科目名 「文言小説講読」
担当教員  戸倉英美 学期:夏 月・2 赤門総合:738
 中国には『春秋左氏伝』や『史記』のように、小説的な叙述形態を持った作品が古くから存在する。しかし虚構であることを意識して作られた散文の物語「小説」の歴史は、唐代に始まる。唐代の小説は一見簡素な描写の中に、すでに多様なプロットが出揃い、叙述の視点や、物語の中に流れる時間の制御といった小説作法の観点から見ても、様々な試みが為されている。その多彩さは、後世の白話小説にも引けを取るものではない。唐代の小説から、主題の類似した作品をいくつか選び、虚構の物語が「どのように作られているか」という観点から比較し、精読する。テキストはプリントを配布。毎回参加者が発表する演習形式。


  科目名 「唐末五代詞講読」
担当教員  戸倉英美 学期:冬 月・2 赤門総合:738
 詞は唐代に起こった新しい形式の韻文で、句の長さが不揃いなことから「長短句」とも呼ばれる。晩唐の温庭筠によって新しいジャンルとして確立し、宋代には多くの詩人が詞を創作した。明の胡応麟が各時代を代表する文学を「唐詩・宋詞・元曲」という語で表したように、詞は宋代に発展し、唐詩と並ぶ中国詩歌の金字塔を形成した。しかし詞は通俗的な歌謡から始まったため、文学史においてはしばしば詩よりも劣ったものとされ、「小さな抒情」の表現に終始し、「最も重要な感情は詩に託せられた」(吉川幸次郎『宋詩概説』)と言われる。しかし宋代の詩人たちにとってこのような区別があっただろうか。むしろ詩と詞という二つの抒情詩が相互補完的に宋代の感情を表現していたと考えるべきではないか。また一般に平静かつ論理的といわれる宋詩の中には、詞の制作を経験したことで、初めて獲得できたと思われる新しい抒情の形がある。これまで何年か授業で宋詩を読んできたが、宋詩をより深く理解するためにも、詞を学ぶことが不可欠である。


  科目名 「楚辞講読」
担当教員  戸倉英美 学期:通年 火・4 赤門総合:738
 楚の国の歌謡を集めた『楚辞』は、中原諸国の歌を集めた『詩経』と並ぶ中国最古の詩歌集である。『国語』には、楚は巫習の盛んな地であるとされ、国政に巫覡の果たす役割も大きかったと思われる。『楚辞』の諸篇は、いずれも何らかの形で、巫覡によって行われた宗教活動と関わりのあるものだろう。今回はその中から「九歌」を精読する。「九歌」は山川の神々を祭る歌や、英霊を祭る歌など11篇から成り、『楚辞』の中でも最も古い層に属するといわれる。朱熹が「九歌」には神とそれを招く巫のように、複数の登場人物がいるという説を唱えて以来、各篇ごとに様々な劇的構成を見る試みが行われてきた。漢代から現代まで、多くの先人達の助けを借りながら、中国の古典の中でも最も幻想的な魅力に富んだ作品に挑戦してみよう。


   科目名 「詩文研究法」
担当教員  戸倉英美 学期:通年 隔火・5 赤門総合:738
 中国の古典詩文は長い歴史と膨大な数の作品とを擁し、しかも作者はいつの時代も過去の文学の歴史をふまえて執筆している。どんな領域を研究対象とする場合にも、その歴史全体を視野に入れていることが要求される。この要求に応えるため、授業では様々な試みを行いたい。専攻する時代も分野も大きく異なる学生達が、それぞれ現在取り組んでいる研究について報告し、全員で討論することもある。外国人研究員として滞在している先生方や、時には学外からお招きした学者に、最新の研究についてお話しして頂くこともある。古典詩文の各領域に対する理解を深め、問題点と研究方法を学習すること、各自の研究を、文学史全体の中で捉える大きな視点を獲得することが、この授業の目的である。



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