インドについての論文をまとめようとする学生向けマニュアル(水島:2009 8 月作成)

 

論文の作成

1.論文作成のヒント

論文とは

l  論文とは、何かを描写し、説明するものではなく、議論するものである。

l  したがって、議論がなければ論文とは言えない

しかし、

l  既に議論されていることを議論しても、真似をしていると思われるだけであり、評価されない→したがって、自分の論じようとする問題について、これまでどのような研究が行われているかを知っておかなければならない→『史学雑誌』毎年の5月に出版される「回顧と展望」号、同じく『史学雑誌』の巻末に掲載される論文一覧、英文のものであれば、Indian Economic and Social History Review, Economic and Political Weekly, Modern Asian Studies, Journal of Asian Studies その他の目次、書評などに目を通す

同様に

l  議論したくても、議論の材料(これを史料と呼ぶ)がなければ、勝手に主観で述べているだけとなる→したがって、議論できる材料を見つけ出さなければならない→図書館、文書館調査が必要

l  南アジア関係の資料が現物で所蔵されている関東の図書館としては、東洋文庫、東京大学東洋文化研究所、東京外国語大学、アジア経済研究所などがある。

l  関西では、国立国会図書館関西分館、龍谷大学、京都大学、大阪市立大学などがある

l  所蔵文献、資料に関しては、ウェッブを参照する

l  しかし、オリジナルの史料を所蔵している機関としては、やはりインドの文書館(デリーのNational Archives Nehru Memorial Museum、各州の州立文書館)か、イギリスのBritish LibraryPublic Record OfficeNational Archives が圧倒的である。

l  British Libraryhttp://catalogue.bl.uk/F/?func=file&file_name=login-bl-list)の所蔵資料は日本から簡単に目的の史料をインターネットで調べることができる→そこに掲載されているshelfmark とクレジットカードで複写(スキャン)を依頼することができる(現時点では、1ページあたり20ペンスであり、他に送料など。所要時間は約1ヶ月)

l  その場合、まず、British Library にどのような史料があるかを知ることが必要となる。それには、現地に行くのが手っ取り早いが、むしろインターネットか南アジア研究室に保管されている主要カタログで検索して注文する方が効率的である

l  インターネットで検索する場合、非常に便利なのはイギリスの National Archives の検索サイト(http://www.nationalarchives.gov.uk/search/advanced_search.aspx?j=t)である。そこには、たとえばProceedings と呼ばれる政府の部局別の議事録であれば、それぞれ年代順にshelfmark が掲載されているので、それによってBritish Library のホームページから注文することができる。

l  史料は膨大に存在するので、まずカタログ丹念に見るのが、遠回りのようで最も効率がよい

 

どうしてもロンドンで史料調査を行いたいという学生のためのガイド

(長期留学でなければ、日本で注文して利用した方が効率がよい)

[アクセス] 地下鉄のKings CrossEustonから歩4−5分

1.     入館 :相当大きなバッグの時は入り口でチェックされる。入館料は不要。日曜以外、大体9時半から5時まで。

2.     Reader Pass :正面を少し上った地階右側にRegistrationがあるので、住所を証明できる書類(住所は英語で表記されている方がよいが、日本語を識別できる館員もいるので、何とも言えない

3.     荷物類 :地階右側を進んで少し降り、Lower Groundに行き、一番右側にロッカールームがある。鍵の着いているロッカーの扉の内側に1ポンドコインを入れ、鍵をかける。鍵を開けると1ポンドが戻ってくる。各セクションの部屋の中に入るときは、パソコンの用具、鉛筆、ノート以外は持ち込みが許されないので、ロッカー室に無料で置いてある透明ビニールの袋に必要なものだけを入れて、他はロッカーにしまっておく

4.     入室 :入室時には、毎回Reader Passを提示する

5.     退室 :パソコンはふたを開けて見せる。他の荷物も、全て見せる

6.     資料の検索 :どのような資料も、全て館内のパソコン、もしくは館外のインターネット上のBritish Libraryのウェッブから注文する。しかし、一次資料の多くはパソコン検索が出来ない。壁にある各種カタログをみて(慣れるために、それらのカタログだけを色々見て2日ぐらい過ごした方が有意義であり、最終的には時間の節約になる)、そこに記されたshelfmarkで請求することになる。

7.     館内からの場合は、館内に置かれたパソコンを触る(以下、パソコンの操作方法)

8.     Acceptを押す

9.     Integrated Catalogueという青色で白抜き文字の所をクリック

10.  Log in as a reader pass holderをクリック

11.  一番最初だけ、New users create passwordをクリックして、パスワードを設定する

12.  2回目以降は、Reader Number, Passwordをそれぞれ入力する

13.  一般的な書物の場合は、適当な検索単語を入れて検索すればよい

14.  インド関係の一次資料については、まずほとんどが、この検索では出てこない

15.  パソコンの並んでいるところの側の棚に、多数の分野別カタログがあり、それを使って目的の資料を探し出さないといけない(例:Madras Proceedings)。カタログは、全て2セット(左側と右側)あるので、それを使って探す。カタログに慣れないと、必要な資料を探すことも請求することもできない。

