Date:2001/9/26
From:藤田明良
Subject:[phase817 409] 台湾レポート
9月20〜25日、台湾に出かけた。台北で22−23日に開催された「日本留学フェア」
で、勤務校を宣伝するのが用件だったが、航空チケット手配の都合で出来た前後1日
ずつの空時間を利用して、来年度の四班台湾調査の予備調査を実施した。以下はその
報告である。
1.台北大水害
本件の前に、日本ではほとんど報道されていない大災害について触れておく。9月前
半、沖縄辺りを迷走していた台風16号は、その後、台湾北部に停滞し、16〜18日の3
日間で年間総雨量の3分の1にあたる1000ミリの雨を降らせた。台北市や基隆市では
全戸の半分以上が浸水や停電し、死者100人以上を出す数十年に一度の大水害とな
る。地下4階構造を持つ台北火站をはじめ、地下の駅や線路はほとんどが水没、中心
部の鉄道やMRT(地下鉄)はストップし、復旧は数ヶ月かかるといわれている。台
湾のメディアは、「911驚爆全球(同時多発テロ)」ではなく、この水害を連日
トップで報道している。市内の移動は、渋滞のさらなる悪化を我慢すれば、バスやタ
クシーを利用できる。「留学フェア」の会場は最新のコンベンションセンターだが、
地下の電源設備がやられて、エアコンやエレベーターが停止し蒸風呂状態だった。
2.台湾大学図書館
21日は国立台湾大学図書館を訪問。同大学では2年前に総合図書館を建設して、各学
部・研究所に分散していた図書の集中管理を進めている。今回は貴重書を扱う「特蔵
組」を訪ねる。股長(責任者)の洪淑芬さんは、天理図書館等で研修した経験があり
日本語も堪能。彼女の案内で来客用の展示室や収蔵庫を見学する。旧台北帝国大学か
ら引き継いだものをはじめ、漢籍・古地図・日本古典・欧文などの貴重書は、大部分
がここに集められている。だが、旧蔵所によって分類方法などがまちまちで、人手不
足もあって、まだ相当部分が未整理とのこと。
ちょうど来館していた日蘭交渉史の八尾啓介さん(北九州私立大学)も、古い蔵書
カードの整理を、調査の傍ら引き受けていた。八尾さんの目的は、大鳥文庫の蘭書コ
レクション。大鳥文庫は、キリスト教関係が天理大学に、東西交渉史関係が台湾大学
に入った。前日は、17世紀半ばに福建から北京を往復したオランダ使節の見聞禄を調
査。挿絵には当時の媽祖像も描かれていたという。
昼食後、一般書庫や地下の出版センターなども見学、最後に3階の「校史展示室」に
行く。旧台北帝大時代から現在に至る歴史資料が展示。戦後の留任日本人教官の名簿
には、岩生成一氏や小葉田淳氏の名があった。図書館を出た後は、南天書局など大学
付近の書店巡り。
3.中央研究院
24日に中央研究院に劉序楓さんを訪ねる。所在地の南港区は洪水の被害が大きかった
場所の一つ。研究院も敷地内を流れる川が氾濫し、地下の電気施設がダウン、最先端
の科学研究が10年は遅れると報道されていた。劉さんの中山人文社会科学研究所も、
停電で10日間近くパソコンが動かず仕事にならなかったが、この日やっと電気が通じ
たという。同研究所をはじめ、民族学研究所や台湾史研究所等の図書館を見学。台湾
史研究所は2年前に新設されたばかりという。中には浸水した地下書庫の文献への対
応に追われているところもあった。
前近代の史籍が豊富なのは歴史言語系研究所の傅斯年図書館。かつて北京から持って
きたコレクションがその中心であり、全てがインターネットで検索が可能で、一部は
写真が公開されている。今回の被害はエレベーターだけで、日常どおり開館してい
た。白手袋と和紙のマスクを装着し、善本室から『日本一鑑』と『海東諸国記』の鈔
本(写本)を出してもらう。『日本一鑑』は7種の写本があるが、日本の図書館でも
お目にかかる民国28(1939)年版の影印本の原本と同系統のものが6種、それよりさ
らに古いと思われる別系統の写本が1種あった。『海東諸国記』は東大史料本とは別
系統の南波松太郎所蔵本(岩波文庫の田中健夫氏の解説参照)の写本で、東方文化事
業総委員会(1925年北京に設立、東方文化学院の前身)の所蔵図書印が押してある。
4.倭寇班的談義?
図書館の閉館後、バスで松山区に向かう。お目当ての松山天后宮は水害で閉館中。
門前の夜市は水損品のバーゲンセールだが、いつもの賑わいはない。客の入りの良い
屋台に陣取り、臭豆腐や担仔麺をつつく。劉さんが別の店から調達してきたビールや
紹興酒を、発泡スチロールのどんぶりですすりつつ、来年の調査方針について打ち合
せた。記憶が正しければ、そこで出た話は以下の通り。
1)現地調査の基本ラインは金門−澎湖−台南。順番は現地の旅行社と相談。
2)台北は、台大図書館や中央研究院が中心。定番の名所旧跡はオプションで。
3)台湾側の研究者とセッションの場を持つ。候補者=傅朝卿(成功大学:建築・彫
刻史)、石万寿(同:媽祖研究)、劉文三(台南在住の彫刻家:神像研究)、周徳蘭
(中央研究院:華僑史)、曹永和(同、アジア交流史)、徐興慶(台湾大学:日中交
流史)、など。
4)実施時期は10〜12月の間、1週間前後。
Home