トップページへ移動

モスクワ・ペテルブルグの図書館

(2003年10月現在)


 ロシア文学・文化を研究する以上、現地ロシアの図書館にある資料を利用することが非常に大きな意味を持つのは言うまでもありません。しかし、ロシアの図書館のほとんどは、図書が出てくるまでに長い時間待たされたり、所によってはコピーに数日を要したり、辞書など自分の本が持ち込めなかったり、出入りにいちいち手続きが必要だったり、国立図書館のみならず大学などでもほとんどの図書館が全て閉架式であったりするなど、日本の図書館に慣れてしまうと非常に使いづらいものであることも事実です。特に短期滞在でロシアに資料収集に来られる場合などは、そうしたことを念頭に置いて、余裕を持って日程を組まれることをお勧めします。

 なお、本ページ執筆の際には、ターニャさん(日本人。ロシア史を専攻されています)のHP「ロシア雑記帳」(http://homepage2.nifty.com/~takako~tanya/index.html)の中の「ライブラリー」の項にある図書館案内を参照させていただきました。独自の視点から書かれている上、文句ばかり言っている私の紹介と違い、図書館に対する愛情の溢れた文章ですので、ぜひ併せてご覧ください。


目次

モスクワの図書館

  1. ロシア国立図書館(通称:レーニン図書館)Российская государственная библиотека
  2. 書籍博物館 НИО редких книг (Музей Книги)
  3. ヒムキ(レーニン図書館学位論文・新聞部) Отдел газет и отдел диссертаций
  4. 歴史図書館 Федеральное государственное учреждение культуры Государственная публичная историческая библиотека России (ГПИБ России)
  5. イニオン Библиотека Института научной информации по общественным наукам (ИНИОН) РАН
  6. 外国文献図書館 Всероссийская государственная библиотека иностранной литературы им. М.И. Рудомино (ВГБИЛ)
  7. 芸術図書館 Российская государственная библиотека по искусству
  8. モスクワ大学付属図書館
  9. ロシア国立人文大学(РГГУ)付属図書館

ペテルブルクの図書館

  1. ロシア国民図書館(通称:シチェドリン図書館、公共図書館) Российская национальная библиотека
  2. プーシキンスキー・ドーム図書館 Библиотека Института русской литературы
  3. 科学アカデミー図書館 Библиотека Российской Академии Наук

モスクワの図書館

 モスクワでは、「レーニン図書館の閉鎖」という半ば社会問題のような状況が数年間にわたって続き、他の様々な図書館が代替として利用されていたのですが、レーニン図書館復旧のめどがようやくついた今となっては、この図書館(およびその分館である書籍博物館、ヒムキ)を使えばとりあえずの用は足りる、という方向に向かっていくと思われます。他の図書館は、レーニン図書館にない資料及びまだ開いていない部分の資料が目当てである場合、あるいは何か掘り出し物を求めている場合など、「オプション」として利用すればいいでしょう。



ロシア国立図書館(通称:レーニン図書館)Российская государственная библиотека
ул. Воздвиженка, 3/5; Метро "Арбатская", "Александровский сад", "Боровицкая", "Библиотека им. В.И.Ленина"
Пн-Пт: 9-20, Сб: 9-19,
毎月最終月曜は清掃日のため休館
http://www.rsl.ru/

 永久に続くのではないかと思われていた改装工事にもようやく一つのめどがついたようで、2003年10月より、かなりの蔵書が閲覧できるようになった(→http://www.rsl.ru/tot.asp?izm.htmを参照)。言うまでもなく、規模から言っても所蔵する資料の数から言ってもロシア最大の図書館。ただし、ロシア語文献、特に旧ソ連の文献に関しては相当数の蔵書を誇る一方、冷戦期の文化政策を反映してか、旧西側など外国の文献は必ずしもよく揃っているとはいえない(1960年代の英語文献でもマイクロフィルムでしか参照できない場合があるなど、妙なことが多い)。

