【史料読解の基礎とリファレンスツール】

2018年4月10日:新津健一郎(佐川ゼミTA)作成


●漢文訓読(古典中国語文語文の読解)

(本項目は一般的な漢文読解を前提にしています。漢文史料には、他にも公文書・書簡・詩歌など各種各様のジャンル(様式・文体)があり、それぞれに特化した語彙集・辞典・研究ガイドが刊行されている場合もあります。ゼミ担当の先生あるいはTAに尋ねてください。)

(1)基本事項


(2)「工具書」

 =(訓読に限らず)必要な情報を探し出すための参考図書。辞典、字書、目録など。
 ※オンラインリソースもあるが、紙媒体でしか利用できないものも少なくない。うまく組み合わせて利用する必要がある。
 →具体的な書物等は後段を参照。


(3)プロセス

  1. ことばを見分ける
  2. 品詞・句形を見分ける
  3. 意味を考える
  4. 現代語に訳す

ことばを見分ける:語句の切り分け

  

品詞・句形を見分ける:文構造の把握

意味を考える:語釈

現代語に訳す:訓読文(古典日本語)→現代日本語文


(意味が取れない場合)
 ▼自分の勘違い:文字の判読ミス、区切り・品詞・句形の判断の間違い
 ▼特殊な意味/マイナーな語義:
  まずは辞書をよく見る(→『大漢和辞典』)…派生的意味ではないか?
  古い用法/方言/口語的表現/外国語音写ではないか?
  ※音通(同音の別字に置き換え)、俗字など
 ▼読み替えが必要な場合:
  避諱→皇帝の諱を書き換え(陳垣『史諱挙例』中華書局、2004年[他にも版あり])。
  衍字・錯簡→伝写の誤りによって間違った文字が入ったり、字が転倒していたり。
   ※注釈書(考証学者の注、現代の訳注など)で指摘されている場合もある。
   ※年号・日付の誤りは年表などを参照(陳垣『廿史朔閏表』中華書局、1962年)。
  版本上の異同:別の版本(写本)と対照してみる(→後述)

 ▼中国語文の特徴にも注意


漢文訓読(や調べもの)のための各種リソース

    →それぞれ、学内ではどこにあるか(どの館で利用できるか)調べておくとよい。

①図書館(学内):それぞれ位置・開室状況等の詳細はウェブで要確認(→図書館一覧

①-1 総合図書館
 →各種工具書・基本的な漢籍(訳注含む)・概説書・研究書が所蔵されている(一部は書庫内)。

①-2 文学部図書館(3号館
 →主に日本語の研究書が配架されている。開館時間は比較的長い。駒場や学外から資料・コピーを取り寄せる場合はここへ。

①-3 文学部図書館(2号館
 →雑誌が配架されている。研究論文をコピーするときはここへ。通常17時閉館。

①-4 研究室所蔵図書
 →談話室(助教室に向かって右)には辞書類、主任室(同じく左)には中国語の研究書、基本的な漢籍が配架されている。通常17時閉室。
  ▼他の研究室にも同様に研究室配架本がある。東大OPACから利用条件を確認できる。

①-5 文学部図書館(漢籍コーナー
 →漢籍全般(訳注書など含む)・工具書が配架されている。原本を調べたり、引用・出典を確認したりする必要がある場合はまずここへ。ただし、金曜日は閉室。貸し出しには事前手続きが必要。
  ▼他の図書館・研究室所蔵図書は東大OPAC(またはTREE)で配架位置を特定できるが、漢籍コーナーの場合はOPACで四部分類を調べて、その棚に行くことになる。

①-6 史料編纂所図書室
 →日本所蔵の版本(抄本含む)や一部の雑誌、他の館・室が閉室している際にどうしても見たい本(工具書含む)がある場合に利用することがある。なお、ボールペンは使用できないことに注意。

