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「まつざきワークショップ」10周年記念特別セッション<まつざきワークショップ」が拓く世界:中央アジア学の新たな展開>
濱本真実(東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター・研究員)

 概要

  • 日時:2008年4月1日(火)、9:00-12:00
  • 場所:静岡県松崎町環境改善センター会議室
  • 基調報告:小松久男(東京大学)「中央ユーラシア研究の展望:現状と課題」
  • 報告:
    • 堀直(甲南大学)「回疆経済の構造」
    • 吉田世津子(四国学院大学)「葬式の変容――北部クルグズ(キルギス)農村・イスラームの人類学的動態研究に向けて――」
    • 新免康(中央大学)「新疆への漢族の移住とウルムチの歴史的変容」

 報告

このセッションは、日本中央アジア学会との共催で、日本中央アジア学会まつざきワークショップの一部を構成した。参加者は30人前後であった。まず、小松久男氏により基調報告が行われ、中央ユーラシアというタームと地域設定の変容、日本における中央ユーラシア史研究の発展の概要がポイントを絞って述べられたのち、今後の中央ユーラシア史研究の可能性が論じられた。次に、堀直氏により、回疆社会経済史の試みとして、手工業に注目した研究報告が続いた。この報告では、主に清史料とテュルク語史料を用いて回疆の職人の種類と数を明らかにした上で、この結果をもとに回疆の社会経済構造が分析された。吉田世津子氏の報告は、人類学的にクルグズスタンのイスラームを考察するものであり、特に葬式の変容に注目して、現代クルグズスタンにおけるイスラーム復興の様子が具体的に明らかにされた。最後の報告は新免康氏によるもので、清朝の新疆統治の拠点として発展したウルムチが、19世紀以降の新疆の歴史的状況の中で、いかにして変容していったのかが、この町への漢族の移住という要素を中心に考察された。

本セッションは、歴史学・人類学の分野において中央ユーラシア研究を代表する人物から構成されており、時間が限られてはいたが、若手にとっては特に刺激的なセッションとなった。今後の中央ユーラシア学の発展に大きく寄与した会であった。
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