 パスポートさえあれば旅行者でも簡単に入館証を作ることができ、また外国人には誰であれ、ロシア人の博士号所有者などと同じ閲覧室が割り当てられるというのがうれしいところ(2004年8月追加――2004年8月現在、このシステムは既に廃止されたようである)。コピーセンターはいくつかあり、混み具合にも寄るが、いずれも比較的迅速にやってくれる(普通の書籍なら一枚3ルーブル50コペイカ)。また、マイクロフィルムのコーナーもあり、コピーも受け付けているが、資料が出てくるのは注文した翌日(その日が金曜ないし土曜の場合は次の月曜)の夕方4時以降になる。マイクロフィルムを扱う地下のコピーセンターの注文受付が4時半までであることを考えると、短期滞在者には不便この上ない。

 なお、明らかに不完全なものであるが、インターネット上で蔵書検索をすることも可能である。詳しくは上記の図書館のホームページを参照。




書籍博物館 НИО редких книг (Музей Книги)
ул. Воздвиженка, 3, корпус "Г" (3-й подъезд, 4-й этаж); Метро "Арбатская", "Александровский сад", "Боровицкая", "Библиотека им. В.И.Ленина"
Пн-Пт: 10-17, Сб: 10-16,
毎月最終月曜は清掃日のため休館
http://www.rsl.ru/tot.asp?7_5.htm

 レーニン図書館の分館であり、レーニン図書館の入館証があれば利用できる。グーテンベルグの活版印刷本や『死せる魂』初版本などが並んでいる展示室を抜けると、その奥が図書室になっている。カード目録に書かれた書誌情報を係員に渡せば、10分から20分くらいで図書が出てくる。18世紀から20世紀初めの書籍を数多く所蔵しており、この時代の文学・文化を専門にしているなら、ここは絶対に外せないだろう。閲覧したことはないが、17世紀以前の本もかなりあるようだ。18世紀の本などでも現物を素手でぽんと渡されるので、博物館とは言いながらメインテナンスは大丈夫なのかと心配になってしまう。

 コピーはものによってできたりできなかったりする。19世紀後半以降の本は概ね可能なようだが、19世紀前半から18世紀あたりになると、さすがに本の保存状態を気遣っているようで、マイクロフィルムがある場合にのみ複写が可能。




ヒムキ(レーニン図書館学位論文・新聞部) Отдел газет и отдел диссертаций
г. Химки, ул. Библиотечная, 15; Метро "Речной вокзал" (駅前から出ている乗合バスNo.344-К あるいは368-Кに乗り、停留所Библиотечная улицаで降りるとすぐ前)
Пн-Сб: 9-18, 毎月最終月曜は清掃日のため休館
http://www.rsl.ru/tot.asp?7_18.htm (新聞部)
http://www.rsl.ru/tot.asp?7_19.htm (学位論文部)

 これもレーニン図書館の分館で、学位論文、新聞を所蔵する。入館は、レーニン図書館の入館証があれば大丈夫。かつては印刷物を一切持ち込めなかったらしいが(自分のメモなどでも不可だったらしい。入って一体何をしろというのか)、現在はメモやノート、プリント程度なら持ちこみ可。資料請求の一般受付は2時などかなり早い時間に閉まるのだが、外国人(レーニン図書館閲覧室No.1の入館証を持っている人)に対しては待遇がよく、受付終了後でも行ってその日に資料が閲覧できることがある。ただし論文丸ごとのコピーは一日ではできないので、後日また来なくてはならない。

 「ヒムキ」はモスクワ郊外の地名で、ここは既にモスクワ市ではない。とにかく、とてつもなく立地条件の悪いところである。 




歴史図書館 Федеральное государственное учреждение культуры Государственная публичная историческая библиотека России (ГПИБ России)
Старосадский переулок 9, стр. 1; Метро "Китай-город"
Пн-Сб: 9-20, Вс: 10-18,
祝日、毎月最終金曜の清掃日は休館。また夏季(6−9月)には開館時間に変更あり(HPで確認してください)
http://www.shpl.ru/

