2005年度版中文研究室紹介パンフレット掲載 

2004年映画ベスト10と香港映画祭

 中文科ホームページに「今はまっていること」という教員自己紹介欄があります。昨年、私は同欄に「中国映画もいよいよ“酷(クール)”。2003年の私のベスト10は以下の通りです・・・・」と書きました。そこで今回はその続編として、2004年のベスト10を書きましょう。ただし日本公開分が対象です。

1位 柔道龍虎榜

2位 珈琲時光

3位 インファナル・アフェアU 無間序曲

4位 恋の風景

5位 生命

6位 カンフーハッスル

7位 大丈夫

8位 夜に逃れて

9位 上海家族

10位 ターンレフト ターンライト

 みなさんはどんな映画をご覧になりましたか。私としては上位三作は同時1位としたいくらいですが、昨年『インファナル・アフェアT』を一位に押したので、今年は『柔道龍虎榜』をトップに持ってきた次第です。『恋の風景』は台湾の絵本画家幾米(ジミー)が関わっている映画としては、『地下鉄』や『ターンレフト ターンライト』よりも良く撮れており、中国の青島市を舞台にしたものとしては出色でした(と言っても80年代中国映画の『狂気の代償』くらいしか見ていないのですが)。

 昨年は日本でもアジアでも地震が続き1999年台湾大地震に取材したドキュメンタリー『生命』が必見の作品になってしまいました。こんな暗い世相を一時忘れるには『カンフーハッスル』と『大丈夫』は良くできたエンターテインメント映画です。ただし『少林サッカー』の方が香港の現実がより反映されており、『カンフーハッスル』は些か無国籍的になっていたのが玉に傷。エリック・ツァン主演の香港映画『大丈夫』は、恐妻家プレーボーイたちによるドタバタ喜劇で、低予算佳作映画のお手本といえるでしょう。

 台湾映画の『夜に逃れて』は2000年に台北で見たので、細部は良く覚えていないのですが、好印象は残っています。岩波ホールでロングランとなった『上海家族』は最近の中国映画の中ではずいぶんと健闘しましたが、上海が舞台なのに上海語が全く出てこないという奇妙な映画で、これでは『細雪』を東京弁で撮るようなものです。『ターンレフト ターンライト』は、金城武の熱演が印象深く、また台北の街並みが懐かしかったので。

 もしも監督賞を上げるとするなら、『柔道龍虎榜』という素敵な青春柔道映画を作ってくれたジョニー・トウでしょうか。同作は黒沢明を典故とする現代香港版『姿三四郎』です。監督賞は侯孝賢にしようかとも迷うのですが・・・・。

 主演男優賞は『インファナル・アフェアU』で悲劇のマフィア二代目組長を演じた呉鎮宇が最有力候補です。いっぽう、主演女優賞も同作で貫禄たっぷり、しかもセクシーな黒社会の姉御を演じた劉嘉玲(カリーナ・ラウ)を押そうかとも迷うのですが、主演男優賞が呉鎮宇に決まるのであれば、ここは『恋の風景』の林嘉欣に譲ってもらいましょうか。香港映画『恋の風景』とは、亡くなった画家の恋人の故郷を訪ねるという物語で、林嘉欣はデビュー作『男人四十』から比べるとずいぶん色っぽくなりましたが、それでも相変わらずの愛らしい童顔ですね。

 新人賞は『柔道龍虎榜』の応采児(チェリー・イン)に。香港の姿三四郎たちがナイトクラブで乱取りする中、キュートにしてど根性の歌姫が「絶対に売れっ子になってみせる」とつぶやく台詞を聞いて、声援したくなった次第です。最後に白状しますと、昨秋の私は超多忙でウォン・カーウァイ『2046』を見損ねてしまいました(苦笑)。





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