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文化経営学 准教授
小林真理 KOBAYASHI Mari
■ 研究テーマ
- 広く、文化の発展を支える、あるいは阻害する制度・仕組み全般(たとえば、補助金、法人化、指定管理者制度、行政評価)に関する研究
- 公共政策としての文化政策を現実の社会の中で行っていく場合の原理原則及び方法論に関する研究
- 様々な角度からみた「表現」「文化」と「法」の問題
- 文化政策を執行していく機関及びアクターとしての行政そのもの、劇場及び美術館等の芸術機関、「市民」の研究
文化を政策から見ることよりも、政策(あるいはそれを執行していく上で重要な役割を担うアクターの一つとしての行政)を文化から見ることに関心を持ってきました。行政主導で文化政策等を実行していくことの危うさを強く認識しつつ、現実の社会の中で、どのように政策を循環させていくか、あるいは実行していくかということを模索しています。現在もっとも強く関心を抱いているのは、都市レベルで文化政策がどのように執行されており、それがどのような政策決定過程を経ているかという問題です。さらに、市町村合併、地方財政の困窮、行政構造改革が、文化政策にどのような影響を及ぼしているかについて、調査研究を行っています。近年は、いくつかの自治体の文化振興条例及び文化振興計画の策定に、調査研究レベルから深く関わっています。こだわっていることは、芸術(文化)のための政策であり、政策のための芸術(文化)ではありません。
現在はこれらの研究のいくつかを、以下の研究の中で行っています。
- 東京都小金井市との共同研究プロジェクト「芸術文化振興計画策定共同研究」及び「芸術文化振興計画実施事業」(アートフルアクション)(2006年度〜)http://artfullaction.net/
- 科研費基盤研究(B)「行政構造改革が戦後日本の文化政策の成果に与えた影響に関する研究」(2006年度〜)
■ 講義・授業について
講義については、学部生向けの文化資源学入門において文化政策概論的な内容の授業を行っています。大学院生向けの、文化経営学演習では、ここ数年地方自治体の文化行政について考えるゼミを行っています。今年は、これまで数年間関わってきた小金井市での文化行政の実践で得られた経験を、まとめる作業を行っています。このゼミは、毎年夏に論文制作のための準備と文化政策的スポットを見学する合宿を行っています。2007年度は美唄市、札幌市、富良野市、旭川市、2008年度は香南市・高知市・中村市・松山市・直島・犬島、2009年度は富山市・南砺市、2010年度はソウル市とミルヤン、釜山に行きました。研究は基本的に一人で行うものですが、集団で考えることを大事にしています。なお、ここ数年研究指導をした修士課程の学生の論文のタイトルは以下の通りです。
2010年度
- 「リヨン大都市共同体の公共空間整備政策の研究」
- 「『府民館』が韓国演劇界に与えた影響に関する研究」
2009年度
- 「議論・対話による地域づくりの可能性−ニューヨーク州サイリヴァン郡部セルとウッド・ストック・フェスティバルの事例より」
- 「菊田一夫と東宝現代劇−日比谷『芸術座』における演劇興行システムの形成 1954年〜1960年を中心に」
- 「景観としての里山の成立と『原風景』化」
- 「英国の文化政策における意思決定過程の検証−地方ミュージアム改革の事例を通して」
2008年度
- 「台湾自治体文化政策の課題−文化振興条例制定の可能性について」
- 「大学におけるアートマネジメント教育の有効性と可能性について」
- 「創造活動振興のための条件−ボナー・クンストフェラインの現代美術振興」
■ 著書・共著書
- 『アーツ・マネジメント概論』(共著)(水曜社、2001年)
- 『文化行政―はじまり・いま・みらい』(共著)(水曜社、2001年)
- 『文化政策学』(共著)(有斐閣、2001年)
- 『文化政策を学ぶ人のために』(共著)(世界思想社、2002年)
- 『小出郷文化会館物語−地方だからこそ文化のまちづくり』(共著)(水曜社、2002年)
- 『文化権の確立に向けて─文化振興法の国際比較と日本の現実』(単著)(勁草書房、2004年)
- 『指定管理者制度で何が変わるか』(共著)(水曜社、2004年)
- 『指定管理者制度と公立文化施設の運営─文化的公共性を担うのは誰か』(編著)(時事通信社、2006年)
- 『グローバル化する文化政策』(共著)(勁草書房、2009年)
- 『公共劇場の10年−舞台芸術・演劇の公共性の現在と未来』(共編著)(美学出版、2010年)
- 『アクセス公共学』(共著)(日本経済評論社、2010年)
■ 文化資源学を志す人へ
文化資源学研究室は、現場に役に立つノウハウを教えるところではありません。どの学問分野も同じだと思いますが、どのように考えていくかということを学んでいく場だと思います。研究者を目指したいという人ももちろんですが、文化資源学研究室で学んだことを社会の具体的な現場で活かしてくれるような人(そのような意思を強く持つ人)が入学してくれることを歓迎します。文化資源学という研究室の特徴からか、「モノ」がはっきりと見える美術館、博物館の問題に関心を持つ人が多いですが、日本に大量に現れた文化ホール、文化会館は埋もれた資源ともいえます。この研究、また広い意味での文化行政の仕組みや制度に関心を持っている人に来てもらいたいと思っています。
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