客員教授講演会  

 2003年度、当韓国朝鮮文化研究室では、權斗煥教授(ソウル大学校国語国文学科)を客員教授としてお招きし、1年間に渡り教鞭をとっていただきました。
 このたび權教授は任期を終えられ、2月末に韓国に帰国されます。つきましては、下記のとおり講演会を開催します。講演は、東京大学に所蔵されている説話集(写本)にもとづくもので、主としてご専門の韓国古典文学の観点からの最新の研究発表となりますが、他分野の方々にも興味深い講演となるものと期待されます。  
  ご多忙中とは存じますが、お誘いあわせのうえ、ぜひご参席くださいますよう、お願い申し上げます。

題目 「小倉文庫本『酉年工夫』について」  (講演は韓国語でおこなわれます)
日時 2003年1月28日(水) 午後5時〜7時     
※受付は午後4時半から
会場 東京大学本郷キャンパス 法文2号館2階 教官談話室  
※丸ノ内線・大江戸線本郷三丁目駅より徒歩8分。正門から入り銀杏並木の右側。
※なお講演会の終了後、ささやかながら權先生の送別会を一席設けたいとおもいます。そちらも合わせてご参加ください。

内容要約  
  『酉年工夫』は雨森芳洲(1668-1755)が、1703〜1705年まで朝鮮に滞在していたときに、『交隣須知』などとともに著述した様々な本のうちの一つである。書名は雨森の生存当時から広く知られていたが、本の所在はもちろん、その内容の片鱗すら知ることができなかった。しかし近年、東京大の福井玲先生が小倉文庫(東京大学文学部)中の漢籍と分類された本を再調査・整理していたところ、『酉年工夫』1冊が残っているという事実を確認したのは、実に幸いなことだった。  
  この本は、雨森の手沢本ではないものの、雨森の時代から170年後に釜山にわたった中村庄次郎が1876年に筆写した本であると付記されており、比較的原本に近い異本としての資料的価値を認めることができる。  
  またこの本は、(1)日本人が朝鮮の説話を蒐集し編纂した最初の著述であるという点、(2)説話文学の属性上、ここに収録された説話は当時の朝鮮人の人情と世態をもっともよく反映しているであろうという点、(3)また18世紀初めの朝鮮語の現実音はもちろん、それ以前数世紀にわたる朝鮮語の変化過程を反映しているであろうという点、(4)18世紀初頭から19世紀末までの日本人が行なった朝鮮語教育と研究の一断面を如実に証言している点等に注目する必要のある文献である。

問い合わせ先 : 東京大学大学院人文社会系研究科 韓国朝鮮文化研究室

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