による討議を通して、近現代中国の理解を深める。



担当教員  伊藤徳也 学期:通年 火・4 駒場18号館909

 「日常生活の審美化」は、M・フェザーストンによれば、aアートの領域、b自己形成の領域、c消費文化の領域に分けて考えることができる。授業の目的は、近現代中国に即して(1)abc三領域における「日常生活の審美化」の状況と歴史を把握すること。(2)abc三領域の流動的で相互浸透的な関係性を把握すること。(3)1920年代と中国古典世界および20世紀末以降の文化状況との関係を具体的にたどること、である。まずは周小《唯美主与消文化》(北京大学出版社)の後半を読むことから始める

 

授業計画

 1導入:周小《唯美主与消文化》と周作人の「生活の芸術」論の紹介解説
 2演習形式による講読
 2−1周小著書後半
 2−2関連テキスト(日常生活美化を直接論じた論文、あるいは張競生の文章)

 

参考書

 周小《唯美主与消文化》北京大学出版社
 M
・フェザーストン「消費文化とポストモダニズム」恒星社厚生閣
 解志熙《美的偏至 中国代唯美颓废文学思潮研究》上海文出版社
 周仁政《京派文学与代文化》湖南范大学出版社
 李今《海派小代都市文化》安徽教育出版



担当教員  藤井省三 学期:夏 水・4 駒場1232
 授業の目標、概要 本講座は中国・香港・台湾の現代映画と小説を通じて、多様性に富む現代中国語圏の社会と文化を理解することを目的とする。小説では中国魔術的リアリズムの巨匠、莫言(ばくげん、1955〜)、上海のオルターナティヴ作家衛慧(えいけい、1973〜)とアニー・ベイビー(安ni〔女+尼〕宝貝、1974〜)、アメリカ亡命中の鄭義(ていぎ、1947〜)、香港アイデンティティを描く施叔青(ししゅくせい、1945〜)、台湾のフェミニズム作家、李昂(リー・アン、1952〜)らを取り上げたい。映画では北京・上海・農村・香港・台湾を描くニューウェーブ以後この20年の名作を紹介したい。DVDによる映像資料も上映する予定である。
 また村上春樹の中国語圏文学・映画における受容を紹介し、村上文学を鏡として中国・香港・台湾それぞれの固有の文化状況、および日中関係、日台関係などを考察したい。
 4月8日に開講し、初回に講義日程を配布する予定である。講師は国際学会での報告のため二回休講するが、これは補講および課題レポート等を以て補いたい。

第1回 村上春樹と魯迅、ウォン・カーウァイ:現代東アジア文化における阿Q像の系譜
第2回 北京を描く映画と小説
第3回 上海を描く映画と小説
第4回 中国農村を描く映画と小説@
第5回 中国農村を描く映画と小説A
第6回 香港を描く映画と小説@
第7回 香港を描く映画と小説A
第8回 台湾を描く映画と小説@
第9回 台湾を描く映画と小説A
第10回 記述式試験
補講@ 賈樟柯監督『プラットホーム』
補講A 張芸謀監督『紅いコーリャン』
補講B ウォン・カーウァイ(王家衛)監督『恋する惑星』

履修上の注意:4月8日(水)の開講前に、拙著『現代中国文化探検ーー四つの都市の物語』(岩波新書)に目を通しておいてくれるとありがたい)

