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Uzbek Islamic Debates: Texts, Translations, and Commentary

 書誌情報

Allen J. Frank and Jahangir Mamatov ed. and trans.,
Uzbek Islamic Debates: Texts, Translations, and Commentary
Springfield: Dunwoody Press, 2006. xvii-454pp.

 紹介

1970年代末から中央アジアの南部、とりわけウズベキスタンとタジキスタンでは、イスラームの純化と復興を唱える若いムッラーたちが現れるようになった。革新派(ムジャッディディーヤ)と称した彼らは、ソビエト体制に順応した穏健で伝統的なハナフィー派の教説に異を唱え、次第に政治化の度を加えてイスラーム国家の建設を主張するようになった。そこには、イラン・イスラーム革命やアフガニスタン戦争の衝撃も働いていた。さらに、1991年のソ連解体後は、アフガニスタンなどに根拠地を置いてウズベキスタンのカリモフ政権に挑戦するウズベキスタン・イスラーム運動のような武装組織が現れる一方、ヒズブッタフリールなどのグローバルなイスラーム復興主義組織が組織・宣伝活動を開始した。この間、イスラームのあり方から政治との関係などをめぐって多様な論争が展開された。

本書は、このようなイスラーム復興の過程で現れた多様な言説の中から注目すべきものを集成したものである。ここには革新派指導者の講演録や地下出版の論説、宣伝文が、ウズベク語テキストに注つきの英語訳を付して収められている。たとえば、第4部では2005年5月のアンディジャン事件で注目を集めたアクラミーヤの指導者、アクラム・ヨルダシェフの著作 Iymonga Yo'l を読むことができる。なお、録音から起こされたウズベク語のテキストは新しいラテン文字表記で、それ以外のテキストはキリル文字表記で紹介されている。現代中央アジアにおけるイスラーム復興主義の言説をこのようにオリジナルの形で紹介したのは、おそらく本書が初めてであり、今後の研究に資するところはきわめて大きい。かつてのソビエト研究の一環としてのイスラーム研究から決別するには、こうした原典資料の活用が不可欠だろう。本書の構成は以下の通りである。
  • Historical Introduction
  • Part 1: Lectures of the Islamic Reformers (Mujaddidiya)
  • Part 2: A Quasi-Official Response to Christian Missionaries: Abu Muslim
  • Part 3: Hizb ut-Tahrir: Political Polemics and Official Rebuttal
  • Part 4: Islamic Philosophical Thought and the Akromism Controversy
  • Part 5: The Rhetoric of Exile and Insurgency

小松久男

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