「中東イスラーム研究の先達者たち」公開インタビュー
場所:東京大学東洋文化研究所会議室
講演者:板垣雄三(東京大学名誉教授)
講演題目:「パレスチナ問題と日本」
司会:長沢栄治[東京大学]
主要質問者:臼杵陽(日本女子大学)、三浦徹(御茶ノ水女子大学)、栗田禎子(千葉大学)
この公開インタビューは、戦後日本の中東・イスラーム研究の先駆的な研究者からの聞き取りを記録に残し、今後の研究資料として活用することを目的に実施された。黒田安昌氏(ハワイ大学名誉教授)に続いての第二回のインタビュー記録となる。講師の板垣氏からは、西洋史という学問領域の中からエジプト研究を始めた経緯、その後パレスチナ問題へと問題関心を移した背景、「パレスチナ問題を考える」横浜シンポウジム(1977年)から民衆法廷(IPTIL:1983年)にいたるパレスチナ問題への実践的かかわりと「組織者」としての役割、パレスチナ問題の起源をめぐる歴史的・構造的把握のための構図の契機などについてお話をうかがった。また、研究を進める中で直面した当時の日本や中東の政治状況との具体的なかかわりについて、パレスチナ問題と日本外交に関する生々しい同時代的証言や、中東現地で研究活動の経験を通じて、氏独自の研究全体のキー概念となる「タウヒード」、「アイデンティティ複合」と「n地域」に関する構想をどのように得たかについても説明があった。また、パレスチナ問題研究との取り組みにおいて、キリスト教者からの関心やマルクス主義理論がどのような影響を与えたかなど、多様な質問がなされ、長時間にわたり、緊張感の継続した充実した議論がなされた。
(長沢栄治)
NIHU Program: ISLAMIC AREA STUDIES |