 入館証を作るには、大学などロシア国内の所属機関が発行した紹介状が必要。レーニン図書館が閉館していた期間は、代替施設として人文系の多くの学生に利用されていた。原則として、歴史を学ぶ人のための利便が図られた図書館。最初に申告すれば、辞書など自分の本も持ちこみ可。レーニン図書館の目録にない本もかなり所蔵している。コピーはかなり不便で、時間がかかる(場合によっては数日)上、フロントページならびに目次のページはコピー不可という規則がある。

 この図書館は、歴史を専攻しているか否かによって割り当てられる閲覧室が異なってくる。入館証を作る際に、文学など歴史以外の分野を「専門」として申告すると、一般閲覧室という大きな部屋が割り当てられるが、時期によっては長い列が出来ていることが多く(特に学期末)、あまり使いやすいところではない。私はロシア史研究者を名乗って利用している。ただ、レーニン図書館がかなり使えるようになった今後はまた事情も違ってくるかもしれない。




イニオン Библиотека Института научной информации по общественным наукам (ИНИОН) РАН
Нахимовский просп.15/21; Метро "Профсоюзная"
Пн-Пт: 10-17

http://www.inion.ru

 ロシア科学アカデミーの図書館。何と言っても、鞄など自分の荷物を持ち込めるという点が最大のメリットである。しかし、科学アカデミーの深刻な財政事情を反映して、この図書館は90年代のある時期以降、外国の図書の購入をやめてしまった。また、古い資料でもマイクロフィルム化されているものは少ない(つまり、古くて状態の悪い資料は複写不可ということ)。コピーもかなり不便で、その日に出来上がってくることはまずない。ここも、入館証を作る際には紹介状が必要。




外国文献図書館 Всероссийская государственная библиотека иностранной литературы им. М.И. Рудомино (ВГБИЛ)
Николоямская 1; Метро "Китай-город", "Таганская"
9−5月 Пн-Пт: 10.00-19.30, Сб-Вс: 10.00-17.30
6−8月 Пн-Пт: 10.00-19.30, Сб: 10.00-17.30
毎月最終木曜は清掃日のため休館
http://www.libfl.ru

 外国の図書が多く参照できるという、ロシア在住者には貴重な図書館。ただし、例えばロシア文学の中の特定分野に関する欧米の最新の研究など、あまり専門的なものを求めて行くと、肩透かしを食らうかもしれない。4階には日本大使館文化広報部が置かれており、事典類から一般の文芸書、さらには雑誌や漫画に至る日本の図書を読むことができる。ここの開室時間は月-金が10時−19時半、土曜が12時―17時半。日曜は休み。




芸術図書館 Российская государственная библиотека по искусству
Большая Дмитровка, 8/1; Метро "Театральная", "Охотный Ряд", "Площадь Революции"
http://www.liart.ru/
 

主に美術関連の資料を集めた図書館。



モスクワ大学付属図書館

 原則的に、モスクワ大学の学生であることが利用資格であり、私は利用したことがない。が、非常に充実した図書館であるという話はよく耳にする。



ロシア国立人文大学(РГГУ)付属図書館

 РГГУの教官も「とても酷い図書館」と言うくらいの図書館であり、所蔵図書が乏しいのみならず、入館がやたらと厳しい上、学生のアルバイトと思われる館員の態度は無礼極まりない。РГГУの学生でなければ入館証が作れないが、まあ行くメリットは全くない。РГГУの学生であっても、新聞のバックナンバーが読みたい時にでも行けば十分。ただし、РГГУの大学院生には図書の館外持ち出しが許されているため、一般的な図書を手元にしばらく置いておきたいときは良いかもしれない。




ペテルブルクの図書館

 モスクワはロシアの首都ですが、だからといって、ペテルブルクの図書館がモスクワの図書館と比べると全く見劣りしてしまうような存在かといえば、必ずしもそうではありません。確かに町の規模が大きく、情報一般が集中しているのはモスクワなのですが、こと文学・文化といった領域に関しては、モスクワとペテルブルクでほぼ拮抗しているような印象を受けます。図書館もその例外ではありません。また、帝政期の資料の中にはモスクワの図書館にないものも多く、特に19世紀から20世紀初頭を専門にしている場合は、ペテルブルクのほうがむしろ重要である場合が多いとすら言えます。