16.  カタログから目的の資料の番号(shelfmark)を見つけ出したらメモしておく

17.  上の方の、Request Listをクリック

18.  下の方のAsia, Pacific and Africa Collectionsをクリック

19.  CatalogueIndia Office Recordsをクリックし、その下のShelfmarkに目的の資料の番号を入力してGo

20.  同様に、必要なものを次々に入力してGo

21.  指定し終わったら、Request listをクリックし、必要な日(Date required)が別の日の場合には、そこをクリックして指定し直す。なお、自分が何をいつの日にリクエストしたかを書いておかないと、記録が消えてしまう

22.  なお、地図に関しては、3階の左奥にあるMapsという部屋にあることが多い

23.  資料の入手 Asia and Africaの場合は、入室して右側のカウンターの一番奥(カウンターに向かって左側)の係員に、自分のパスを提示して出してもらう

24.  一度に見られる資料は3冊程度

25.  資料の返却 :毎回、最後に資料を返却するが、翌日にも見たい場合は、Reserveとかkeepしてくれと頼めば、棚に置いておいてくれる

26.   利用しなくなった場合は、3日間で、自動的に返却される

27.  その他 :自分で弁当を持ち込んだ場合は、ロッカーにしまっておき、食べるときは3階の一番左奥のCotton Roomで食べる。奥の衝立の裏に、珈琲などの自動販売機がある

 

史料を読む際の参考となるもの

l  わからない用語が出てきた場合

Ø  まず極めて頻繁に利用するのは、Wilson’s Glossary。後ろの方にインデックスがあるので、原語がどのようにアルファベット表記されているかの可能性を考えて、いくつか当たってみる

Ø  原語が表記されているので、長母音、短母音などの発音の区別をしておくことも重要

Ø  インターネット上では、シカゴ大学のサイトに Hobson-Jobson がある(http://dsal.uchicago.edu/dictionaries/hobsonjobson/)ので、これも役に立つ

Ø  歴史学、経済学その他の用語については、専門の辞書を用いる

Ø  単に、インド諸語の辞書であれば、シカゴ大学のウェッブにある様々なインド語のデジタル辞書が便利である(http://dsal.uchicago.edu/dictionaries/

l  事項がわからないばあい

Ø  必携は、平凡社の世界百科事典のデジタル版。日本の研究者が総動員されて作成

されている。

Ø  研究室には、インドに関する各種辞典があるので、それらも参考にする

l  地理的な関係がわからない場合

Ø  Schwartzberg が作成した歴史地図が最も役に立ち、詳しい。現物は研究室にあるが、シカゴ大学のウェッブ上(http://dsal.uchicago.edu/)にそのデジタル版がある(http://dsal.uchicago.edu/reference/schwartzberg/

l  地名

Ø  センサスのサイト(http://www.censusindia.gov.in/default.aspx)にある地名検索が使えるが、歴史上の地名の場合、たとえ同じ土地であってもスペルが一致しないことがしばしばあるので、検索するときはいくつもの読みを想像して行う

Ø  インターネット上で検索しうることも多い。Google Earth などは、必見

Ø  インターネット上のシカゴ大学(http://dsal.uchicago.edu/)、コロンビア大学(http://www.columbia.edu/cu/lweb/indiv/southasia/cuvl/)、カリフォルニア大学バークレイ校(http://www.lib.berkeley.edu/SSEAL/SouthAsia/)などの各サイトは、南アジア研究が世界でどのように展開しているかを知る上で重要である

 

論文の書き方

1. 標準的な論文の構成

l  はじめに

l  仮説

Ø  問題意識

Ø  仮説に関する先行研究の紹介(論者、論点、問題点)

l  先行研究に対する本論文の意味

l  方法

Ø  対象(時代、地域、一般性と特殊性)

Ø  史料(所蔵、信憑性、)・・・

l  本論(事例→何を事例によって検証するのか→検証結果からの論点)

Ø  事例1

Ø  事例2

Ø  事例3・・・

l  結論

Ø  検証による仮説の当否

Ø  仮説が検証されたことの意義

Ø  今後の検討課題

 

2.書き方のヒント

l  最初から文章を書かない

l  当面の目的は、論文の構造を作ることであって、文章を増やすことではない

l  論文の構造を造りつつ、どのような論点をどのような材料(史料)でどこに入れるかを考える(できればエクセルなどによって、簡単に行替えできるようにして作業する)

l  です、ますのような文章を作らず、キーワードを入れていく

l  その場合、キーワードを羅列するのではなく、論理関係を明確にするために、キーワード相互の関係を矢印で入れておく(できれば、フローチャートのような図を作成しておくと論理が明確になる)

l  構造ができれば、あとは、キーワードを見ながら文章を入れていくだけ。常に全体の構造を考えながら文章を作成し、文章を書いている途中で全体の構造を変える方がよいというように考えた場合には、フローチャートを作り替えつつ、文章を記していく

l  その際、「はじめに」から順に書いていく必要はない

l  どこから始めればわからない場合には、関連する論文の抜き書き、史料の抜き書きを単純作業として進める

l  論文を読む場合も、何が議論され、どのような結論となっているかに留意する

 

3.史料、統計分析のヒント

l  何を議論するための史料かを考えて引用する

l  統計は、議論を直接補強する、あるいは検証する数値が単純な形で表示されるようにする

l  引用した際は、そのままにせず、史料内容を数行でまとめておく。その場合、A B か、○か×かという風に、対照的な議論にして史料ごとに論点を決着していくようにすると、議論がわかりやすい。

 

−以上−

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