護送船団方式

 護送船団(convoy)方式という言葉を僕が最初に知ったのは,今から十数年前,イギリスの年金改革(確か所得比例年金を導入するときだったでしょうか)をめぐる論争について勉強していたときです.社会保障制度は最も弱い立場の人に合わせて設計されなければならない,というような文脈で,この言葉が用いられていたように記憶しています.護送船団というそれまで馴染んでいなかった,この軍隊用語の響きになぜか惹かれ,乏しい僕の語彙のなかにこの言葉が追加されました.

 ところが金融自由化の流れのなかで,日本でも,90年代に入ったころから,言葉を新聞紙上でこのよく見かけるようになりました.しばらくは社会政策の原理だと思っていたこの言葉が,じつは日本では,金融機関をつぶさないための経済政策の重要原理であるということを知るようになったときは,ちょっとした驚きでした.

 ほんらい自由競争が行なわれるべきところで護送船団方式が採用され,ほんらい護送船団方式が採用されるべきところでは自由競争が行なわれてきた,というのが,これまでの日本の現実だったようです.[1998/9/2]

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