ロシア国民図書館(通称:シチェドリン図書館、公共図書館) Российская национальная библиотека
旧館:ул. Садовая, 18; Метро "Гостиный двор", "Невский проспект"
新館:Московский пр., 165; Метро "Парк победы"
http://www.nlr.ru

 ペテルブルク最大の図書館。モスクワのレーニン図書館と同じく、パスポートを提示すれば旅行者でも入館証が作れるシステムであり、紹介状などは必要ない。(2004年4月追加――ただし、雑誌フォンドやゼームスキーフォンドなど、館内の部門によっては紹介状が要求されるところもあるので、注意が必要である) 旧館は、狭い敷地を目一杯使った迷路のような構造を持つ古い建物だが、新館は、「ロシアの図書館」へのイメージを根本から塗り替える、モダンな建物。

 この図書館は、現在移転工事が行われているため、資料が旧館と新館に分散しており、その意味で様々な不便が付きまとう。例えば、マイクロフィルムの注文、閲覧は新館だが、マイクロフィルムの印刷の注文は旧館で行う。仕上がりには、建物が分かれていることもあり、今のところ早くても1週間かかるようである。普通の図書も両館にかなり分散している。

 少し前までは、1930年代以前の本が館内のカード目録にないため、自分で別の本などを見て書誌情報を調べ、請求するというシステムであったらしい。しかし今では、館内の蔵書の書誌情報を記したカードは全てスキャナで取り込まれており、インターネットを通した蔵書検索が可能である。館内にもコンピュータ室(レーニンスキー・ザール)が設けられており、図書の検索ができる。図書館の電化を目の当たりにして、レーニン像もどこか感慨深げである。もちろん、カード目録も従来どおり利用できる。資料が出てくるのはほとんどの場合請求の翌日である。(2004年5月追加――資料は、平日は夕方5時、土日は4時までに請求すれば、その日のうち(2時間後)に見ることができる。この時間を越えると、資料が出てくるのは翌日となる。)

 コピーが非常に迅速なのが、この図書館のすばらしいところである。たいていはその場でやってくれるし、特に新館のコピーセンターは数百ページの本でも10-20分ほどで丸ごとコピーしてくれる。 上に挙げた旧館、新館の他にも、この図書館には様々な分館があるが、ほとんどの用はこの二つで足りるだろう。他の分館に関しては上記の図書館HPを参照。

 



プーシキンスキー・ドーム図書館 Библиотека Института русской литературы
наб. Макарова; Метро "Василиеостровская" (ただし地下鉄駅からはかなり遠い。Университет方面行きのバスか乗合バスを利用するとよい)
http://www.pushkinhouse.spb.ru/structure/unit9.shtml

 ロシア科学アカデミー・ロシア文学研究所(通称:プーシキンスキー・ドーム)の中にある図書館。この研究所所属でない人が利用する場合は、自分の所属機関が発行した紹介状が必要。紹介状を渡すと、同じ建物の2階に部屋を持っている担当者のサインをもらってくるよう言われる。ただし、入館にあたって何かが求められるわけではなく、カード目録を見るくらいならおそらく何も必要ではない。旅行者でも、普段から来ているような顔で澄ましてカードをめくっていればいい。良くも悪くもアバウトなところである。

 本は、請求すればすぐその場で出してくれる。閲覧室は、通常の百科事典や各時代のロシア語辞典のみならず、作家事典をはじめとする数々の文学関連の事典や、有名作家の全集などが並び、ロシア文学を研究するための利便が最高度に図られたところである。コピーも、数ページならその場でお金を払ってすぐやってくれる。ただ、資料請求の受付時間が4時まで、閲覧室が開いているのが5時までとかなり早いので、できるだけ早めに行ったほうが良い。




科学アカデミー図書館 Библиотека Российской Академии Наук
Биржевая линия, 1; 交通機関に関してはプーシキン・ドーム図書館と同様
http://ban.ru/

 有名なところですが、私は利用したことがなく、知り合いで利用したという人もあまり聞きません…。どうなんでしょう?




文責:鳥山祐介