仏教用語の定義的用例集は2014年3月5日に一部更新されました。

2015年11月27日に「パーリ文献の五位七十五法対応語」を追加しました。

旧版:2011-2013年版/ 2014年版/ 2015-2022年版

五位七十五法関連用語の定義的用例集

五位七十五法研究の意義

本サイトでは、『倶舎論』を中心とした五位七十五法の定義的用例集を公開します。よく知られるように、インド仏教史に大きな足跡を残した伝統部派の一つに説一切有部があります。すべての法(要素)は存在する、という主張内容を呼び名とする部派です。五位七十五法とは、この説一切有部による法(要素)の体系を総称したものです。

五位七十五法の意味内容を確認するうえで、5世紀のヴァスバンドゥ(世親)が批判的に説一切有部の教理をとりまとめた『倶舎論』(アビダルマ・コーシャ)は、きわめて重要な作品です。同論は仏教の基礎的な術語の多くを用い、しばしばそれらの術語を定義し、あるいはまた術語の意味内容を把握するうえで重要と考えられる用例を提示しています。

本研究班では、この『倶舎論』を中心として、術語の定義、あるいは重要と考えられる用例を、複数の言語によって伝承される関連文献から引用しています。また、訳語を選定するうえで直接の根拠とした『倶舎論』の原文には和訳を提示しました。さらにまた、当該箇所の代表的な英訳例とともに、限られてはいますが、瑜伽行派の文献における代表的な定義例あるいは主要な用例も参照できます。これは説一切有部による七十五法の意味づけと特色についての理解に資するものと思います。

とはいえ、本研究班が対象とした文献と用例が限られていることに相違はありません。同じ術語であっても初期仏教、大乗仏教、あるいはまた後代の発展した用例や文脈においては、異なる訳語が求められることもしばしばあります。また本サイトは、いわゆる「五位七十五法」の中の「七十五法」を直接の検討対象とし、その文脈での用例を収載しました。「五位」や「大地法」などの上位概念については、本研究が採用した方法と内容上の成果をふまえ、今後のさらなる検討に委ねたいと考えています。その意味でも、本サイトに公開された内容と提示方法に関して、忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いです。

2011. 2. 16「有部アビダルマ関連用語」研究班代表 斎藤 明