第5班天理大学付属天理図書館予備調査報告(2001/7/11-12)


調査参加者:高橋公明・Keneeth Robinson・橋本 雄
調査日程:2001年7月11日・12日
調査目的:2002年正月の調査に向けての予備調査
調査協力者:藤田明良氏(村井科研4班)
以下、今回の予備調査で閲覧した文献・古地図類のリストを掲げ(〔 〕内 は請求番号)、参考までに簡単な所見コメントを付します。(残念ながら今回 の予備調査では「混一疆理歴代国都図」系の「大明国図」〔292・2−イ29〕は 見られませんでした。)

≪中国図≫
広輿図〔292・2―イ31〕
全4冊(巻一之上・下、巻二之上・下)構成。
序文などは以下の通り:
・広輿図序(嘉靖辛酉夏日浙江布政使胡松識)
・広輿図叙(1)(嘉靖辛酉秋七月望日餘姚芝南山人徐九皐叙)
・広輿図叙(2)(嘉靖丙寅夏五月巡撫山東地方戸部右侍郎兼都察院右僉都御 史霍冀撰)
・刻広輿図叙(嘉靖丙寅夏巡按山東監察御史韓君恩識)
グリッド線(経緯網)が図面いっぱいに引かれている、全国図+省別図。
東アジア地域におけるグリッド図の魁?(→18世紀朝鮮でのグリッド線図 登場?)
輿地総図:朝鮮は半島ではない。日本・琉球は地形なし。
山東輿図:徐福島あり。
巻二の途中から「九辺輿図」(辺鎮を中心に描く、軍事情報満載)、
「海運図」、「遭運図」などの貴重な地図が入る。
末尾部分に、「朝鮮図」(島は巨済、済州、珍島、群山島のみ)「東南海 夷総図」「西南海夷総図」「安南図」「西域図」「朔(ママ)漠図」「琉球図」 (絵画的、小琉球あり)「日本図」(周辺6個所に、西北に朝鮮界、北に月氏 国界、東北に矮人国界、東南に女国界、南に琉球国界、西南に福建界とある) 「華夷総図」を収める。
天下輿地図〔292・2―タ31〕
朱方印「中山氏蔵書之記」「天理図書館印」、付箋「寄贈/中山正喜氏」。
以下の地図には多くこのような印記・付箋あり。中山正喜氏は天理教主二 代目。
作成年代?=「乾隆丁卯孟冬」(1747年)。
左半分は中国、右上方に朝鮮半島。朝鮮の北の境界は鳳皇城と白頭山、南 方は珍島、済州、南海、巨済の島々、それに続いて対馬島、日本国、琉球国、 台湾、さらに占城国、真ロウ国(カンボジア)、センラ国(タイ)、ジャワ 国、三仏斉国などが海の中に描かれる。  
皇朝画絵輿地全図〔292・2―タ31〕
咸豊十年庚申孟夏、陳大方が画したもの。
姪(てつ)「金鰲」(=韓階選か:Robinson氏御教示)の跋文あり。
清代の中国図。周辺が赤く着色され、精密。通常、古い中国図では遼東半島はいいかげんだが、この図はかなり正確。対馬あり。
福建省会城市全図〔292・2―タ29〕
内題が標記タイトル。外題は「福建省城域図」。
「保甲総局委員胡東海謹絵」とあるが、年紀なし。
地図横に、四至を示す矢印がある。都市の道は、北西から南東へ向かう道 と、北東から南西に向かう道が交差。天后宮、巡撫衙門あり。
古今地輿全図〔292・2―タ33〕
ユニークな「絵地図」。想像上の島々も描く(長人国・女人国など)。
「光緒乙酉桃月重修」(1885年)とあり。

≪朝鮮図≫
朝鮮古地図〔292・1―タ71〕
「天下図」アルバムの典型例(環状の地図、18〜19世紀に朝鮮で盛んに作 られた)。
内容構成は、「天下図」「中国図」「無題(朝鮮全図)」(対馬を含む12の島)「京畿道」「忠清道」「全羅道」(島多い)「慶尚道」(対馬を含め、島が多い)「江原道」(鬱陵島の南に于山島)「咸鏡道」(白頭山)「黄海道」「日本国全図」(南が紙面の上)「琉球国図」(南が紙面の上)
Ledyard氏も指摘していることだが、日本国図・琉球国図などは『海東諸 国紀』よりも「後退」「退化」している。
輿地図〔292・1―タ265〕
一帙一冊のなかに八枚の大地図がそれぞれに畳み込まれている。
内容構成は、「咸北」(白頭山のやや南に立碑とあり、定界碑のこと) 「咸南」「平安」「黄海」「畿湖(京畿附忠清道)」「江原」「慶尚」「全 羅」。(京畿道から始まらないところが面白い)。また、各道が歴史的にいか なる地域であったのか簡潔に説明している。とくに北方は興味深い。
全国図は存在しないが、鄭尚驥(1678〜1752)型の地図ではないかと考えら れる。この鄭尚驥とは、在野の実学者で科挙を受けず、最初の実測図を作った ことで知られる人物である。
北方国境地帯がリアルに描かれていることも従来の朝鮮古地図との相違点。
朝鮮地方図〔292・1―タ 211〕
一帙に14冊の折り本。一枚ずつ横長に拡がるもの。
北から横断型(横長の短冊型)に切り取るように朝鮮全図が描いてある。 つまり、それを広い机の上で少しずつ重ねるように一冊(一枚)目から順次並 べていくと、朝鮮国全図になるという仕組み。
パノラマ型で、道程の目盛もなく、金正浩「大東輿地図」の簡易版、と いったところか。
東輿図〔292・1―タ23〕
金正浩の「青丘図」型地図(青丘図とは大東輿地図にやや先駆けて作られ た、現代の道路マップ型地図帳のこと)。ただし、普通の青丘図が28層×23版 なのに対して、この東輿図は28層×22版で構成されている。
彩色あり。かなり新しい手写本と思われる。(青丘図は写本が多く、大東 輿地図は版本が多い。)
参考文献:『青丘全図』(乾・坤)、『朝鮮学報』124・125輯。
*まだ朝鮮学会で抜刷りが購入できるかもしれません。非常にいいものですよ。
朝鮮八道古図〔292・1―チ1〕
「岡田真之蔵書」朱印一顆あり。
一鋪の巻軸物。『東国輿地勝覧』型の簡素な色つき(淡彩色)地図。ただ し『勝覧』よりは地理的情報をやや詳しく載せている。
内容構成は(右から左へ)「総図」「京畿」「江原」「咸鏡」「平安」 「黄海」「忠清」「慶尚」「全羅」。もっともノーマルな構成。

≪文献類≫
漂人問答〔292―217〕
済州島に派遣された承旨李演(ほんとは土扁)による漂流人への聞き書き など。
顕宗丁未年(1667年)10月。
漂流人は福建省の官商林寅、観魯勝、陳得。5月10日に出発し、日本の 「籠仔紗其」に向かう。途中で風のため漂流する。23夜の後、済州島に流れ 着く。積み荷は、白糖・氷糖が20万斤、鹿皮2万6千張、薬材・蘇木各5千 余斤など。
問答は、約20年前の明末の永暦帝、鄭成功などについて詳しくなされる。
巻末の漢詩は漂流民たちとの交歓か? 時間がなく、確認できず。
松浦章氏が論文の中で引用していると仄聞したが、未確認。
〔以上、文責:高橋公明+橋本雄〕

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