タイタニックから精神現象学へ

 前回のコラムを読んだこのサイトの「読者」(この表現適当だろうか?)から,「映画ばかり見ているのではないか」とか「東大は暇なんだね」と言われたので,少しは勉強もしていることを示そうと思って,最近出た長谷川宏訳の『精神現象学』(作品社)のことでも書こうかと思っていたところ,今朝の『朝日』の書評欄に,中大に勤めていたとき,よくカラオケに一緒に行った木田元さんが,すでに,この翻訳のことを書いていて,僕が書こうと思っていたことの大半はすでに書かれてしまいました.

 と,ここで終わるのも癪だから,少し書きます.長谷川宏さんの翻訳に最初に出遭ったのは,ハーバーマスの『イデオロギーとしての技術と科学』でした.このときは,格別翻訳がうまいとは思わなかったのですが,その後に出されたデスマス調のヘーゲル訳はいたく気に入りました.ですから,新聞でこの本の広告を見つけると,翌日すぐに生協に買いに行きました.通読はまだしていないのですが,ぱらぱら拾い読みしたところでは,確かに読みやすい.学生時代に樫山欽四郎−−たしか樫山文枝さんのお父さん−−訳の『精神現象学』で挫折した苦い経験を思い出して,もっと早く出ていればよかったのにと愚痴をこぼしたくなりました.長谷川さんには次はぜひとも『法哲学』の翻訳に挑戦してもらいたいものです.[1998/4/5]

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