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北京出張報告
野田仁(早稲田大学イスラーム地域研究機構)

 概要
  • 日程:2009年9月14日(月)〜9月18日(金)
  • 用務地:中華人民共和国(北京市)
  • 用務先:中国第一歴史档案館
  • 用務:18-19世紀におけるカザフ遊牧勢力から清朝に宛てた文書史料の調査
 報告
上記の日程で中国第一歴史档案館が所蔵する軍機処全宗満文録副奏摺档案の調査を行った。その主な目的は、上の文書史料群中に含まれているオイラト文ないしテュルク文による18世紀後半から19世紀前半にかけてカザフのスルタン(ハン家一族)たちが発信者となって清朝の官僚もしくは清朝皇帝に宛てた文書史料を閲覧しそれらを研究するための関連史料の収集にあった。

これらの文書は、当時のカザフ=清朝間における外交関係上で問題になった諸事件にかかわるものであり、具体的には遊牧・越境・爵位継承・貿易などがそれに相当する。これらの問題が発生したとき、清朝から爵位を受けたスルタンたちと清側の旗人官僚との間で文書を交わしたていたことは、スルタンらが問題処理の担当者として清朝から扱われていたことを意味しているだろう。

すでによく知られているようにこうしたカザフからの文書は、基本的にそれを受け取った新疆の現地担当官から皇帝に向けて送られた上奏文の添付文書として北京に存在していたものである。したがって添付文書の原件たる満文上奏文は、文書が必要になった背景をよく説明しており、今回の調査においてもカザフからの文書のみならず関連する上奏文をも精査することにより、より詳細を明らかにする手がかりを得たことになる。

この調査で得られた内容としては、2009年度内陸アジア史学会大会(11月14日、関西大)において、「対清外交文書に見えるカザフの爵位」と題する口頭発表を行ったほか、「人文学及び社会科学における共同研究拠点の整備の推進事業」文科省委託事業(共同利用・共同研究拠点イスラーム地域研究東京大学拠点)により刊行される資料集"A Collection of the Documents from Kazakh Sultans Addressed to the Qing Dynasty"(小沼孝博氏と共編)において、収集した史料・史料の分析から得られた考察を公開する予定である。