担当教員  藤井省三 学期:夏 水・5 駒場1232
 村上春樹は日本の現在を東アジアの時間と空間に位置づけた作家であり、東アジア共通の現代文化、ポストモダン文化の原点となっている。そのいっぽうで、村上自身は中国の深い影響を受けており、高校時代に魯迅を愛読し、デビュー作『風の歌を聴け』では魯迅への深い共感を、1990年代の文芸批評では「阿Q正伝」論も語っている。そして『羊をめぐる冒険』『ねじまき鳥クロニクル』などの作品群で、“歴史の記憶”“戦争の記憶”を語り続けてきた。
 このような村上文学を中国・香港・台湾のいわゆる「両岸三地」の人々は、どのように読んでいるのだろうか。本ゼミでは、中国・香港・台湾の村上文学研究者の論文、文芸批評家による評論、愛読者の新聞・雑誌・ネットへの投稿などを読みながら、中国語圏における「村上春樹現象」の実態と、「両岸三地」それぞれの独自の村上受容のあり方を考察したい。
 本ゼミでは中国語圏の人々が中国語と日本語で書いた文献または中国語文献の日本語訳を用いるので、履修者は初級中国語修了以上の読解力を持つ者に限定される。

 4月8日に開講し、初回に講義日程を配布する予定である。講師は国際学会での報告のため二回休講するが、これは補講および課題レポート等を以て補いたい。

第1回 講義「東アジアと村上春樹」:ガイダンスに替えて
第2回 台湾人が読む村上春樹@:頼明珠氏(村上翻訳家)のエッセー(日本語)
第3回 台湾人が読む村上春樹A:張明敏講師(村上研究者)の村上受容論(日本語)
第4回 台湾人が読む村上春樹B:愛読者たちの声(中国語、一部日本語訳)
第5回 香港人が読む村上春樹@:葉寰=i村上翻訳家)のエッセー(中国語)
第6回 香港人が読む村上春樹A:Uganda KWAN博士(比較文学研究者)の村上受容論(日本語)
第7回 香港人が読む村上春樹B:愛読者たちの声(中国語、一部日本語訳)
第8回 中国人が読む村上春樹@:林少華教授(村上翻訳家)の『落花之美』(中国語)
第9回 中国人が読む村上春樹A:楊炳菁講師(村上研究者)の林少華翻訳論(日本語)
第10回 中国人が読む村上春樹B:愛読者たちの声(中国語、一部日本語訳)
補講 比較映画研究:大森一樹監督『風の歌を聴け』とウォン・カーウァイ監督『欲望の翼』(原題:阿飛正伝)

 第1回はガイダンスを兼ねて、講師側が講義を行う。受講生は事前にテキスト『村上春樹のなかの中国』第1、2章に目を通しておいて欲しい。
 第2回以後は受講生各自が事前に資料を読み、レポート担当者がゼミで報告を行い、それをもとに講師・レポーター・受講生が共に討論を行う。
 資料は講師側より貸与するマスター・コピーから各自が複写する。

教科書
藤井省三『村上春樹のなかの中国』朝日選書、朝日新聞社

参考書
村上春樹『風の歌を聴け』講談社文庫
村上春樹『羊をめぐる冒険』講談社文庫
村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』中公文庫
藤井省三編『東アジアが読む村上春樹』(仮題)若草書房2009近刊予定
藤井省三『現代中国文化探検ーー四つの都市の物語』岩波新書
藤井省三『20世紀の中国文学』放送大学教育振興会

担当教員  小野秀樹 学期:夏 金・4 駒場1211
 言語を観察、分析するためにはいくつかの領域・分野が存在するが、それらを幅広く横断しながら現代中国語がどのような構造を持つ言語であるかを俯瞰し、その特色を他言語との比較を交えつつ考察する。具体的には、音声・語彙(語構成)・文法(統語論)・談話(語用論)といった領域、分野において、日本語や英語と対照しながら中国語の実態について解説する。
1年以上の中国語学習暦がある受講生が望ましいが、言語に関心を持つ人ならばその限りではない。


