世紀末の詩からベルンシュタインへ

 前々回の「世紀末の詩」のところでふれた『ローザ・ルクセンブルク』について,山森氏が掲示板に感想の書き込みをしてくれた.まったく同じ映画を見ても,記憶の貯蔵庫のなかに沈殿していく映像は,見た人によって様々だ,とつくづく思った.僕の方は,1899年12月31日の社民党の例のパーティで,ローザが持っていたと山森氏が指摘した日本風の扇子については,まったく忘れていた.そのかわりによく覚えていたのは,彼女がベルンシュタインから踊りを誘われて断ったうえに,彼のことを日和見主義と批判したことの方だった.第一次大戦中の社会民主主義者のなかで,ベルンシュタインは,数少ない戦争反対者であったことを知っていたので,彼に対して修正主義者という通俗的なレッテルを貼ることには心理的抵抗があったのであろう.

 ところで,押入の奥から当時(1987年)のパンフレットを見つけた.採録シナリオの該当箇所には,以下のようなト書きが書かれてあった.

●仮装パーティ−−回想

1900年を祝って,社会民主党の党員たちが,思い思いの民族衣装を身につけ集まっている. … ローザが歩いてくる.ローザは,日本髪のような髪を結い,和服を着て,扇子を持っている. … ベルンシュタインがローザの方にやって来る.表情を強ばらせるローザ. … ローザにすげなく断られたベルンシュタイン,唖然と立ちつくしている. … 

[1999/2/19]

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