①-7 東洋文化研究所図書室
 →東文研二階。入口で学生証を預ける。漢籍全般、工具書、外国語研究書を利用したい時に便利。他の館・室にない図書も多い。閉架式。

①-8 駒場図書館
 →My OPACで取り寄せ可。ちなみに数理科学研究科図書室には正史の縮刷本がある。

※この他、法学部図書館、経済学部図書館、社研図書室にも東洋史関連書籍がある。


図書館等(学外)

②-1 東洋文庫:文京区本駒込2丁目28-21
 →学内にない外国語雑誌・文献も所蔵されている。ミュージアム見学の場合は入館料がかかる。

②-2 国立国会図書館(NDL):千代田区永田町1丁目10-1
 →学内の本が貸し出されている場合などに利用価値がある。関西アジア館の資料(外国語文献)や科研報告書なども東京に取り寄せてもらえる。

②-3 東京都立図書館:(中央)港区南麻布5丁目7-13
 →日本語書籍はほとんどが開架で見られる。数は少ないが、閉架に中国語文献もある。日曜開館。

②-4 東京国立博物館:台東区上野公園13-9
 →図書室には図版・図録類が所蔵されている。東洋館には青銅器・玉器などの展示がある。常設展は学生証を提示すれば無料で観ることができる。

②-5 その他
→専門図書館としてJETROアジア経済研究所図書館(千葉市美浜区)、博物館として書道博物館(台東区根岸)、根津美術館(港区南青山)、書店として神保町の東方書店・内山書店などで中国史に関する資料・文物に接することができる。また、学内の図書が全て貸し出されている場合(試験前・学期末レポートの締切り直前によくある)、自治体図書館が有効であることも。都内なら、都立図書館のOPACから串刺し検索ができる。


電子資料

③-1 東京大学OPAC及びGaCos
→資料検索+電子データベースへのアクセス(一部は学内利用のみ)。Japan Knowledge、CNKI(中国語論文検索)、DBpia(韓国語論文検索)などが利用できる。なお、Japan Knowledgeから平凡社東洋文庫を閲覧可能。

③-2 CiNii
→論文検索時に利用する。電子化されている論文もあるが、査読誌はあまり公開されていない。書籍収録論文は検索できないので、NDLや『史学雑誌』「回顧と展望」(毎年の第5号)で調べる必要がある。東洋史関係は東洋学文献類目検索もある。
※CiNiiから直接閲覧できる論文は紀要・抄録などが多い。重要な論文が多く掲載される査読誌は電子化されていないものも多いが、各機関のリポジトリに電子ジャーナルがある場合も(『史学雑誌』など→J-stage)。

③-3中国基本古籍庫
→GaCosからアクセスする。漢籍の全文検索ができるが、白文であり、原版との対照もやや不便。検索可能な書籍の数は圧倒的であるから出典調べには便利だが、後で必ず影印にせよ、現代の校訂本にせよ、印刷された本を参照する必要がある。

③-4 中央研究院の各種データベース
歴史語言研究所 学術資源
・本所相關網站:図書館など(TRCCSからも利用できる)
・常用資料庫>漢籍電子文獻資料庫
 →漢籍全文資料庫・・・儒教経典、正史のテキスト
  人文資料庫師生版1.1・・・『文選』など
・本所資料庫>文物圖象研究室資料庫檢索系統:金石文などが検索できる
※暦日変換ツール:兩千年中西曆轉換

③-5 民間オンラインリソース(日本語・中国語)
→電子テキストや簡易な辞書・字書が利用できる。原文打ち込みの手間を省いたり、簡単な調べものをしたりする際には便利だが、底本を明示しない場合や誤字脱字も少なくない。信憑性には常に注意が必要であり、参照箇所を特定した後は印刷物を確認すること。以下のサイトから辿ると便利です。
※睡人亭(山田崇仁氏):リンク:http://www.shuiren.org/links/index-j.html
※やたがらすナビ(中川聡氏):中国学:https://yatanavi.org/toolserch/index.php/search/tag/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%AD%A6


▼注意



トップページ