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「近現代の中央アジア山岳高原部における宗教文化と政治に関する基礎研究」
平成23年度第2回研究会報告
澤田稔(富山大学)

 概要
  • 日時:2012年1月28日(土)14:00-17:00
  • 場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館2階217教室
  • 報告者と題目:
    1. 澤田稔「2011年タジキスタン共和国山岳バダフシャーン自治州調査報告」
    2. 河原弥生(TIAS研究員)「タジキスタン共和国山岳バダフシャーン自治州における民間所蔵文書調査報告」
    3. 秋山徹(日本学術振興会特別研究員)「イスラームをめぐる北部クルグズ指導者の動向」
 報告
平成24年1月28日、東京大学本郷キャンパス法文1号館2階217教室において第2回研究会を公開形式で中央ユーラシア研究会と共催した。参加者は報告者を含めて15名であった。本公募研究の代表である澤田稔と研究協力者の河原弥生氏(TIAS研究員)が山岳バダフシャーンにおける調査の成果について報告し、秋山徹氏(日本学術振興会特別研究員)がクルグズ人とイスラームについての研究発表をした。

最初の報告者、澤田稔は「2011年タジキスタン共和国山岳バダフシャーン自治州調査報告」と題して、8月7日から19日にかけてタジキスタンで実地調査した行程と史跡(特に聖地とその関連施設)について報告した。特に、同自治州の西半部(西パミール)と東半部(東パミール)の景観、交通状況、住民の相違を画像で紹介するとともに、訪問した史跡の画像と関連資料を提示した。

続いて、河原弥生氏が「タジキスタン共和国山岳バダフシャーン自治州における民間所蔵文書調査報告」の題目で報告した。自治州の概要やイスマーイール派の歴史を整理した上で、上記澤田の調査で収集した史料を、2009年に収集した史料も含めて、その所蔵者、執筆年代、内容、由来を総合的に紹介した。さらに、19世紀半ばから20世紀半ばにかけての文書3点をサンプルとして提示した。

最後の報告、秋山徹「イスラームをめぐる北部クルグズ指導者の動向」は、本委託研究のもうひとつの対象とするべきクルグズ人に関する歴史研究である。ロシア統治下のクルグズ社会を研究する秋山氏は、19世紀末から20世紀初頭における北部クルグズのマナプと称される指導者層とイスラームの関わりを、モスクの建設、聖地巡礼、1905年革命への反応、教育、定住化、シャリーアという諸側面から検討し、当時期の山岳地域(ナルン、アト・バシ)におけるクルグズ人の動向とイスラームの状況を明らかにした。ロシア植民地当局の文書と、マナプであるオスマンアリー・スゥドゥコフの著作『シャドマーンに捧げしクルグズの歴史』(1914年)に基づく堅実な研究である。