担当教員  戸倉英美 学期:夏 月・5 駒場1103
○授業の目標概要
 江戸時代には、浅井了意『伽婢子(おとぎぼうこ)』(1666年刊)、上田秋成『雨月物語』(1776年刊)、曲亭馬琴(滝沢馬琴)『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)』(1814−1842年刊)など、中国の小説に取材した作品が作られ、多くの読者を獲得した。しかし坪内逍遥は『小説神髄』(1885−1886〔明治18−19〕年刊)において、『南総里見八犬伝』の主人公である八犬士を「仁義八行の化物にて決して人間とはいひ難かり」と批判している。小説が勧善懲悪を説くことを排し、人間の心理や世間の風俗を写実的に描くことを主張した逍遥にとって、『八犬伝』は旧時代の文学を代表するものであった。『小説神髄』は日本の近代文学の誕生に大きく寄与したといわれるが、その後も中国の史書や小説をもとに作品を創作することは続けられ、現在に至っている。芥川龍之介・太宰治らの作品を原作と読み比べ、近代の作家たちは、なぜ中国の古典に取材して創作を行ったのか、彼らの作品は、原作の何を引き継ぎ、何をどのように変化させたのかを考えてみたい。

○授業計画
 日本の作家が『史記』などの歴史書や、『三国志演義』などの小説をもとに長篇小説を創作する例は少なくないが、この授業では短い作品を取り上げて精読する。よく知られているのは、芥川龍之介(1892−1927)が唐代の小説をもとに書いた「杜子春」、中島敦(1909−1942)が同じく唐代の小説に取材した「山月記」、『史記』とその著者・司馬遷の文章をもとに創作した「李陵」である。これらは日本の近代小説として高く評価されているが、今回は参考作品として触れるにとどめる。
 授業では、清代初めの作家・蒲松齢(ほ・しょうれい1640−1715)の小説集『聊齋志異(りょうさい しい)』の中から、「酒虫」と「竹青」を漢文訓読で読み、それぞれを芥川龍之介の「酒虫」、太宰治(1909−1948)の「竹青」と比較する。『聊齋志異』とは、「聊齋(作者の書斎の名、蒲松齢を指す)が誌(しる)した不思議な話」の意味で、中国の怪異を記す小説を集大成したものといわれている。「酒虫」「竹青」とも、唐代以降たくさんの類話が残されており、『聊齋志異』以前の作品を参考にしながら、中国の人々は、これらの物語をどのようなものとして読んでいたのかを考える。

○授業の方法
 原作小説は、数行ずつ事前に担当者を決めて訓読する。ひとつの作品を読み終わった後、全員が原作と日本の作家の作品を比較してレポートを提出し、討論を行う。

○キーワード
 中国の古典小説 日本の近代小説 『聊齋志異』 芥川龍之介 太宰治

○評価方法
 平常点とレポートによって行う。

○履修上の注意
 原作は漢文訓読法で読解するので、現代中国語を履修していることを要求しない。

○学習上のアドバイス
「授業計画」に挙げた芥川龍之介や中島敦の作品とその原作を読んでおくと、興味深く受講できるだろう。太宰治には、『聊齋志異』「黄英」に取材した「清貧譚」という作品もある。原作の翻訳は参考書のリストに挙げた書で読める。

○参考文献
『唐代伝奇集』前野直彬編訳 (東洋文庫) 平凡社1963.10-1964.4
『六朝・唐・宋小説選』前野直彬編訳 (中国古典文学大系第24巻) 平凡社1968.7
『聊斎志異』蒲松齢作/立間祥介編訳 (岩波文庫 赤(32)-040-1, 赤(32)-040-2) 岩波書店1997
『聊齋志異』蒲松齢著/増田渉, 松枝茂夫, 常石茂訳 (中国古典文学大系第40巻-第41巻) 平凡社1970-1971
『史記』司馬遷著/野口定男 [ほか] 訳 (中国古典文学大系第10巻-第12巻) 平凡社1968.2-1971
『史記列伝』司馬遷著/小川環樹, 今鷹真, 福島吉彦訳 (岩波文庫 ; 青(33)-214-1-5)  岩波書店1975.6-1975.12
『聊斎志異』森敦著 潮出版社1979.3


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