インターネット − 読む・学ぶ・調べる』(毎日新聞社、2001年3月
Internet Life 03

近藤 和彦

2001. 4. 2 更新



  検索と発信、そして自分の頭で考えるという3つの点について書きます。

1.ウェブ上に無限にひろがるデジタル情報を検索しようという場合、最初はだれでもヤフーにあたってみたのではないでしょうか。そして、めざす情報とほとんど関係のない「ノイズ」のあまりの多さに悩まされたり、逆に、ないはずのない目標のサイトにどうしても行き当たらず、途方に暮れたり、という経験をおもちでしょう。わたしも、そういう悩ましい思いをくりかえしました。知る人のみぞ知るODiN(オーディン)、そしてGoogle(グーグル)に出あうまでは。

  ODiNとは NTTの研究所が実験のために運用している検索エンジンで、素人のわたしにそのノウハウは説明できません。ただ、あまりに有能・迅速・的確で、もはや他の検索手段は使えません。これはしかし、今のところ日本のドメインに限られているようで、グローバルに検索したいときには、Google です。こちらも「インターネットから階層性を除いた」有能な検索エンジンで、特許申請中の PageRank方式により重要なページを優先しています。何語でも検索でき、速い!

  図書館の本や雑誌を捜すときには Webcat、新刊書の書誌ならアマゾンが頼りになります。JSTORなど、いわゆるオンライン・ジャーナルのデータベースも、めざましく発展途上です。要するに、これまで図書館で手間をかけて調べていたのと同じことを自分のPCで、しかも無限のキーワード検索として数秒で実行し、必要な部分を開いてコピーもできる。夢のような現実です。

2.自分のウェブサイトを開設してほぼ1年をすぎ、おもしろい経験を重ねています。インターネットという公共圏へのかかわりが、性に合っているのかもしれません。ただ、個人の権利としての著作権とインターネットの公共性との間には、まだ未解決の問題が多く、歴史学では鵜飼政志さん、また一般に後藤斉さんの考えが参考になります。わたしも Q&A のページなどで討論しています。

3.検索と発信の主体、自分の頭ということで、言っておきたいことがあります。

   第1に、人のサイトからダウンロードしたものは、引用文献を注記するのと同じく、そのURLを記してフルに利用してよいが、それを自分の研究と混同しないこと。その点をおろそかにすると、剽窃、すなわち犯罪になります。
   第2に、今のところ、学術発信についてウェブはあくまで2次的な補助メディアです。あなたのオリジナルな研究は、従来どおりアナログのメディア、すなわち学術誌への寄稿、学位論文や著書で発表すべきです。人文系の知識人にとって、落ち着いて紙のうえに密度ある正確な文章を印字しつつ考えることなしに、何かをなしとげることはできません。印刷業績があってはじめて、ただのオタクではない研究者と認められるのです。

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推薦リンク集は  http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~kondo/LinX.htm

本文中で触れた推奨サイト
ODiN は  http://odin.ingrid.org/
Google は  http://www.google.com/intl/ja/
Webcat は  http://webcat.nacsis.ac.jp/webcat.html
Amazon(日本語) は  http://www.amazon.co.jp/
JSTOR は  http://ejournal.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/
鵜飼政志さんは http://www.h-web.org/
後藤斉さんは  http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/webpolicy.html


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